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タイトル未定、ストーリーを模索しつつ第7エピソード

「……終わった」

 いろんな意味で終わった。

 肉は全部食べた。六合は炊いてあったご飯も消えた。
 買ってきた酒瓶は全部空けた。
 給料祝い兼およねさんバースデーパーティーはつつがなく終わった。 

 みんなたくさん食べて、飲んで、おしゃべりして、笑って笑って、それは楽しいパーティーではあった。
 だが同時に。

「消えた……僕たちの生活費がたった一晩で……」

 消えた生活費は食材となり、今はこの人たちの膨らんだ胃の中に納まっている。
 それはそれでショックではあったのだけれど、つむぎさんとお客さんが喜んでくれたことがなにより大事なことだった。

 もちろん僕もつむぎさんもたくさん食べた。

「今日の焼肉、すっごくおいしかったよね」

 うず高く積まれたパックの中には黒毛和牛ロースとか特選和牛厚切りカルビとか、国産厚切りタン塩とか高級品が巧妙に紛れていた。
 普段だったら絶対買わないチョイス。これがまた、すっごくおいしかったのだ。

「わたしお肉選ぶの自信がなくて迷っていたら、スーパーでおよねさんに会ったんです。事情を話したら一緒に選んでくれるって言われて。そしたらおよねさん今日が誕生日だからって聞いてお誘いしたんです」
 うれしそうに報告してくれるつむぎさん。
 およねさん、かなりの目利きらしい。たしかにどれも美味しかった。
 それもこれで食べたことないようなおいしい肉ばかりだった。

「そしたらあきこ姉(ねぇ)がちょうど来て、お祝いならお酒が必要って言われて、お酒は全部あきこ姉に頼んだんです。わたしあまりお酒を飲まないので」
「お酒もどれも美味しかったよね、料理にぴったりだったよ。どれもこれも、つむぎさんのおかげだね!」
「むふぅ」

 つむぎさんはほっぺたを赤くして、満足した赤ちゃんみたいな自慢げな吐息を漏らす。
 どうやらつむぎさんも少し酔ったみたい。
 そんな姿がまたかわいい。

「……でも、お金いっぱい使っちゃいましたね……ごめんなさい」
「いや、良いんだよ。お金ってのは使うためにあるんだからさ」
「でもそんな風にしてたら貯金もできませんよね。やっぱりあたしが貧乏神だから……」

 む。つむぎさん、また自分を責めようとしている。

「それは違うよ。今日のつむぎさんはたくさんの幸せを運んでくれたよ。見なよ、あきこさんはよだれ垂らして幸せそうだし、およねさんもお腹をあんなに膨らませているし、ボクはこんなにおいしい焼肉は初めてだった」
「クリリンもすごい勢いで食べてましたね」
「そうそう。この幸せな時間はキミが運んできたものだよ、幸せってのはお金では買えないものなんだよ」

「あきらさん、優しいな……」

 そういうと僕の首に手をかけ、上目遣いにじっと熱い視線を向けてくる。
 上気した頬、少しうるんだ瞳、それから目を閉じ、スッと唇を寄せてくる。

「つむぎさん……」

 うん。この瞬間のために大金を払ったようなものだ!
 神様ありがとうございます! いや、貧乏神様、ありがとうございます!

 僕も彼女の背中に手をまわし、そっと体を引き寄せる。

「やっとチッスかの?」

 耳元に聞こえたその一言でサッと酔いもさめる。
 忘れていたけど平九郎爺さんだった。
 それも二人の顔のすぐ近く。

 それから皺だらけの顔にさらに皺を寄せてニンマリと笑った。

「続きが楽しみじゃのう、ささっ遠慮なくどーぞ」

 二人の甘い酔いが瞬時に覚めてしまったのは言うまでもない。 

18件のコメント

  • ちょっ、すごい飯テロなんですが(*´Д`*) 高級肉たべたい……
    ここから更なるメインディッシュ、というわけにはいきませんでしたね( ´∀`)
  • 高級肉、憧れの存在ですね。どうしても質より量に走ってしまう性が恨めしい!
    お腹が空くので食事シーンは無しにしました(笑)
  • ♬平九郎~爺さん!邪魔をしないで~、平九郎~爺さん!
    私たちこれからいいところ~♬ 
    (ピンクレディ ペッパー警部のメロディで)

    美味しい焼肉のあとの楽しみが台無しね。
    残念。
  • 高級肉、食べたい。
    しかし一晩で一か月分を食べきる!
    夢のようです。

    さて、平九郎さんの「努力」は実を結ぶのか?
    それとも二人の愛が勝乃か?
  • 嗚呼、ブタのよね(88)には高級牛は無駄じゃ、と何処からか聞こえてくるではあ~りませんか。

    A よねったら、いっつも半額商品しか買わないくせに、人の懐あてにしちゃって、日頃ながめるだけの高級肉を、つむぎさんが素直なのをいいことに勝手に薦めちゃって・・
    いい根性してるじゃない? あんなに買っちゃってさ どんだけぇ~

    B でもね、あれでもちょっとは遠慮してたみたいよ。

    C え~っ、どこがぁ、そんなことないって? 
    たらふく食っちゃったあのお腹は何よ? 

    A なんのなんの、あれは自腹よ。 だって、あれ殆どぜい肉よ。
    あんなのかわいいもんよ。 あれで遠慮しなかったら、太鼓腹も特大の大太鼓になっちゃったでしょうよ。

    C でもさ、一人暮らしって同情かって、誕生会までしてもらってさ、なんなのよ、ね~ぇ。

    よね88 あんたら、聞こえちょりますでぇ。年寄はの、都合のいい時はよ~く聞こえる耳を持っちょりますけんね、ツン。

    解説 この「ツン」は、関川さまの作品へのコメントで、彼に可愛いと煽てられたのが嬉しくて、ここで使ってみたようですな。 
    バカめ!すぐ調子に乗るんじゃない。 ここらで止めさせないと。    

    ** また暴走してしまいました。申し訳ございません。m(__)m

  • はっ、早く!
    早く福の神を生むんだ、つむぎさん!

    ……でも、自宅だと愛を囁くのさえ ままならない……💧
  • 平九郎爺さん、チッスて(笑)
    遠慮なくと言われても……ムリですよ、きっとw
  • この美のこさん、こんばんは!
    平九郎爺さん、なかなかの存在感を発揮してきたようです(笑)
    そしてペッパー警部なつかしい! 警部なんですよね、刑事とかじゃなく。
  • つむぎさん、こんばんは!
    高級肉、なかなか食べる機会ないですからね(笑)
    それこそ接待みたいな人のお金で食べるくらいしか考えつかないですね、もっともそういう機会もないんですが(笑)
  • 88ちゃん、こんばんは!
    およねさん、これからキーマンになります。ピーマンでないですよ。
    来るべき舞台に備えて、ビシビシと演技指導をしないと!
    寝ている場合じゃないですよ!
  • 愛宕さん、こんばんは!
    本当にいいネームですよね。カラス天狗の小僧から爺ちゃんまでオールマイティーにこなせるステキな響きです。
    いまのところつらつら書けてますね(笑)
  • 愛宕さん、こんばんは!
    本当にいいネームですよね。カラス天狗の小僧から爺ちゃんまでオールマイティーにこなせるステキな響きです。
    いまのところつらつら書けてますね(笑)
  • 汐凪さん、こんばんは!
    ここでいきなり福の神出産も急展開ですね(笑)
    それにはまず高い壁、平九郎を越えねば……
  • 霧野さん、こんばんは!
    じいちゃんの言葉遣いはちょっと迷いましたね、チューもありかと思いましたが、チッスのほうが枯れた味わいがあるのかと。
    ええ、すごく悩んだんですよ、ここは。
    なかなか気づかれないと思うんですけど(笑)
  • こんにちは。
    にぎやかで美味しくて、みんな満足! 幸福の貧乏神ですね。
    クリリンまでお相伴にあずかって、しかもすごい勢いだったみたいで、どうもすみません(^^)
    明日から1カ月、サバイバルされることをお祈りしています。。。
  •  関川さん、『電動マッハ』にレビューありがとうございました。
     なんか、……というようなご挨拶する雰囲気じゃないんですが、近況ノートで小説連載してるんですかね。
     しかも大盛況ですね。素晴らしいことです。

     
  • 久里さん、こんばんは!
    まぁ焼肉となればニャンコも好きだろうと。基本肉食ですからね。
    そしてサバイバル生活の幕開けです。他人事と笑ってられないですが(笑)
  • 雲江さん、こんばんは!
    電動マッハ、このギアは子供だったら熱狂しますね、そして大きな子供たちも金にあかせて楽しみそう。
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