私が書く小説の中で、特に読者から人気のある登場人物がいます。
余田さんです。
共感を呼ぶ弱さと、憧れを集める強さ、両方を持つタイプの人物だと分析します。
余田さんは家族を一家心中で失った過去を持ち、中高生の頃は喧嘩に明け暮れていました。
しかし今は日野さんという、彼が体と心に負った傷を愛し、受け止めてくれるパートナーと暮らしています。
日野さんの存在が彼が凶悪な敵にもひるまず立ち向かう原動力となっています(『恋を歌うビースト』)。
物語の中では「守る」ための闘いに躊躇なく飛び込んでいく強さを持っています。
新作『拳よ、鈍色に別れを』では仲間のためにあえて喧嘩を買う漢気を見せています。
強さと漢気だけでなく、『恋を歌うビースト』では日野さんからの信頼を受け取っていいのか迷う繊細さや、『拳よ、鈍色に別れを』では日野さんを守ろうとしてある決意をする勇気もご覧いただけます。
弱さと強さを併せ持つところが、彼の魅力です。
今日は彼の原型となった創作上の人物について語りたいと思います。
皆さんは佐々木譲氏をご存知ですか。
『ベルリン飛行指令』『エトロフ発緊急電』『ストックホルムの密使』という第二次大戦三部作を書いた作家です。
『エトロフ』と『ストックホルム』はNHKでドラマ化されました。
私は大学生の時にこれらのドラマを見て興味を持ち、三部作を読んだ経緯があります。
『エトロフ発緊急電』はドラマでは『エトロフ遥かなり』という題名でした。
主役の、アメリカ軍による訓練を受けて日本に潜入するスパイとなった日系人の青年を演じたのは、俳優の永澤俊矢さん。
精悍で陰があり、声が渋い。
彼が余田さんの原型であったと気づいたのがつい最近です。
主人公が戦争の傷を負いながらも困難に立ち向かう姿を演ずる永澤さんの男らしく渋いたたずまいが、余田さんの根底に流れているのです。
三十年以上前の作品なので現在手にすることが難しいかもしれませんが、もし機会があれば目を通してみてください。
余田さんを好きだと感じてくださった方には、きっと響くと思います。
『恋を歌うビースト』と『拳よ、鈍色に別れを』にぜひ目を通して頂いて、余田さんの魅力を再確認してみてください!
【カクコン11参加!本日21時更新!】『拳よ、鈍色に別れを』
https://kakuyomu.jp/works/822139839495309895【カクコン11参加!】『恋を歌うビースト』
https://kakuyomu.jp/works/7667601419913193776