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読書記録『大江戸奇巌城』

 芦辺拓『大江戸奇巌城』(2023年 早川書房)読了。
 個人的に「私設博物館を持つ小説家」と呼んでいる芦辺氏の作品らしく、この時代劇活劇もその博物館が大張り切りで出してきた展示品が画面を華やかに彩る(毎回、作品を映像化しようと思う人に対する配慮など全くなく、作品背景の当時に使われた日用品から乗り物などの大物、さらには当時の珍品まで遠慮なく出してくる)。今回の目玉は琉球王国を訪れた清国使節の大行列だろう。圧巻のフルボリュームで長回し、きらびやかな大行列を見せてくれるのはさすがの「アシベ映画(キネマ)」と言ったところだ。
 タイトルにもなっている奇巌城も、その呼び名から想像される例のアレを奇抜なアイデアで江戸時代に再現している。
 一方、五人のヒロインたちの活躍にはやや物足りなさを感じてしまう。
 ただ、これは悪役側がふがいないせいだろう。事実に重きをおかず、妄想の中の世界征服にうつつを抜かす集団なので、単純な暴力においては脅威かもしれないが、「奇巌城の陰謀」には役者が足りないのである。(もう少し時代が進めば、飛行機や船舶の技術を手に入れて、その妄想は多くの人を殺めることになるのだが)

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