ミルク
その朝は、いつもの穏やかで、静かな朝ではなかった。今日は朝早くから、ご主人がドタドタと音を立てていた。
床を拭き、窓を開け、そして、普段は開けない棚から、たくさんの食器を出している。
(一体、何事かしら。ご主人が、あんなに焦っているなんて)
ご主人の緊張は、私たちにも伝わってくる。不安になり、ご主人の足元から離れられなかった。
ポテト
朝からご主人がバタバタ! なんだか面白いぞ。ご主人が掃除をするたびに、僕とミルク姉ちゃんは違う場所に移動させられる。
「こら、邪魔するな」
ご主人はそう言って笑うけど、僕にとっては全部が遊びの延長だ。だって、ご主人はいつもより元気いっぱいだから! でも、ご主人の作るご飯の匂いが、いつもと違って、すごく豪華な匂いだ。
(美味しいものがたくさん来るぞ!)
僕は、そう確信した。
しばらくすると、チャイムが鳴り、ご主人がドアを開けた瞬間、一気に、家の中に新しい匂いと、大きな声が流れ込んできた。
「あら、じん君、久しぶり!」
「わあ、おじさんの家、広いね!
ミルク
声の主は、ご主人によく似た匂いのする大人たちと、ハルトとユイという、小さな人たちだった。
一度にたくさんの知らない人が来たことで、心臓は跳ね上がった。
すぐに、ご主人の足の後ろに隠れた。ポテトも、ご主人の後ろから、怯えたように顔だけを出している。
「みんな、この子たちが、ポテトとミルクだよ」
ご主人が私たちを紹介してくれる。私たちは、顔を出すのが恥ずかしくて、ただ小さな声で「クゥン」「ニャア」と鳴くことしかできなかった。
ポテト
知らない人が多すぎる! しかも、みんな大きいし、匂いが強い!
ご主人を信じているけど、こんなに大勢だと、怖くて動けない。ミルク姉ちゃんも、僕よりもっと怖がっている。
特にハルトとユイという小さな人たちは、僕たちをじっと見てくるから、ますます動けない。でも、彼らの目には、あの箱の中に入れる時のおじさんのような、怖い光はなかった。ただ、きらきらとした好奇心だけだ。
しばらくして、子ども達はご主人に連れられて庭へと出て行った。彼らは、無理に追いかけようとはしなかった。その優しさが、私たちの警戒心を解いた。
ポテト
庭に出ると、もう隠れていられなくなった。だって、この庭は僕の縄張りだ。
ハルトとユイの周りを猛スピードで駆け回った。それは、遊びではない。「ここは僕の家だぞ!」という、僕なりの庭の案内だ。子ども達は僕の動きに合わせて笑い、追いかけてくれる。
「わあ、速い!ポテト!」
僕は、遊び疲れて、舌を出しながら、彼らと庭を隅々まで走り回った。
ミルク
ポテトのような無遠慮な行動は、私にはできない。
庭の陽当たりの良い場所を選び、最も優雅に見えるポーズで座った。
ハルトとユイがそばに来て、そっと頭を撫でてくれる。この家の「女主人」であるかのように、彼らの手を静かに受け入れた。
彼らが撫でる時の手つきは優しく、その心地よさに、目を閉じた。優雅な振る舞いは、彼らの心を和ませ、笑顔にさせただろう。これが、私なりの「おもてなし」だ。
ご主人は、私たちと家族が交流している様子を、遠くから嬉しそうに見守っていた。
私たちには、ご主人の他にも、温かい輪ができた。今日は、とても良い日だ。
賑やかだった家族が帰り、家には再び静寂が戻った。今はご主人の膝の上で寄り添っている。
ポテト
体が重い。でも、心は軽い。楽しかったな。ハルトもユイも、また来てくれるかな。
しばらく経ったある日、ご主人が立ち上がり、箱から何かを取り出した。それは、小さくて、ブーンという音を立てて、空を飛び始めた。
(なんだ、これ!? 空飛ぶおもちゃだ!)
すぐに飛び起き、庭へ駆け出した。
何かが、上を飛ぶたびに、僕はそれを捕まえようとジャンプする。楽しい遊びがやってきた!
ミルク
ポテトの騒がしさに、私はため息をついた。ご主人が言うには、ドローンという、よくわからない機械だ。
それが私の目の前で止まった時、私は立ち上がった。知っている、あの小さなレンズは、私たちを写している。
ゆっくりと尻尾を上げ、最も美しいポーズをとった。