この季節になると、決まってユーミンの『春よ、来い』を聴きたくなります。
「春よ 遠き春よ 瞼閉じればそこに 愛をくれし君の なつかしき声がする」(作詞・作曲 松任谷由実)
――このサビのところが一番好きです。まだ見ぬ春への切実な願いが宿っています。
“瞼を閉じれば”聞こえてくる“なつかしき声”。それは、戦争や病、別れによって失われた大切な人の記憶が、今も心の奥深くで息づいている証です。
決して戻ることのない過去を惜しみながらも、そのぬくもりを糧に長い冬を耐え抜こうとする。その姿は、凍てつく土の下で春の訪れをじっと待ちわびる蕾のようです。
最近は、下町浅草を舞台にした小説を執筆しています。隅田川や東京湾は今ではすっかり奇麗になり、春になれば舞い散る桜の中、屋形船からスカイツリーを望む絶景を楽しむことができます。船上でいただく揚げたての天ぷらは、また格別の味わいです。
