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もしも氷高皇女と長屋王が両想いだったら

 もしも氷高皇女と長屋王が両想いだったら——。
 陳腐なタイトルですが、下世話な妄想から書いてしまいました。『山吹色のマージナル』は今日から「第三章~氷高皇女の逆襲~」に入ります。
 実はこの物語、その昔上梓した拙作(筆名は違います)のアナザーストーリーとなります。パクリとか二次創作とか誤解されたくないので、念のため申し上げておきます。原作に関しては今ここで言及はいたしません。機会があればいずれ。
 
 さて、歴史小説の宿命で、結末がわかってしまうというデメリットからは逃れられません。第三章の主人公氷高皇女も調べれば簡単にわかってしまうので、一応略歴に触れておきます。

 氷高皇女は後の元正天皇(第44代)です。弟の文武天皇が25歳で早世してしまい、当時まだ幼少だった遺児首皇子(おびとのみこ=藤原不比等娘所生)の即位は無理ということで、一旦皇位は母の阿閇(あへ)皇太妃が継ぎます。第43代元明天皇です。その後、首皇子が15歳になり、彼が即位か……と思われたのですが、ところがどっこい元明天皇は娘の氷高皇女に譲位してしまうのでした。不比等はさぞやがっかりしたことでしょう。だって文武天皇は15歳で即位してるんだもんね。この辺りの事情は語り出すと止まらなくなるので割愛します。

 即位時、氷高皇女改め元正天皇は36歳独身。それまでの女性天皇といえば皆皇后か母后。つまり元正天皇は日本史上初の独身女帝なのです。
 しかも「沈静婉レン(女偏に戀)」「華夏載佇(かかさいちょ)」——要するにめっちゃ美人!となれば恋の話の一つや二つ期待してしまいます。
 なのに万葉集には皇女時代の歌がありません。そのせいか、ますます妄想を掻き立てられてしまった、というわけです。

 では、氷高皇女のお相手は誰が相応しいか。
 結論から言うと、故永井路子大先生の『美貌の女帝』を拝読し、彼だ!彼しかいない!あなたがそうだあなただったんだうれしいたのしい大好き!と勝手に妄想が一人歩き、そして冒頭へ戻り、現在に至ります。
 そう、筆者の中では現在も氷高皇女と長屋王の物語は終わっていません。
 長屋王は天武天皇の孫で生母は元明天皇の同母姉。史実では元正天皇の妹吉備皇女と結婚しますが、ゆくゆくは元正~聖武天皇政権を重臣として支えていきます。やっぱりお姫様には王子様が必要なのです。

 よく「歴史にifはナンセンス」とは言われますが、その「if」という妄想の数だけ歴史小説が生まれるのではないでしょうか。

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