再生

子供の頃の夢の中に歩いた地下室の記憶。どこまでも連なる部屋の壁紙には蝶の模様が描かれ、一つ部屋を進むごとに増えていく。蝶が部屋を埋め尽くしたとき「私」の頭によぎった像は、―― 第…

祠襲撃の話を妻に聞かせたことが正しい選択であったのかどうか、僕はいまもって確信が持てない。多分それは正しいとか正しくないという基準では推しはかることのできない問題だったのだろう……

夜明け前の岬に現れる大阪出身の「渡し守」の男。依頼人のために東方へ渡りをつけると言う。奇怪な使者を三枚に下ろす男が語る「お釈迦さま」の姿は……

第七回こむら川小説大賞参加作品。 お題「光」。

多摩の田舎の村のお姉さまは、僕たちが虫捕りにいくたびついて来て、ニコニコ笑いながら見守ってくれます。夕方、帰りがけになると、クワガタムシは○○○○てはいけないとお姉さまは言いまし…

恢炉（ひろいろり）あおい、ぼくの妹は奇妙な習慣を身に着けている。 恢炉（ひろいろり）桃李、私の兄は部屋の壁の染みを気にしている。 ――連続飛び降り自殺、ディープ・マゼンタ、擬茎、…

発見された手記に記録されているのは、百年近く前の西暦1925年に漂着者が行き遭った不思議な村。そしてその村に伝わる創建の物語だった。古老の語りを記録する男は、春を迎える祭の客人と…