柴門ふみさんが1988年に発表し、社会現象となった『東京ラブストーリー』。あれから30年あまり。4年前に舞台やドラマで再現されてきたけれど、もしリカとカンチが、再開発で変貌を遂げつつある品川でクリスマスを過ごしていたら……。
高層ビル群を背景に広がるウッドデッキ。鮮やかなイルミネーションが、石畳を冬の光で彩っている。片方ずつ分け合ったワイヤレスイヤホンからは、小田和正さんの『ラブ・ストーリーは突然に』が流れている。この曲だけは、今も二人の定番だ。
リカ:「ねえ、カンチ。今日ってクリスマス“当日”だよ? 何か言うことないの?」
カンチ:「え、急に言われても……。メリークリスマス、とか? いや、照れるだろ、こういうの」
リカ:「あはは、やっぱりカンチ。その素直じゃないとこ、全然変わんないね」
カンチ:「悪かったな。不器用で」
リカ:「ううん、そこがいいの。私にとってはさ、カンチといる時間は、ずっとクリスマスみたいなものだから」
彼は思わず足を止める。光に縁取られたリカの横顔が、映画のワンシーンのように浮かび上がる。
カンチ:「……そういうこと、さらっと言うなよ。心臓に悪いから」
リカ:「じゃあ、ちゃんと受け止めて?」
リカが差し出した手を、カンチは少し迷ってから、ぎゅっと握り返した。
カンチ:「……リカ。メリークリスマス。これからも、隣にいてくれ」
リカ:「もちろん。だって私、カンチといる未来しか見てないもん」
重なる二人の影が、夜の品川に溶けていく。ただひとつ確かなのは、この夜が二人の新しい“はじまり”になったということだ。
