• 現代ファンタジー

『年輪は、未来を託す』を書いて

緑の国編を書きながら、ずっと考えていたことがあります。

今回の物語は、今の日本で私自身が感じている違和感を重ね合わせた章でもあります。

「多文化共生」という言葉自体を否定したいわけではありません。

文化が交流し、お互いを知り、尊重し合うことは、とても大切なことだと思っています。

でも、その一方で。

長い時間をかけて受け継がれてきたその国の文化や祈り、土地の記憶まで「古いから」「世界基準だから」と簡単に塗り替えられてしまうことが、本当に共生なのだろうか。

そんな疑問が、ずっと心の中にありました。

緑の国で描いた「祈りの木」は、一本の木であると同時に、人が長い年月をかけて大切に守ってきたものの象徴です。

文化。
歴史。
自然。
伝統。
そして、その土地に暮らす人たちの想い。

それらは数字だけでは測れません。

作中でヴァーニスは、「壊すこと」に価値を見いだします。

一方でエメは、「支配しないし、されない」という答えを選びました。

誰かを押さえつけるためでもなく、自分の正義を押しつけるためでもなく、一緒に未来を作っていくという選択です。

だから最後に、祈りの木は「守れ」とは言いませんでした。

「一緒に歩いてほしい」

そう願いました。

私は、この言葉こそが本当の共生なのではないかと思っています。

誰かの文化を奪うことではなく。
誰かの大切なものを否定することでもなく。

お互いが大切にしているものを知り、尊重しながら、一緒に未来を育てていくこと。

その願いを、『年輪は、未来を託す』という一話に込めました。

もちろん、この作品はフィクションです。

ですが、読んでくださった方が「自分にとって守りたいものは何だろう」と少しでも考えるきっかけになれば、作者としてこれほど嬉しいことはありません。

これからも『花緑青回廊』は、それぞれの国で起こる出来事を通して、「人が本当に大切にすべきものとは何か」を描いていきます。

ぜひ、これからも物語を見届けていただけたら嬉しいです。

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