リビングに漏れてくるのは、水の打ち響く音。
「………………」
ジャー…………
「…………………………………………」
耳を澄ませているわけではないが、聞こえてくる。シャワーの音。
実は今、凛がお風呂に入っているのだ。
凛にリビングで待っててと言われたので待っているが、やることもない。
「いや別に悪いことをしているわけではないんだが………」
今日は両親が出かけているので家には俺と凛しかいない。それだけで、なにか悪いことをしているような気分がするのだ。
やがてドアが開く音とともに凛がリビングに入ってき――――――
「ち、ちょっと!?な、なんでバスタオルなの!?」
なぜか凛はバスタオルを巻いただけの格好だった。俺はすぐに首を真後ろにぶん回したが、程よく富んだ二つの盛り上がりが頭から離れない。
「えへっ」
なんとかその光景を忘れようとしていると、視界にさらなる驚異的な光景が映り込む。
「……………っ!!??」
俺が床に座りながら後ろを向いていたからか、視界に映ったのは凛の太もも。
その光景と同時に香る甘い匂い。やばい、いい匂いすぎて気絶しそう……。
毛穴一つ見えない、もはや芸術といえる太ももがバスタオルからのびている。
そこには拭き忘れたのか水滴が一滴だけついていた。
「………兄さん、どうしたの?ボーっとして」
凛は俺の顔を覗き込みながら、顔の前で手をぱたぱたさせた。
「うっ、ちょっと………待って………」
そうすれば自然と俺の目の前に胸が……!
「なんで?兄さん顔赤いよ?」
「い、一《いっ》旦《たん》着替えて……!」
俺は凛に目を向けないように呟く。
「え〜?無理かも」
「ふぅ良かっ…………無理!?」
凛は俺の目の前に正座をして、腰を少しだけ浮かせた。そのまま俺と目を合わせる。
「んふっ、兄さん♡」
「なっ……………な、に?」
「んふふっ、なんでもない♡」
ど、どういうことだ!?
「は、恥ずかしいって……《《凛》》」
「………っ!!??」
すると、いきなり凛が目を開く。だんだん頬が上気していき、耳まで赤くなる。
「そ、その………凛って呼び方、まだ慣れてなくて………ううっ」
凛はそう言うと、唇をぎゅっと結ぶ。その目は落ち着かずに揺れている。
なんでバスタオル一枚という状《異常》況《事態》より俺に凛って呼ばれるほうが恥ずかしがってるんだ?
「凛って、俺のことからかうけど意外とすぐに赤くなるよね」
「なっ……!んうう〜っ!んんっ!んううう!!」
凛はプンスカ怒って俺をぽかぽか叩いた。
全然痛くない。やばい、可愛すぎる。
「ご、ごめん……!そんな怒ると思わなくて……!?」
「怒ってないし〜!」
「はぁっ、はぁっ………」
猫パンチと同等の威力の可愛いパンチを繰り出していた凛。意外と本気だったらしい。息を切らしている。
肩で息をする凛。その小さな肩が揺れ―――
「―――っ!!」
肩からバスタオルがするりと滑る。
俺は反射的に腕を伸ばすと、つるりと滑るバスタオルを掴み、そっと肩にかける。
「………あ、ありがとう。兄さん」
「き、気にしないで…………」
なんだか気まずい雰囲気が流れる。
「………その、見えちゃった?」
凛は泣きそうになっている。
「いやいや!全く、何も見えなかったよ!」
俺が全力で否定すると、安心したのか胸を撫で下ろした。
「よかった………《《日向に勝ってからじゃないと見せられない》》よ……」
「………、……???」
それってどういう………
俺は考えるのをやめた。
「じゃあ……着替えてくる…………」
「うん…………」
ぱたぱたとお風呂場に駆けていく凛。
その時風に揺られたバスタオルがめくれてお尻が見えそうだったことは、墓まで持っていくと心に決めた。
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『クールで男嫌いな高嶺の花が義妹になったら、俺にだけ甘々にかまってきて可愛い。』
SS第二弾です♪
……自分で書いてて、『太ももに伝う拭き忘れた一滴の雫フェチ』という謎の扉が開きかけたんですけど、私だけですか?