第二十九話「六花calmato(りっかカルマート)」に添えるコメント

【案内人・葛城二華より】
 第29話をお届けいたします。
 六月下旬の日曜日。朝から雨でございます。
 六花円舞曲に、全員がいらっしゃいます。第26話から第28話まで、深雪さんだけが見えていた景色が続きましたが、今回は、この家に六人いることを思い出す回でございます。夏凪さんがソファの端で雑誌を開いていらっしゃいます。美空さんがダイニングテーブルで課題をなさっています。キッチンからは、陽花さんと月詠さんの声と、甘い匂いが流れてまいります。
 第4話では、氷華さんは外でたくさんお話しになりました。今回は、家の中で、ほとんど言葉がございません。その代わりに、別のものが動いています。重さ、でしょうか。力が抜けていくときに、体がどちらに傾くか。眠りに落ちるとき、指がどうなるか。
 キッチンの二人は、しばらく出てまいりません。おかげで、リビングの人口が減り、雨音だけが残ります。氷華さんにとっては、都合の良い午後でございます。
 深雪さんは、一度だけ、ソファの前に立たれます。ブランケットを一枚。——その掛け方について、私が申し上げられるのは、「丁寧でした」ということだけでございます。
 今回、じゅんさんは長い時間、動かないことを選んでいらっしゃいます。——その理由は、じゅんさんの左腕の上にございます。
 やがて、キッチンから声が届きます。焼き上がりの合図です。
 雨の一日を、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
※本作のイラストはAIを用いて制作していますが、キャラクター・服装の設定および最終選定は作者によるものです。

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