餌をやるのが好きだ。それは何も生き物に限ったことではなく、ぬか床に潜む菌類や、観葉植物、果てはぬい撮りついでにぬいぐるみにも与える。
いつ毒を入れてもいいし、調理場は狂気がたくさんあるので逆説的に理性を証明されているようで、調理業務は誇らしい。
高卒で就職した病院給食は、ならず者の溜まり場みたいな場所で機嫌を損ねると包丁を突きつけてきたりラップの芯でタコ殴りしてくる上司がいた。
いちいち謝ったり大きな音にビクビクするのも疲れるなと達観する頃にはすっかり心が壊れていた。その手の病院へ通院させられたが、ずっと落ち込むのも疲れるので回復したと思いたい。あと、親の泣くのは見てられない。
毒の話に戻す。
最近のテクノロジーでは、野草の写真ひとつで、名前や種類、毒の有無まで分かるという。
一番身近な毒は水仙の葉だろう。
あれはニラによく似ているので、非常に厄介だ。誤った農協に出回って通報されたニュースがあるくらいだ。
帰省時、実家の庭に植えてあったので、ガーデニング好きの母に、「食べないから触ってみたい。唇でぱくっと挟んでみたい」と言ったら、野良猫が通るから汚いよと言われた。
それ以前にまず、毒だろ。
テクノロジーに暴かれた毒草たちは、もう毒を奪われたに等しいのではないか?
誰に向けた、何のための毒なのか分からなくなって、それでも毒は美しい。別に誰彼かまわず振るわなくても、ここぞというとき一矢報いれば、それでいいのだろう。
温暖化の影響で、雑種のフグが生まれているのをご存知か?わかりやすいよう、かなり簡単に説明する。
毒のあるフグを大きく2種類に分けたとする。Aは体を覆う皮から毒を出している、Bは内臓の一部に毒を持っている。
本来生息地を棲み分けていたはずのこの2種が、温暖化により生息地の境目を曖昧にしていく。そして巡り合い、交配。生まれた雑種のフグは、もはやどこに毒があるのか分からないのである。
この話を始めて聞いた時、私はかなり興奮した。不謹慎とは思いつつ、なんて面白い話なんだと思った。
テクノロジーに暴かれ、どんどん危険が排除されていく世の中で、こんなにもスリリングなことがまだ生まれてくる余地があるのかとワクワクした。
ちなみに、私にとって一番の毒は昆虫である。アレルギー検査で、最近判明した。
特に蛾には滅法弱く、夜中外に出していた洗濯物を取り込んだら蕁麻疹が出た。
それ以来、なんとなく、蛾を模したポケモンを手持ちに入れるのを躊躇ってしまう。
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そんな食と支配をテーマにした毒みたいな小説を書いているので、よかったら合わせてご覧ください。
ネグレクト少年の拾い食いとヤンデレ少女の餌付け 〜全てはあの子の「離れないで」という懇願で。気づけば僕の方が溺愛していた〜