公開しているこちらの作品についてのお話です。
https://kakuyomu.jp/works/16818792438524352078
〇作品について
「死にたい人に生きていてほしいと願うのは残される側のエゴでしかない」という私の持論のひとつを核に据えた作品を書きたい、そんな思いから生まれたのが今作「それでもいつかは春がくる」(以下それはる)だったように思います。今回「生きて欲しい」と願うのは死んでしまった少女なのですが、それでもこの軸はブレてないと思います。
死にたいと願うこと自体を、私は悪い事だと思いません。だけど目の前で大切な人が「死にたい」と言ったなら、それを止めずに見送ることなんてきっと出来ないと思います。
その「死なないで」の願いが、私の我儘でしかないとしても。
実際その願いは、私の我儘で、私のエゴでしかないと思います。それでもきっと、願わずにはいられない。
死にたいという願いが悪じゃないなら、生きてほしい、死んでほしくないという願いも、悪ではない。その相反する願いがぶつかった時、どちらを選ぶか、どうするかは当事者にしか決められないと思うのです。
それはるは願いの物語であり、選択の物語だと、私は思います。願って、願われて、そしてその願いを受けて「これから」を選択する。それはるはそんな話です。
彩生は選択の先に、痛みを抱えながらでも、それでもきっと幸せになれる道を掴みました。だけどそれは彩生が元来「恵まれていたから」だとは思います。それはるは全体的に、私にしては珍しく、フィクション故のご都合主義というか、綺麗事を書いているからです。
それはるの着地点をこういう方向性にしたのは、晴や冬樹と同じくらい、私も彩生に「生きて幸せになってほしかった」からかもしれません。だってこれは、願いの物語ですから。
あとはなんというか、人の呪いみたいな願いってサイコーですよね、みたいな性癖はめちゃくちゃ詰め込まれてる気がします。あとド好みの死別を久しぶりに書けて満足してます、とか……なんか最悪すぎる話になってきましたね……なんせヘキが終わってるので……。
〇各キャラについて
・浅桜彩生
それはるの主人公です。彼女は絵の天才故に理解されなくて、理解されないことに苦しんでいた時に出会ってしまった理解者(晴)に依存してしまった感じの女の子です。
晴が自分の死後の彼女のことをめちゃくちゃ心配して手紙を残すレベルで情緒不安定な女、文字に起こすとシンプルにやべぇ。でも実際それくらい彩生って晴に依存していたんだろうな、と思います。自分を肯定してくれる存在って、嬉しいですからね。
いつもの自創作の女感があり、今更なにを言えばいいのか……な感じもある彩生ですが、ひとつ明確に違うのは、彩生は「未来を生きる道を選んだ」キャラクターということでしょうか。自創作には刹那的な生き方するキャラクターが多い印象なので、こういう風に立ち直って前を向く彩生の姿を書くのは、新鮮味があり楽しかったです。
今回は少し、登場人物の名前の決め方の話もしたいと思います。
彩生の名前の由来は、ズバリ、世界を「彩」って「生」きる、です。私は登場人物の名前を決める際、よく名付けサイトを使うのですが、彩の付く女の子の名前の一覧をぼんやりと眺めていた時「彩生」という名前を見つけた瞬間「これしかねえ!!」と思いましたね……。
ちなみに苗字は、元々春っぽいものにしたいと思い、それに加えて晴と出会った場所は桜の咲き誇る川辺ということで「桜」の文字があるといいなと思い、浅桜に決めました。
余談ですが、彩生は絵の才能以外はてんで何も出来ない女の子で、生活力の欠片もなければ協調性もなく、絵を描き始めれば時間も寝食も忘れて完成するまで絵を描いてるみたいな、そういう才能特化というか、こいつは絵を描く道以外の生き方はできんやろ……みたいな女の子なんですが、話数が少なすぎて無理やり部分的にそういう描写を挟むことしか出来ず、悔しい……の気持ちはあります。一極集中天才人間って、書くの、難しいですね……。
・綿貫晴
それはるのヒロインです。彩生に生きていてほしいと願って手紙を書くような、健気な女の子です。健気なのか?
彼女は明るくて天真爛漫なイメージなので、手紙にもできるだけ茶目っ気のようなものを出すように意識していました。高校生の女の子が友人に出す手紙なので、形式ばったものにはせず、多少文章がおかしくても気にせず、みたいな感じで書き進めました。文章構成気にするのめんどくさいんだよな〜って思ったとか、そんなことはないんですよ?ないんですよ……!!
晴が手紙以外で作中登場することはほぼなかったのですが、本当に病人か?ってくらい底抜けに明るくて、元気で、春の陽だまりのような女の子という設定でした。まだ入院する前の晴に彩生や冬樹が振り回されてるSSとか、書いてみたいものです。ほぼ手紙でしか出てこないので、晴をちゃんと生きてる人間として動かす話が書きたいんですよね……。
こんなに明るくて健気な女の子の願いが、ちゃんと彩生に届いて良かったなぁと、個人的にはそう思います。どうでもいいけど書き進めれば書き進めるほど「こいつは彩生の限界オタクなんじゃないのか」と思うようになってしまったり……。最終話の晴とか中々厄介なオタク感ないですか?ないですかね……。
晴の名前は「とにかく春を体現したような名前」と思って決めました。
苗字の綿貫は、ギリギリまで四月一日とどっちの漢字を当てるかで悩んだんですが、四月一日だと創作のキャラクターにそこそここの苗字のキャラクターが居る気がして(実際有名な作品にも居ますし……)綿貫にしました。無駄な抵抗と言われたらそうかもしれないですが。どっちにしても春由来の苗字ですしね。
名前の晴は季節の春から取って、です。春だとそのまますぎるので、晴れた空のような明るく眩しい彼女のキャラクター性から「晴」の漢字を当てました。
・日下部冬樹
作中では、晴の願いを伝える役割の男性です。真面目で責任感があって、そしてどうしようもなく優しい大人の男です。
自創作では子どもを庇護しない大人が多いのですが、それはるではちゃんと、子どもを見守ってくれるような、そんな大人を書きました。本来大人はこうあるべきだよ……とは思う。マジで。(自創作の子どもを自分の我儘に巻き込んで振り回す大人達に向けて言っています)
晴の願いが目立つ今作ですが、冬樹が告げる「生きていてほしい」もまた、彼の願いです。冬樹は優しい大人ですが、優しいからこそ自分の願いを彩生に押し付けたりしません。あくまで彼は「俺はこう願うけど、どうするかは彩生次第だよ」というスタンスでいます。仮に彩生が、晴の願いを聞いて、それでも死ぬと言うなら、冬樹は彩生を止めることはないんでしょうね……。そうならなくて良かった……。
彩生を見守り、晴の願いを伝える大人として登場させた彼ですが、これからはちゃんと前を向いて生きることを決めた彩生に振り回されたらいいなあとか思ったり思わなかったり。
以上、それはるの自己解釈文でした。
あくまで私個人の解釈ですので、読んだ方は読んだ方それぞれの解釈をして頂けたらと思います。