【記録者名】
S
【記録内容】
雨浦夢宙(あまうら むちゅう)の動向確認。
【期間】
雨浦夢宙とガラガラが対面するまで。
【愚痴】
非常に悪趣味な記録ではあるが、俺しかマトモに記録出来る者が存在しないため、不本意ながら仕方なく記録する。
優秀すぎるのも困ったものだ。
【21××/04/01】
『雨浦夢宙』が研究所に入社。
周りの新入社員の視線が怪しすぎる。もっと演技力のある奴らを集められなかったのか。
【21××/04/18】
何処の阿保な研究員がトラックを操作し、雨浦夢宙を殺害したのかと思えば、何と我らが偉大な守世研究所の研究員だった。
そんな使い物にならない人間でも、俺の部下になれたことを誇りに思って欲しい。
トラックの運転手と雨浦夢宙に誠心誠意謝罪していただきたいところだが、代わりに俺が受け取っておいた。
俺は当事者ではないので当然、許していない。
しかし人生はやり直せる。
周りと自分に、その気があれば。
だが俺にはない。あいにく。
【21××/05/11】
雨浦夢宙と蛇のゲラの『ガラガラ』が対面した。
ガラガラとは、人間を殺さないゲラである。
通常『ゲラ』と呼ばれる存在は、人間を殺すために製造されるが、ガラガラは人間を守るために製造された。俺も関わっている。
知らなかったのか?
まぁ、言っていないからな。
【まとめ】
雨浦夢宙は元気である。
安心しただろう。お前らが必死に守りたい微かな未来だからな。
【備考】
雨浦夢宙は現状、お前らからは人間であると思われていない。
トラックと衝突しても死なず、五十メートルを三秒で走る脚力のある者を、お前らが自分と同じ『人間』と定義するには無理があるのだろう。
しかし、彼女には『感情』が存在している。
お前らのような有象無象は、彼女を実験体扱いしたいようだがな。
さて、記録はこんなものだろう。
俺は、雨浦夢宙とガラガラが、お前らに対抗しうる存在になると予想している。
つまり、これからは「俺抜きでせいぜい頑張ってみろ」という話だ。
——お前らの計画が、全て失敗することを願っている。