取り敢えずスピナール邸から逃げだし、
オレ達三人はヴァンフォルストの文官募集に応募し無事採用された。
ヴァンフォルストへの移動中、周りを見渡すとまず、護衛?達の存在感がヤバい。
一体何を喰ったらあんな風になれるんだ?
上腕がオレの胴体くらいあるんだが?
しかもそれが一人だけじゃない事に気付く。
あれが見せ掛けの身体じゃなければ
相当の腕の持ち主達だろうよ。
そんな猛者をたかが文官募集の移動の
護衛につけるか? 考えられるとすれば、
一 余程文官が居なくて
是が非でも欲しいので厚遇している。
二 コイツらは別に特別ではなく
ヴァンフォルストではこんなのが
普通にうようよといる。
三 オレ等を餌に
獲物を狩る為に精鋭をつけた。
三は無さそうだな。
ここいらで釣るって言っても襲ってくる
可能性があるのはヴァンレストの軍か
貴族の私兵もしくは盗賊ぐらいだろう。
彼奴等は別に餌がなくても
襲ってくるだろうし、ヴァンフォルストは
国土自体はでかいが国の規模としては
弱小だ。進んでヴァンレストに
喧嘩を売るとは思えない。
そうすると一か二もしくはその両方か。
サムにも意見を聞きたい所ではあるが、
ダメだエミといちゃついてやがる。
彼処に飛び込む勇気が出ない。
道中一度だけ盗賊に襲われたが、
瞬時に盗賊どもは殲滅された…。
何だよあれ?
人が出来る動きじゃなかったぞ?
瞬きしてる間に奴等と間合いを詰めて
多分一振で二十人以上いた盗賊どもが
文字通りぶっ飛んだぞ?
ありゃヤベーな。
流石のサムも目を見開いてやがる。
エミはサムしか見てない。相変わらずだ。
そんな軽い恐怖体験をしながらオレ達は
公都に着いた。
翌日、早速この国の宰相であるヨクトー氏と
面談する事になった。
十人くらいの一纏まりで次々と今迄の経験、
何を学んだか、何が得意か等を聞いていく。
この人スゲーな。
事前にオレ等の名前等の情報を
全て頭に入れてんのか?サムみてぇだな。
オレ等の番になりオレは可も不可もない
印象を与える様に面談を終えた。
てか、エミ!面談中に
『サムの護衛と言うか側にいる事以外は
しません!お給料はいりません!』
とか言うなよ!
ヨクトー氏苦笑いしてんじゃねーか!
良かったなヨクトー氏が寛容な人で。
面談後、サムはこの国の公子の教師の一人に
抜擢された。
勿論、エミはサムの横から離れない。
本当にこの国の人寛容だな。
オレは街の税の計算やら兵糧の計算等、
色んな計算をする仕事についた。
一貫性が無いなと思ったが、計算をしてもらえるだけ助かるとヨクトー氏は言っていた。
なんでも、これを含んだ文官の仕事を
殆ど一人で回してたらしい。
化物じゃねーか!対して本人は軽い感じで
『いやー君達が来てくれて助かったよ!
毎日三刻しか寝れて無かったけど
最近やっと四刻も寝れる様になったよ!
本当にありがとう!助かるよ!』
とほのぼのと語っている。
この量捌いて三刻も寝れるってどういう事?
この間間近で見たが、サムより書類見るのが早い人間初めて見たぞ。
しかも計算間違いや表記ミスも指摘してる。
え、あの速さで検算してるのか?
最早、化物にしか見えなくなってきたよ。
ともあれ、オレは悠々自適の文官生活を
満喫していたんだが。
サムの野郎、余計な事しやがって!
何でも三歳になる公子の肝煎りで
参謀局を作るらしい。
そこにオレも異動するらしい。
何でもこの三歳児、化物並みの天才で
抑、文官募集も当時二歳だった
このガキが立案したらしい。
んな事あるか!二歳だぞ?
漸く言葉を覚える程度でそんな事出来るか!
ヨクトー氏が立案して
ガキの箔付けに使ってるだけに決まってる!
もしそれが本当なら
いよいよ化物だらけの国じゃねーか!
化物みたいに強い一般兵。
化物みたいな宰相。化物みたいな天才児。
なんなんだよ!そんな事あるか!
結論、あったわ。
殿下マジで天才だわ。
どうせガキのお遊びだと思って
軽く揶揄いつつ、ヤバそうな奴だったら
サム達を連れて逃げようと思っていたら
『ロドニー、これでキミの出した
試験は合格かい?それともまだやる?』
なんて言う三歳児何処にいるんだよ…。
しかも完全にオレを標的にしてやがる。
まあ、サム達も
満足そうに働いているからいいけどよ。
オレへの風当たりが何かおかしいくらい
強いがまあいいか。
王国のクソどもと違って理不尽な事も
言わねぇし。就職先としては上々だな。