「兄さん、ちょっと私の部屋に来てほしい」
「え………?いいけど」
俺は少し訝しげに思いながらも、凛の部屋へ入った。
凛はガチャリと部屋の鍵を閉め、俺に向き合う。その頬は上気しており、しかし口は少しだけニヤついていた。
「凛、なんでここに呼び出したの?」
「―――お兄ちゃん」
…………………ハッ、意識が吹っ飛んだ!?
「ど、どうしたのいきなり………!?」
「えへ……顔赤い」
俺はパッと後ろを向いて顔を隠す。
すると凛は後ろに回ってきて
「だめ。顔を見せて………お兄ちゃん♡」
「………………っ、待っ―――」
「お兄ちゃんっ♡」
『お兄ちゃん』と、その言葉は俺の心臓に強烈な一撃を叩き込む。このままでは俺の理性が吹っ飛びそうだ。
「待って、本当に………」
「え〜なんで?お兄ちゃん♡」
強烈な一撃を受けて、少し意識がなくなったが、俺はなんとか堪えて言う。
「自分の可愛さをもっと分かってほしいんだけど…………」
「…………っ!?!?」
俺がボソッと呟くと凛はよろめき、そのまま床に、ペタンと女の子座りをしてしまった。
「ううっ……、ずるい…………」
と言って、凛は俯いたまま顔を両手で隠す。
耳にかけていた艶のある美しい髪が垂れ下がり、なんだか色っぽく感じてしまったのは俺が悪いのだろうか。
凛はしばらくそうしていたが、突然バッと立ち上がり、俺の目を見て言った。
「《《にぃに》》もカッコいいよ」
グハッ………!
『にぃに』って、それもまたダメージがやばいやつ……!
「ちょっ………からかわないでよ」
「ふふっ、にぃに可愛い………♡」
そう言って俺をからかう凛。しかし彼女も耳まで赤くなっていることを隠しきれていない。
「なんで自分も恥ずかしいのに、俺のことからかうの……?」
「べ、別に恥ずかしくない………」
「いや凄く顔赤いよ?」
「……っ!?これは違くて………っ」
凛は口を結ぶと、やがて決心したかのように口を開く。
「………お兄ちゃんがカッコいいって思ったのは、本当だし…………」
そう言ってまた口を結ぶと、俺から目を背ける。
からかいにしても、少しやりすぎでは?
多分今の心拍数190超えてるぞ
くっ………そっちがその気なら…………!
「《《凛ちゃん》》も可愛いよ」
フッ、どうだ………………っ、ああやばい。顔が熱すぎる……。
俺は、反応を見ようと凛の顔を見る。
「ぁ………ぇ……それって………ぁゎっ」
とても動揺していた。
耳まで赤くなっていることはもちろん、口をパクパクさせて、目を丸くしている。
少しやりすぎてしまったか……いやでも、凛だってこのくらいやってきたし。
慌てふためいていた凛だが、突然ピタッと、まるで時が止まったかのように動かなくなった。
「…………え、どうしたの凛………?」
「…………………………っ、はあっ……!はあ、はあっ………っ」
しばらく停止していた凛は、やがてマラソンが終わった人のように荒い息づかいで動き出した。
「………あ、ご、ごめん」
俺はからかいすぎてしまったことを謝る。
凛は心臓を痛そうに抑えて、倒れ込む。
「えっ凛、大丈夫!?」
「はぁ、はぁっ………んぐっ………兄さん…………危ない………っ」
「ごめん……凛がこんなになるなんて思わなくて……」
しばらくして凛は落ち着くと、深呼吸をして息を整える。
「ふぅ…………兄さん、私……可愛い?」
「――――えっ!?!?」
またからかうつもりなのかと思ったが、凛は恥ずかしそうにモジモジしている。
やっぱり女子って男の目が気になるものなのか……?
「まあ………そりゃあ……か、可愛いんじゃない?……ほ、ほら、男子からもすごい告白されてるらしいし……!?」
「兄さんは、どう思ってるの?」
………普通、兄の感想なんて気になるか!?
俺はよく分からないが、少しやけくそ気味にこう言い放った。
「凛は可愛いよ……!有名なモデルと並んでも俺はきっと凛に目を引かれるよ!」
………なんだかやばいことを言ってしまった気が………。
その後の凛は、いろいろとおかしかった。