いつもお読みいただき、ハート応援、星レビュー、ブックマーク等ありがとうございます。
モチベーションになっています。
さてジョヴァンニ回ですね。実はここまで2話ばかりボツにして最終的に時系列通りになっています。
オリヴェルキャラ違うな、とか諸々あってほぼボツです。オリヴェル本当に掴みづらくて書きにくい。
いつか何かがどこかで復活するエッセンスがあるかもしれないので、どこかで出てきたら復活したんだなと思って読んでください。
https://kakuyomu.jp/works/16817330661194033652/episodes/16818622171550283806以下、没シーンです。
没1
その顔に浮かんだ表情ででオリヴェルが努めていつも通りの口調でいようとしているのが分かってしまった。
「じゃあ、行くヨ。覚悟決めて。武器持ってる?」
「さっきあんたが倒した敵から使えそうなやつを拾っておきました」
「さっすが、ヴァンニ、じゃなくて殿下ちゃん」
「そこはもうヴァンニでいいでしょ」
「たしかに。ヴァンニ、冷静でいいね! あ、そうだ、忘れちゃってたんだけどソフィアにこれ返しておいてくれる?」
血に染まった剣帯からオリヴェルは剣護を外す。ジョヴァンニはそれをオリヴェルの目の前でヒラヒラと振ってやった。
「了解です。リアム殿下に渡しますね」
「は?! はぁああああ?!」
「じゃあ自分で返してください」
「あー! ヴァンニ、お前クソ野郎の才能がある!」
「褒め言葉ですね。じゃ、頑張ってください」
没2
「体力、だけはあって良かった……!」
息も絶え絶えのジョヴァンニはオリヴェルの後ろについて地下遺構への階段をおりていた。
学園に来てからデスクワーク続きでずいぶん鈍っているが、農地の見回りに農作業手伝い、さらに葡萄酒造り。実家の仕事は体力勝負だ。
だからここにくる道中に、オリヴェルに囮として殿下ちゃんなどと呼ばれ散々走り回らされたけれどもなんとかいつも通り動けている。
階段を降りる前に見た血溜まりの中に沈んだ死体を見てから、オリヴェルの様子が変わった。
常にない真面目な様子で会敵したら彼が相手を止めているうちにレジーナを探しに行くようにいい含められている。
途中の敵が持っていた短剣を拝借し、階段の途中にあったランプを一つ手に持ってオリヴェルの後ろを歩いて行くと、階段の下にもオリヴェルがいた。
「えっ!? 先生が分身……した??」
「オレってば器用ー。ってヴァンニ緊張感切れるからやめて! 多分アッシェンでショ。あの粘着質なキモ視線に覚えある。っていうか、あの見た目ってことは単なるディアーラ繋がりじゃなかったのかヨォ……あれ弾けん校長ボンクラすぎじゃね?」
「ノーコメントで。面接の時は違う人が受けたとかじゃないですか?」
「まあ、いいや。さっき言ったの覚えてんね。オレのことは気にせず、出来れば別の出口探して。多分いくつかあったはずだから」
オリヴェルがひらりと階段から跳躍して、アッシェンに斬りかかり、壁際に押し付けて鍔迫り合いに持ち込んでくれる。
「いけ!」
ジョヴァンニは二人の横を全力ですり抜けその地下道の先にある元牢屋や拷問部屋と思しき小部屋を覗き込みながらレジーナを探しているとさらに奥のほうからレジーナの叫び声が聞こえた。
あわててそちらに走っていくと、奥まった小部屋の寝台の上で、腕を拘束されたレジーナの上に覆い被さるテオドールを発見した。
足元に何か煌めく小さなものが落ちていて、拾ってみるとそれはレジーナのシャツの白蝶貝の釦だった。
テオドールの暴力に目眩を覚えるほどの激情が噴き上がり、それに反して頭の奥底が凍りついたように冴え渡った。
『きもち、わるい! 触らないで!』
レジーナの涙交じりの叫びはテオドールに対する嫌悪と拒絶の響きしかない。
『レジーナ、僕がお前のことをどれだけ愛しているのか。お前のその美しい体に刻もう。愛している。レジーナ』
相手の意思を無視して自分の欲を満たそうとするなど論外だが、さらに罪深いことにそれを愛だと嘯いている。
一刻も早くこのクソ野郎を排除しなければと決意したジョヴァンニの目に、部屋の隅に置きっぱなしにされたトイレ用の古い壺が目に入った。レジーナにかかったら大変だから中に何も入ってないのを確認してジョヴァンニはそれを振りかぶり、渾身の罵倒と共にテオドールの頭を横薙ぎにする。
インテリオ語で『クソ』と『メルシア人』を意味する単語が似ているために、連合王国になってから使ってはいけない言葉筆頭になっている罵倒語は、今、この時にこそ使うべき言葉だ。
『お前にピッタリの鈍器のお味はどうだ。メルクソ野郎』
壺を捨て、レジーナの上に崩れ落ちたテオドールを床に投げ落とした。
「今縄を外す!」
縄をナイフで切ってレジーナを助け起こし、ローブを肩からかけてやると、強張った体を震わせたレジーナの大きな瞳からぼたぼたと涙がこぼれ落ちる。
「酷い目に遭いましたね……もう大丈夫です、と言いたいところなんですけど、ノーザンバラの奴らが学園に侵入して生徒こそ逃せたものの学生会の役員と教師が学園内に閉じ込められてしまってだいじょばないんですよ。今。オリヴェル先生もアッシェン先生とガチバトル中なんでオレ達2人で安全圏に逃げないといけません」