いつもお世話になっています。
weekdayです。
第5章は10話でお終いとなるため、補足や蛇足、参考文献紹介等についていくつか書いておきたいと思います。
なお、第5章は伏線を回収する章でもあるため、以下はネタバレを含みます。
本章では馨の血液が鍵となることが明かされます。第一章第一話の冒頭と伏線になるように書きました。この物語が大正時代を舞台にしているのはそれが理由となります。
現代においては、採血や輸血等において血液感染を防ぐための処置がされていますが、大正時代においては一般的ではありませんでした。日本赤十字社のホームページによると近代の科学的な輸血法が日本に入ってきたのが大正8年ということなので、そもそも輸血自体が一般的なものではありませんでした。
馨の血液によって記憶喪失を引き起こす遺伝子が媒介されるには、どうしても現代よりも血液に関する知見が乏しい時代設定である必要がありました。
また、このことについて参考にした文献は以下になります。
・ダグラス・スター(1999)『血液の物語』河出書房新社
続いて、本章では律世の過去についても触れています。そのなかで第一次世界大戦の際、日本政府が欧州への派兵を検討していたという描写が出てきますが、これは実際にあった議論となります。出兵地域はロシア西部やメソポタミアなどが想定されていたそうです。ただし、史実では派兵は行っておらず、情報収集のためのスパイを送り込んだという事実もありません。 このことについては、以下の文献を参考にしました。
・小林道彦(2020)『近代日本と軍部 1868-1945』講談社
最後に、ES細胞などの話もさらりと出てきますが、遺伝子関係の話は筆者の頭脳的にうまく説明ができなかったためこの程度に留めております。実をいうと脳オルガノイド関係の文献をいくつか読んだのですが、技術的な話は難しいことが多い上、説明しすぎると大正時代の設定と齟齬が出てきそうなため、あっさり登場する程度に留めました。大正時代に存在するだけでもオーバーテクノロジーです。ES細胞等、細胞研究の概略を知る上で非常に参考になったのは以下の文献です。
・黒木登志夫(2015)『iPS細胞 不可能を可能にした細胞』中央公論新社
こうして参考文献を書き出してみると、多くの場合で新書に助けられました。新書大好き。
さて、この物語は次回の投稿で最終話となります。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。