• 異世界ファンタジー

小話:侯爵家の兄妹

コスタンツィ家の次期侯爵、アルド。
彼のシスコンぶりは社交界でも有名で、妹への婚約の打診は父へと話が行く前に握り潰されていたという。
視察と交流に来た隣国の王族が妹に一目惚れしたときも、妹を他国にやることは断固阻止すると息巻いていた。
笑顔の絶えない爽やかな好青年ではあるが、こと妹の話になると人格が変わるのだ。

結局その隣国の王子殿下は「あるんだかないんだかわからない王位継承権など、メリア嬢と共に過ごせないならなんの価値もないのでいりません」と放棄した挙げ句、駐在外交官としての地位を確立してメリアとの婚約を内定させたのだが。

アルドもそこまでの覚悟と行動力があるならと、そして当の妹が情熱に打たれて彼を受け入れたのが決定打となって最終的には父を説き伏せる側についた。

アルドの論としては
「メリアが望む相手と結ばれ、しかも遠くには行かないのであれば。それはつまり、家族が増えるだけのことだろう。手も目も届くところにいるなら歓迎するさ」
ということらしい。

つまり妹が望んでいない相手はどれほど好条件でも蹴るし、相思相愛であっても生活圏が離れるなら阻止するということだ。


メリアの婚約にまつわるこの話は、後々まで「人生で最も頭と胃が痛かった」とシオンの酒の席の話題になるのであった。

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