お久しぶりです!更新今週中にはできると思います!
以下 リハビリの閑話
「チョコ山彼方だ」
「たすけて~~~~!」
紙袋二つをチョコやお菓子でパンパンにした彼方が頭を抱えてる。
ギリとして渡されたなかに、何個の本命が紛れ込んでいるのかを考えるだけで彼方ラブ勢の幼馴染としては頭が痛くなる思いだ。
そんなことを考えていると、がらりと扉が開いて知らない一年生が入ってくる。
「失礼します。明日先輩いますか?」
「おー!いるよ~!」
よく話す同じクラスで友だちの佐々木さんが答えて、手招きをする。
すると一年生は嬉しそうに教室に入ってきた。
「いつもお世話になってるのでチョコを渡しにきました!良かったらどうぞ!ホワイトデーは気にしないで大丈夫です!」
「うん、ありがとう。大切に食べるね」
「はい!」
にこり、と笑う彼方とキャーと黄色い声を上げて、教室の外へ逃げていく一年生。
教室の前には彼女の友だちがいて、健闘を讃えている。
私が知らない間に、明日彼方にチョコを渡す、という行為自体が度胸試しのようなブームになっているみたいだ。
知らない間にいくつかのルールが定められていて、必ずギリとして渡す、ホワイトデーを気にしない、抜け駆けはしない、などといった決まり事があるらしい。
いや、アイドル?
まあ、底抜けに優しい彼方だからこそ、こういう文化ができたのはあるんだろうけど……
冷凍保存とかして、このチョコを全て1人で消費するのが彼方だ。
そしてその分、一か月ぐらいは運動量が増える。
さらには親しい人には軽い感想を言ったり、誰に貰ったかを結構覚えていたり。
いや、幼馴染ながらちょっと怖いかも……
「あ、そういや明日(あしたの)は嫁からは貰ってないの?」
「嫁?」
「うん、隣の嫁さん」
佐々木さんの視線が私を向く。
「あ、寧々か」
「他に誰がいるのさ~」
「嫁さんじゃない。幼馴染。配偶者より強い説もある」
「確かに最近は負けないイメージもわりとあるよね。幼馴染って」
佐々木さんの言葉に、2人して首を傾げると「あ、なんでもないよ~」と佐々木さんが笑った。
「あげてない。しょっぱいの欲しいだろうから帰りにラーメン食べに行くぐらい」
「雪村、ダメだよそれは。例え明日(あしたの)がチョコまみれのしみチョコ山コーンチョコ次郎アソートだとしても、特別な人からのチョコってのはベクトルが別なんだから」
佐々木さんの言葉を聞いて、そうなの?と彼方に視線を向ける。
彼方は若干顔を赤くしながらも、こくりと頷いた。
なるほど……
でも、チョコ用意してない。
溶かして成型するにも家のキッチンはアレだし、彼方の家ですることになるかも。
学校の調理室とか借りれるかな……?
「雪村、明日(あしたの)はちょろいよ。たぶん10円チョコでもすっごい喜ぶよ」
「本人の前ではしないでほしい話だね」
「でも喜ぶでしょ?」
「喜びますけれども……」
ぽちょぽしょ呟く彼方を見て愉快そうに笑いながら、佐々木さんは手に持っていたポッキーの袋を器用に一本だけ出した状態で差し出してきた。
佐々木さんの意図を組んで、一本だけ取って彼方に向ける。
「あ、ちなみにお二人さん、ポッキーゲームって知ってるかい?」
「やらないからね!」
彼方はもう、と言いながら私の手からポッキーをぱくり、と食べた。
「いやぁ、こう、いつも余裕な美人が耳まで真っ赤にしてる姿を見るとそそられるねえ」
「ほんと、佐々木って良い性格してるよね」
「誉め言葉と受け取っておくよ。ほら、雪村もう一本取っていいよ。私からのバレンタインチョコだ。ありがたく受け取りたまえ」
「ん。ありがとう」
もう一本取って、食べる。
うん。美味しい。
佐々木さんは何が面白いのか、私が食べる姿を楽しそうににこにこと見ている。
「おーい、日直の人~!西岡先生が呼んでたよ」
「あ、私だ」
貴重な昼休みが……
ため息をついて、席を立つ。
「ちょっと行ってくる」
「いってらっしゃい」
「いってら~」
2人に見送られながら、私はとぼとぼと歩いて行った。
◆◆◆
「そういえば佐々木は、誰かにチョコ渡したいとかないの?」
「もうあげたよ。本命をね」
私の返答に明日が目を丸くした。
野次馬モードで、「だれだれ!」と詰め寄ってくる明日をへらへらとかわしながら、私はもういない雪村の背中を視線で追っていた。