メリークリスマス
では、
「ミュラーさん。どうですか。できました?」
粉屋の店舗の入り口から声をかける。
「お姉ちゃん、何かお願いしたの?」
隣に立つ、獣人狼族の少女とシュリンが聞いてきた。
「うん、ちょっと良いものを頼んでおいたんだ。楽しみにしてていいよ」
「そうなの! 楽しみだね」
粉屋とはいうものの、バンとか焼いたお菓子とか作って置いてある。甘い香りや香ばしいものが鼻をくすぐる。期待しているのもうなづける。
店舗の奥、厨房から
「いらっしゃい。トゥーリィ。頼まれたのできてるよ。一緒に見てもらえるかな? きてくれる?」
店主のミュラーに案内されて私とシュリンは厨房へ案内されていく。そこでは、香ばしい香りが強くなって甘い香りはするけど微かになっている。
中にある作業台の上には茶色く丸まったものが4本置かれていた。
「トゥーリィお姉ちゃん。これ何? いつものヴィスキーじゃないよ」
「よくわかるね。これはね。クゥアクゥアの実を使ったヴィスキーなんだよ」
「クゥアクゥア?」
すると厨房にある釜の近くにいたミュラーさんから声がかかる。
「トゥーリィ、このクゥアクゥアの実はう面白いな。油脂分を除けば適度な苦味とコクが出るし、油脂分を足してビーツ糖を出せばお菓子にもなるし、両方とも使えば美味しいケーキの出来上がりとくる」
「でしょ。この前聖教会本部に行った時にもらってきたんです」
「オタクらのとこって,色々と具材が集まるなあ」
「良いものもらって来れてよかったです。市場でも手に入るそうですから、よかったら使ってください」
ミュラーさんの顔が商売人の顔に変わっていく」
「そうかい。じゃ遠慮なく使わせてもらうよ。ウチの看板商品が,また増えるよ。ありがとうなトゥーリィ」
「いえいえ、こっちも多少のおこぼれで食べられますから」
私は笑顔を返していく。
「本当にいいのかい? あんたが作ったって宣伝して売り出せば儲かるのに」
「いえいえ、聖女見習いの私が商売なんて許されませんて。皆さんで食べて楽しんでもらったほうがいいですよ」
「では、そうさせてもらうよ。ここのは、あんた達の分だ。是非もらっていってくれ」
「はい、ありがとうございます。パラス教会への寄進として受け取りますよ」
私はミュラーさんへ向かって指で聖印を刻む。祝福をするんだ。
「では、ご機嫌よう」
「ありがとうな」
最後にそんなやり取りをして店舗を辞した。
「お姉ちゃん、楽しみだね」
「そうだね………、あれ?」
私はミュラーさんにもらったヴィスキーの数を数える。
「どうしたの?」
「おかしいな、数が減ってる。忘れてきたかな? 今更くださいっていうのもなあ」
ヴィスキーの包みを数えるけどやっぱり2本足りない。
「まっいいね。切り方工夫すればいいから」
「?」
「別に独り言。ごめんね。さあ、帰ろう」
「うん。……、あ、雪」
チラチラと白いものが天から舞い降りてくる。
「本当だ。寒いと思った。積もる前に帰ろ」
「うん、ヴィスキー楽しみだもん」
「そうそう、このヴィスキーは切って横から見ると木の年輪みたいなんだよ」
「そうなんだ。早く見てみたいよ、急ごう。トゥーリィお姉ちゃん」
「アイレディ」
