メリークリスマス
では
「忘れ物だって、こんな日に来なくてもいいのに?」
学校の守衛所で警備の人からお小言ひとつ。
「すいません。休みの間の課題に必要だったんです。申し訳ないです」
「じゃあ、気をつけてね。用事済ませて早く帰ってきなさい」
渋々という具合に中に入れてくれた。長期の休みは登校を全面的に許可しない学校の方針で、校舎を閉めてしまう。部活なんかもやらないんだ。休みは休めが徹底してる。
自分たちの教室に向かう廊下で、
「私も,来なくてもいいと思うんですよ。あんな奴のために」
美鳥が怒りを含めて話してくる。
「まあ、嫌味なやつではあるけど、今日ぐらいはな」
「お兄ぃがいうならしょうがないですけど」
渋々と言った具合だけれど美鳥は付いてきてくれた。
廊下を渡り、自分のいく教室のドアを開ける。1番後の俺の机の上にそれはあった。あいつはいる。
「こんな、誰もいない時に来るなんて、何処の酔狂かと思ったら、お前さんたちかい」
皮肉たっぷり乗せてしゃべってきた。此奴は!
見た目、小さい髪を伸ばした女の子。よく見ると人ではない。最近巷で見かけることもある、お人形。粘土でできたデフォルメフィギュアなんだ。それが俺の机の上に座っているんだ。髪らしきものは長く腰と思われる付近まで伸ばしている。顔の造形なんかもそうなんだけど、髪色も一緒にきてくれた美鳥にそっくりなんだよ。
「別に会いたくてきたんじゃない。なんであんたなんかと」
美鳥が怒りを露わにしている。これまで痛い目とか酷い目にあって、いい感情が持てないんだろうね。何かと喧嘩している。
「まあまあ、美鳥も怒らない。どうどう」
ピキん
「私は馬ですか」
美鳥の怒りに油を注いでしまった。
「ごめん,ごめん。まあ,お怒りは収めてくださいわ」
美鳥に手のひらを向けて宥めていく。
「すぐ、用事は済まそう。持ってきた包みをひとつもらえるかな」
「こんな奴に、わざわざ…ぶつぶつ」
文句を垂れ流しながらも、入れてきたトートバッグから包みを取り出して俺の机に置いた。
「これは?」
早速、こいつは包みを開けていく。中味は
「これは、このケーキではないか。ロールケーキか? しかもチョコクリーム! こっ、これは…」
「そう、フランスではブッシュドノエルって言うんだって」
「クリスマスにこれとは!」
「一応、お世話になっている…らしいかな。持ってきたんだよ。コットン」
「こいつなんか、本物の薪で十分…一緒に燃やしちゃえばいいのよ」
「美鳥も愚痴らない。コットン、メリークリスマスだよ」
「わしらにいただけるのか? いいのか」
コットンは包みを掲げる。
「もちろん、知らない仲じゃない。お前は、ここから動けないんだから、持ってきたよ」
「一孝。お前はいい奴だなあ。よし、美鳥とのことは許してやる、祝言を挙げるが良い」
「なんで,あんたが許すのよ」
美鳥は、コットンに詰め寄る。
「何おぅ」
コットンも睨み返していく。
「まあまあ、美鳥」
後ろから美鳥の体を抱きしめて机から離す。
「お兄ぃ、でもう」
「いいから、いいから。俺の気まぐれなんだから、美鳥、着いてきてくれてありがとな」
「一孝さん」
少し包んであげるだけでそ表情が解れてくれた。怒りを解いてくれたかな。よかったよ。
「じゃあ、次があるから、これ以上はいられない。後は楽しんでね」
「あい、わかった。2人ともメリークリスマスじゃ」
とコットンは俺たちに手を振った。手にしたロールケーキは隣に座るもう一体に預けて
「じゃあ、行こか」
「はい、一孝さん」
そうして学校から出ていった。