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いくひ誌。【511~520】

※日々はとつぜん断ちついえる。


511:【無友病】
だれもぼくにきょうみがない。では、ぼくは?


512:【事実確認】
わたしはへたである。トマトのへたよりもへたの成分が濃ゆい。あまりのへたさがこうじて、へたれにまで進化した。わたしはへたれである。ただのへたですらいられない。できそこないである。


513:【願望止まり】
やさしいひとになりたいし、どりょくできるひとになりたい、でもまずはにんげんになりたい、まともなにんげんに。


514:【疑惑】
たぶん、ほんとはそんなことみじんも思ってない。このままで、そのままを、このわがままごと受けいれられたい、みとめられたい、あがめ、たてまつられたい、それが本音。


515:【ひとまとめ】
総じてそれをクズと呼ぶ。


516:【悪人】
善意で人を殺すキャラクターってなんかいいな。善意から人を殺すのではなく、善意を用いて、人を殺す。真綿で首を絞める、ではないけれど、しあわせをおすそわけすることで相対的に相手に致死量の毒を盛る、みたいな、助けてあげることで却って死にたい気分をつのらせる、みたいな、そういうの。いままでは無意識でそういうことをし、結果的に他人を苦しめる人間はすくなくなかったが、これからは自覚的にそういうことをやる人間が増えていくように感じる。虚構では魅力的なキャラクターだが、現実で出会ったら距離をおこう。


517:【悪寒の予感】
嵐の前のしずけさっぽくてこわい。なにかあったの?


518:【大差なく、大過ない】
だいじょうぶだよ、生きている意味がないんだったら、死ぬ意味だってないんだもの、きみはいなくていい存在かもしれないけれど、だからこそいなくなっても世界は何も変わらない、いなくていいけど、いなくならなくてもいい、だいじょうぶだよ、小石は誰の目に留まらなくともそこにあるし、きみも今、そこにいる。


519:【ねがいさげ】
「はぁ。ともだちがほしい。だれでもいい。きみ以外なら」


520:【蚊取り線香】
これからさき、ドローンはどんどん小型化していく。昆虫なみにちいさなドローンもあと三年以内に汎用化され、五年以内には一般に市販可能となるだろう。そうしたとき、カメラ機能は基本性能として付与されているため、盗聴や盗撮は極めて容易に行えるようになる。スマホのカメラの比ではない。極小のドローンの、犯罪行為の抑止のために、そうした社会ではドローン専用の蚊取り線香が、公共の場に設置され、また個人での購入も可能となる。ドローンの遠隔操作時に利用する電波を通信妨害(ジャミング)するか、或いは任意の場所に着陸するようにとの信号を発信し、機体を乗っ取る(ハッキング)対策がとられるだろう(同時に、独立駆動可能なAI搭載型ドローンが急速に開発されていくため、対策としては万全ではない)。しかしそれら対策も悪用すれば、他人のプライバシーを侵害するハッキング用具となるだろうし、また他人の経済活動を阻害するツールとして効果的な武器となり得る。問題を解決するための術が、新たな問題を生じさせるのはいつの時代も有り触れた出来事ではあるが、これからは生じる新たな問題のほうがより深刻な問題を――それはたとえばそれまでの秩序を根本から崩しかねない問題を――孕むようになってくる。我々は、対策をとる前に、否、何かを社会に普及させる前の段階で、いますこし厳格で慎重な議論と検証を重ねなくてはならない段階にきている。しかしそれを企業に期待するのは誤りである。

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