『天使は本がお好き』
「ねえたまー、ごほんよんでくたしゃい!」
シグルスは四歳になって大分、字が読める様になって来たのに、こうやって私に本を読ませてくれる……嬉しい。
「勿論いいともっ! 今日は何のご本がいいんだい?」
「これっ!」
「うんうん、
『勇者として召喚されたから、好き放題ヒャッハーしてたら殺られた件について』……
……これを読んで欲しいの?」
「うんっ!」
そんなキラキラして見られても……これ、絶対ダメなヤツっぽいけど?
ダメだっ! そんな目で見られたら読むしかないっ!
「昔々、ある国の王様が悪い魔王を倒すために異世界から勇者を召喚しました」
「おー、わるいまおうさん、こわいっ!」
「そうだねぇ、怖いねぇ。
召喚された勇者は『俺はハーレムパーティーじゃないと魔王を倒しに行かないと言い出しました』……」
何これ?
「はーれむ?」
「あーっと、勇者さんが我が儘を言い出したって事だね」
「わがままいっちゃダメだよ?」
「そうだねぇ、ダメだよねー。
何とかハーレムパーティーを組ませて魔王を倒すために旅にいかせようとしましたが、勇者一行は一向に魔王を倒しに行きませんでした。
何故なら毎晩、パーティーメンバーとお楽しみだったからです……メアリーッ!」
「何でしょう? お嬢様?」
「これっ!
子供に読ませたらダメなヤツだからっ!」
「そちらはお嬢様が三歳の時にお一人で読んでおられた本ですが?」
「私はいいのっ! でもシグルスには早いでしょ!」
「ねえたま? ゆうしゃしゃんは、なにをまいばん、たのしんでいたの?」
「旅の仲間とお話とかして楽しんでたんじゃないかな?」
「みんなと、なかよしだったんだね!」
「あーそうだねー、仲良しだったんだねー」
「ちゅぢゅき、よんで?」
「うー、うん、そ、そうだねー。
勇者は魔王を倒しに行かないどころか、街で見つけた気に入った女を無理矢理連れ込んで毎晩楽しんでいました……」
不味い、これをなんて説明すればっ!?
「ねえたま? なんでゆうしゃしゃんは、むりやりおんなのひとをつれこんで? たのしんでいたの? さっき、なかよくしてたひとは?」
「あーー、うんっ!
きっと、他の旅の仲間とも一緒にお話して楽しんでいたかったんじゃないかなー?」
「ふうん、でもむりやりはダメだよ?」
「そうだねー、ダメだよねー。
シグルスはそんなことしちゃダメだよ?」
「うん、ぼくはしないよ!
ちゅぢゅき、よんで?」
「あーー、そ、そうだねー。
(これ、絶対そのまま読んじゃダメなヤツじゃん! 何とかしないとっ!)
んん、それ以外にも勇者は街の人に沢山迷惑をかける様になって、それを見かねた神様から天罰として、雷を落とされて勇者は死んでしまいました。 おしまい」
「ええっ! ゆうしゃしゃん、しんじゃったの?」
「そうだねー、悪い事を沢山してたから、神様が怒っちゃったんだねー」
「そっかー、わるいことはメッだからしかたないかー」
「そーだよー、悪い事は滅っ! だからしちゃダメだよー」
「わかったー、ぼく、わるいことしない!」
「シグルスがそう言ってくれて、私は嬉しいなー、シグルスは偉いねー」
「でも、わるいまおうさんは、どうなったのかな?」
「あーー、きっとその後、凄い強い人が倒したんじゃないかな?」
「ねえたまみたいに、ちゅよいひと?」
「うん、きっとそうだよ!」
「そっかー、よかったねー。
じゃあ、ちゅぎはこれよんでっ!?」
「どれどれ?
『仲間に裏切られてダンジョンの奥に置き去りにされたけど、凄い力を手に入れたオレ。今更戻って来て欲しいといっても、もう遅い、オレは滅っ!されたから』……………
……メアリーッ!」
結局その後、ほぼ話を私が作って話を聞かせた……。
そしてその後、私が小さい頃に読んだ本は封印した事は言うまでもない。