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もう物議しか醸さへんで、あとがきがわりにここに書きます→「妊娠した男」

いつも文章を短くまとめすぎて、愛想がないんですよね私の文章。
作品は公開してしまって、もう新しい章を追加できないので、ここに後書きがわりの文を書いていきます。
「この作品触っていいのか…とっつきにくいぞ」と思う方、どうぞここから呼んでくださいね。

「妊娠した男」を思いついたのは1/4、三が日が明けて、でも定休日だったから結局
お仕事がお休みでした。目覚めるときに俄かに思いつき、そのまま半日かけてイメージのままに書いていきました。おやすみの日でよかった…

タイトルからしてもう物議を醸すことは明らかですよね。なので、「どうやったら誰も傷つけないかなー」と気遣いながら、言い換えれば、「傷つく人は出てしまうだろうけれど、それを最小限に留めたい」と思いながら書きました。
私の作品って社会派になることが多くて、そうなるとどうしても問題提起というか、「ここを刺してやろう」にはなるんです。それは、社会のどんな課題をテーマにしてもそうですが、どこかのグループを守るためには相対するグループを刺激しなければならないからです。

でも、私が目指したいものは、「女が悪い」とか「男が悪い」とか、「女の気持ちをわかる」とか、「男の気持ちもわかる」とか、従来通りの対立から抜け出そうということなんです。

私が記憶している限りで言うと、「ジェンダーフリー」という言葉が人口に膾炙し始めたのって、およそ10年くらい前ですか。
それまでの「男vs女」みたいな二項対立、例えば、女性の育児の苦労を男性は分からないとか、反対に男性の社会での苦労を女は知らないとか、そういう諸問題も片付かないうちに、「実はもっと性別ってたくさんありますけど?」って感じで性の多様性という概念がどっと流れ込んじゃった、という感覚があります。

それは、日本の初動が遅いといえばそうなのですが、一方で「リベラル」とは本来誰の権利も傷つけないものであるはずなのに、誰の言葉も聞かないまま生活空間のゾーニングとか、学校で子供達に「生物はオスメス・人間は男女の性別を持っている」という前提をスキップして「性というものは多様性があって」というところに来てしまった。

私は、個人的にはその現象はやや性急な波だな、と思いつつも、もはや「少数派」という存在を無かったことにもできない。一旦リセットすることができるとしても、それは数十年後に再び掘り起こされて、「かつてこういう人々がいた」という事実を眼前に突きつけられる日が来るだろう、とも思います。
いないことにはできなくて、もはや無視できない。

だから、です。
それだから、タイトルに戻りますが、もしかしたら「男性の妊娠」が、どれほど反対されようとも実現できる社会になってしまうかもしれないから。
嫌悪感で議論を終了させる前に、どんなふうに社会が転がっていっても、あらゆるグループの人がお互いを理解し合うという、本来の意味でのフェミニズム、本来の意味での性的多様性を取り戻したいと願って書きました。

もう少し内容に触れましょうか。
主人公「男」は、もう名前をつけませんでした。それは、あらゆるmaleに自分の立場と置き換えて読んでもらいたかったからです。同人誌でセックス描写の時に主観で書いてあるものがありますけど、それですね。
第一人称主観の視点、「男性目線」の視点を提供したかった。
不特定多数の「男」であり、貴方のことです。

でも同時に、「フェミニズムと言いながら、やっぱり男を攻撃してんじゃねえか」とも言わせたく無かったので、そこはずっと中立的な目線を保つよう手探りしています。
手探りです。

一般に、「女性は男性から好き勝手なことを言われる」と思われがちだけれど、「女性も、男性に対して好き勝手なことを言う」のが、綺麗事では括れない箇所だと思います。
それを言うと、「男性は女性を特別扱いすべき」と言うことをフェミニズムだと思っている人からは理解されないんですけど。

もう一つ、主人公のことは、本当に一般的というか、ある種「主体性がない」男性にしました。
ゲイカップルなんだけど、それは、ゲイカップルといえども男性の苦労を理解しあったカップルばかりでなくて、男女の間に生じるだろうパワーゲームが、ゲイカップルにも存在しうるだろうな、と想像しての決定です。
つまり、ステロタイプの女性イメージですね、それをそのまま主人公に移植しました。
男性パートナーに決定権を握られている。
ゲイであることに大したポリシーを持っているわけではない。
ただ、男性だから、という理由で、旧態的な男性の役割(例えば女性は気遣うもの、という考え方や、男は外で働くもの、という概念など)を負ってもいる。

そんな主人公は、ある時、妊娠してしまいます。
彼が妊娠できる体になるため手術をしたのも、パートナーに避妊をさせなかったのも、「彼の選択だ」ともいえないくらい薄っぺらい動機、つまり「なんとなく」でやってしまった。

それは、現実の多くの女性にも言えることだと思います。
「フェミニズム」とか、「ジェンダーフリー」という言葉は聞き齧りながらも、具体的に、はっきりとした意思を持ってそれを考えたり、権利を享受したり、あるいは自分の身を守るために身につけるべき知識、日常生活を送るための一般常識だけでなく、避妊をする・してもらう、妊娠した後の対処、出産前後の手続きなど、いざ当事者にならないと分からない物事を、あるいは一生知らないまま生きていってしまうかもしれません。

なんとなく付き合って、なんとなく恋愛して、なんとなくその先まで…
でも、そこに、寂しさだとか、本当は自分はこうしたかった、という意思が全くないのかと言われたらそれも違う。

主人公はそんな男であり、そして女でもあります。

繰り返しますが、タイトル通り、どこの誰が読んでも物議を醸さないわけにはいかない作品です。
苦手だったら避けても構いませんし、びりびりに破いてしまっても構いません。
でも私が言いたいことが、「誰も傷つけたくない」ことなのだと伝われば、
それが私にとって最大の成功と言えるでしょう。

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