「それ嘘だから! 母の嘘だから!」
蹴り開けられた壁の穴から、ディーノが飛び出してきて、オリヴィアの手をぐっと握りしめた。
「頼むから! 子どもを産んだ直後に父や母みたいな呪文を延々と唱えないで! トラウマになるから! 生まれた瞬間に、ここにいるのはマズい! 洗脳される! 即座に逃げる! なんて、逃亡計画を立てざるを得ない! いきなり苦難の人生なんて、ハードモードをボクとオリヴィアの子どもに与えないで‼」
口から唾液を飛ばす勢いで、ディーノから告げられて。
オリヴィアは「は、はあ……」と目を丸くした。
そしてガードルフは。
壁の穴から出た後、ディアヴォルが穴から出てこないうちに、素早く穴を塞ぎ、更に結界まで張った後、ウィスティリアに告げた。
「……とある動物の雛は、生まれて最初に見たものを親と思う」
「は、はい? ガードルフ様? いきなり何のお話を……?」
「同様に、卵から孵ってすぐに、延々とオカシナ呪文を告げられると、その呪文をまともに記憶してしまうのだ。魂に刷り込まれるほどに……! 嫌だと思いつつも、脳から離れないのだ……!」
ガードルフの肩が、わなわなと震えていた。
「は、はあ?」
「故に、この私も。悔しいことに、おかしな文言を、無意識のうちに発してしまう病に侵されている」
「え、え、え⁉ 病、ですか⁉」
「病……、いや、呪いかもしれんが」
そういえば……と、ウィスティリアは思い出した。
初めてガードルフと会った時。
『漆黒の天使様』や『黒い翼の御使い様』とガードルフを呼ぼうとしたら、『俺は他の愚鈍な愚民たちとは違って、万能の、特別の存在なのだぞ』などと主張するような、そこはかとなく恥ずかしい名称は……と、言われ。
更に、ウィスティリアが で、では『紅蓮の炎を身に纏う高貴なる魂の……』と続けたら。
『闇の深淵より現れし爆炎の御使い』
『理《ことわり》より外れし静謐なる魂』
『混沌より産まれし闇の世界の構築者』と、ガードルフはすらすらと答えてきた。
なるほど、とウィスティリアは思った。
生まれて直後の記憶は、その後の人生に多大なる影響を与えるのね……。
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短いですが!
全裸待機は寒いので!
今回ガガガと書きました!
続きはまたいつか……。がんばります……。