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いくひ誌。【441~450】

※火にくべた過去のいろどりは記憶の底に沈殿し、四季おりおりの澱を積み重ね、できた層をナイフで切り分けて見えるあれらを虹と呼ぶ。


441:【パラシュート】
物語の舞台におりたちたいのに、背中から生えたキノコがめいいっぱいに傘をひろげるものだから、なかなか舞台におりられない。食べていいから誰かとって。


442:【圧縮作業】
ここぞという場面の五千字を、いかに圧縮し、影絵さながらに掘り下げていくか。版画は、板を掘ることで絵を浮びあがらせる。削ぐ肉の多寡で情景の濃淡が決まる。どこをどのように削ぎ、何を残すか。すべてはその取捨選択にかかっている。


443:【女性言葉】
いまの世の中、女であっても「~だわ」「~よ」なんて言葉づかいはしない。そういう主張がある。一理ある。しかし、ふざけ半分で使ったりはするのではないか。本気じゃないけど本音ではないとは言い切れない、そういう非難の響きを伴なわせるために、「ふざけんじゃないわよ」なんて言い方、しません?


444:【おわりのはじまり】
小説は買って読むもの。この文化もあと何年持つだろう。哀しいことだが避けられない未来もある。


445:【廃退からの復権】
ネット小説が奔騰を極め、プロとアマの差があいまいになった。おそらくこのさき、多くの読者を射とめる作品を生みだすのは、割合としてプロよりもアマチュアのほうが高くなっていく。無料で読める作品のほうがよりおもしろく、そして種類も数も豊富とくれば、あとはもう、たんじゅんな話として需要と供給はアマチュアの作品だけでまかなわれ、商業としてのシステムを維持するのは至難になる。いちどこの流れが定着してしまえば、あとはもう、小説はタダで読むもの、という価値観が広く社会に漂うことになる。しかしある時期をすぎるとふたたび小説に商品としての価値が付属するようになってくる。その時期とはなにか。今こうしてあなたが読んでいるようなWEBサイトが、そう遠くない将来、情報形態の変化によって未来のあなたが扱う端末で読めなくなる時がくる。そのとき、過去のコンテンツをサルベージし、価値あるデータを発掘し、顧客に提供するシステムが生まれてくる。発掘されたデータの中には著作権の有効期限が切れているものもあるだろう。トレジャーハントさながらにデータが過去という付加価値を得、骨董として、或いは財宝として昇華される日がやってくる。いま現在、日の目を見ず、認められず、忘れ去られることなく忘れ去られていく存在は、しかし未来にとっては輝かしい宝物となり得る。嘆くことはない。真に価値あるものならば、必ずや世界のほうから見つけだしてくれる。それが今ではないというだけの話である。嘆くことはない。


446:【えーん】
そうやってじぶんでじぶんに言い聞かせてないと正気をたもっていられないんだね。それともきみの場合は正気ではなく狂気をたもっているのかな? ふんばらないと狂気ですらたもてないほどに平凡なきみのような存在には、過激で無稽な妄言くらいでないと現実逃避の効用も起きないんだね。ふふ。かわいそ。


447:【予防線】
なあいくひし、おまえ、そうやって予防線貼って、じぶんは客観的にじぶんのこと理解してます、制御できてます、みたいな顔して、ほんとうは誰よりじぶんが分からなくて、何をよりどころにしていいのか、何がしたいのか、本能に忠実にできないじぶんの弱さを認めがたいがゆえに、理性的な顔して、かっこつけて、たいした苦労背負いもせずに、そのくせ悲劇のヒロインぶって、なあ、おまえ、いったいなにがしてぇんだよ。黙ってつくれよ、じぶんを殺せよ、誰もおまえの人生なんざ見たくねんだよ、おまえのなかの世界を見せろよ、物を語り、つむげよ。


448:【だまれコノー】
うっさいなぁ。真顔で正論吐いてんじゃねぇよ。クズ責めて優越感に浸ってんじゃねぇよ。あたしはあんたの精神安定剤じゃねぇぞコラ。それともなにか? 大量摂取して死にてーのか真人間。


449:【らんぼうなことばづかいしないで】
うー、やめてほしいよぉ。こあいよぉ。いくひし、謝りますから。ごめんなさいするますから。もうおこんないでほしいよぉ。つむぐよ、ほらちゃんとこうやって文章つむぐますから。おっきな声はつかれるよ、いっしょに休も?


450:【のろい】
歳を重ねるごとに内なる乙女どもが数を増し、勢力を整え、いっけー、と我の理性に押し寄せてくる。あやつらは魔である。なんとも甘くうつくしい誘惑に満ちている。トキメキなど邪道、我の高潔なる孤高にはなんびとたりとも触れさせはせぬ。しかし枕に唇を押しつけいざというときのために鍛練を怠らないのはセーフだよね☆

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