黒いつなぎを着たそのお姉さんは、にやにやしながら胸元のファスナーを下げた。その胸の谷間から取り出したのは一枚のカードだった。
「なんだ、会員証持ち(カードフォルダー)だったんだ」
「そういうことだよ、冬寂ましろ。なら、やることはひとつだろ?」
「ああ、わかってるよ。これでもカクヨム文芸部デジタル部員だからね」
私も首から下げていたカードを指に挟んで、ちらちらと相手に見せつける。
隣にいた千鶴が私の腕を引く。
「ちょっと、こんな街中でバトるの? 信じられない!」
「ごめんね。私とこのお姉さんは執筆中毒者(ライティングジャンキー)だから」
「そういうことだよ、お嬢ちゃん。読み手(リーダー)は下がりな。こっからは書き手(ライター)の時間だ」
相手にそう言われて千鶴がしぶしぶ下がる。「負けたら絶交だからね」と言い残して。
私は少し苦笑いしながら、カードを手にして構える。顔の横までカードをあげる。
「スタンバイ!」
カードがきらめく。虹色の光があふれだし、ごみが散る街を撫でていく。
「いいね。いいよ。そうこなくちゃ」
相手も同じように構える。
「スタンバイ!」
黒い光がほとばしる。人や自転車が闇の中に飲まれていく。
私達はにらみ合う。
渋谷の街に嵐が吹き荒れる。
私とお姉さんは同時に叫んだ。
「「執筆開始(ライティング、スタート)!」」
……というようなカードバトルが始まりそうな会員証をカクヨム様からいただきました。沼らせ…のプレゼントとのことです。
皆様、ありがとうございます!
これからも頑張っていきますー!
