KADOKAWA Group

霙座

@mizoreza
2020年1月20日に登録

現代ドラマ
恋愛

11月15日
【破片】代返みたいな
寒くなりました。みなさまお変わりございませんでしょうか。お寄りくださりありがとうございます。ヘッダーのオレンジ色が目に眩しくて冬らしい色に変えたかったこともありまして、あんまり練らないで気ままに書いている140文字をまとめていくことにしました。noteから転載にあたり、気になった部分は修正していますが、見比べても分からないくらい自己満足レベルの修正です。ジャンルも文体も自由なかんじです。時々日記、ですが、創作物なので大丈夫です（？）しばらく空き家みたいになっているのが気にはなっていたのですが、色々書き散らかしていてなかなか公開できるものもなく。こう、【破片】としてまとめてみたとして、講義の出欠の代返頼んでるみたいな気持ちにもなりつつ。これが種になったらいいのだけど、剥がれ落ちたまんま放置されるかもしれず。140字にもなっていない文字列も抱えながら。反応いただけたこと、すごくありがたくて。優しさがじゅわーっと細胞に沁みます。うれしいです。【破片】は、ほかの連載ができるようになるまでは、週末更新を続けたいです。では、今年の仕事納めに向けて労働に行ってきます。長丁場だなー。【破片】https://kakuyomu.jp/works/822139839448745296
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8月31日
【夕立待つ君】夏
ようこそお越しくださいました。イベント盛りだくさんの夏ですね。みなさまのご活躍が眩しいです！第二回さいかわ葉月賞に参加させていただきました。タイトルは「ゆうだちまつきみ」なのですが、「ゆうだちまつくん」に見えるかしらどこの少年かしらと、最後までひらがなか漢字か迷っていました。（そこなの？）振り絞りました。よろしくお願いいたします。お読みいただいた方々にはありがとうございますを全力でお伝えしたいです。この作品に限らず、小さい世界にお付き合くださるみなさま全方位に、本当に、ありがとうございます！これから読み参加です。るん。のんびりですみません！カクヨムはパソコン派です。このところPC前にいる時間が短すぎて、なにやら便利になったらしいアプリ…と、ちらっと検討してみました。が、普段携帯電話を不携帯でした。鞄から取り出した携帯が電話じゃなくてDSだったのをツッコまれたころから進歩なし。致命的。友人たちはさすがで、既読が一晩付かないくらいじゃもう心配しません。スマホのアプリで一番使うのはタイマーです。せめてカメラでありたい。そんなわけで本日撮った写真を一枚。五箇山に行ってきました。世界遺産の相倉合掌造り集落です。朝一番にお伺いしたところ、山肌を涼しい風が吹き抜けていきました。直射日光は痛かったのですが、木陰は涼しい。民俗館のスタッフさんにとても親切にしていただきました。こきりこって筑子って書くんだ。かつては加賀藩の秘密を握った深山幽谷の辺境の地。茅を結い、糸を紡ぎ、囲炉裏の下で塩硝を作る。こぢんまりとした茅葺きの小屋の障子の一枚向こうはしんしんと降り積もる雪——今真夏でした。城端から相倉にむかうまでのトンネルが直線だし長いし対向車が来ないので、心配性の方は途中「ループしているかもしれない」ホラーな気分を一瞬味わえます（？）。８月も今日で終わりなので、夏が過ぎ風あざみ～と流れてくるんですが、猛暑延長戦ですね。猛暑、酷暑のさらに上はなんだろうな、と家族会議をしたところ、死暑じゃねえか、と恐ろしい結論が出ました。縁起でもねえや。まだしばらく暑さが続くそうですが、みなさまどうぞ健康にお過ごしください。【夕立待つ君】https://kakuyomu.jp/works/16818792439406695089
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7月27日
【白く美しい氷の魔物】ひんやりとかしっとりとか
ようこそお越しくださいました。暑いですね。干上がっております。先日ユーラシアプレートと北アメリカプレートの境界に立ってきました。日本誕生です。ロマンです。これがまた良い崖でして、クマ出没注意の看板があったのでみんなで歌いながら、枕状溶岩も見学してきました。真夏日の楽しいハイキングでした。汗だく。本日は祐里さんの自主企画に参加したくて、ひとつ短編を公開しました。タイトルとタグで話の全容が見えてしまうファンタジーとなっております。ぬりやさんを目指して挫折したことは、言わなくても伝わっちゃうと思う。ひんやりとかしっとりとか、難易度高いです…！別のところで童話童話と呪文を唱えながら書いていたのが抜けませんで、異世界ファンタジーなのですが、おとぎばなしの傾向です。切り替え下手すぎた。よろしければお付き合いくださいませ。ページをめくりたいタイミングがあるんです。ひと呼吸あるといいなという区切りで今回分割してみました。話数が増えました。（次話へのヒキを考えることはできていない。）私自身は、一話が一万字でも、一話が一行でも構わないため、不親切設計になってしまった場合は申し訳なく思っております。ごめん。なお、冷蔵庫。現代恋愛で書いているものが途中になっておりまして、そのうち仕上げたいと思います。（またか。）あと、ネットで氷冷蔵庫の情報を読んでいて、加賀飛脚までさまよいました。「六つの花　五つの花の御献上」とかかっこよすぎる。金沢の近江町市場に氷柱触りに行きたい。夏、ご自愛ください。【白く美しい氷の魔物】https://kakuyomu.jp/works/16818792437321484003
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6月20日
【藍白＿】書きたい方向
ようこそお越しくださいました。仕事のお使いで自転車に乗ることがあります。ヘルメットを着用します。道交法第６３条１１第１項です。どうやらぼんやりしていたのでしょう、丁字路で一旦停止したときに遠くにパトカーが見えて、「シートベルトしてない！」と焦りました。いや自転車。さて、うみべひろたさま主催の自主企画、水平線純文学＆文芸フェスにお邪魔しました。読みごたえがありました。純文学の正体を探して一時カクヨムを徘徊していたりもしたのですが、結局わからなかった。なので、基準としては、読後感にため息が出たら芸術だと考えております。だいたい芸術になるよ！好みの文体というのはあるのですよね。一文がどんなに長くても感情がすーっと入ってくるような。要するに好みなのか。それしかないのかもしれないなどと考えております。佐藤宇佳子さまに意味深と言っていただけた今回のタイトル。あいじろ、と読みます。えー、あれです。藍白＿　　↑ 　　地面です。タイトルを考えるのに時間が掛かるので、本文を書いているときは、大抵仮タイトルが付いています。今回の仮タイトルは「わたしの椎名くん」でした。このままでは中身と一致性はあるもののラブコメだと思って間違えて読まれた方に申し訳ないことになるので、どうにかならんもんかと直前まで悩んでいました。こうしてタイトルまで何かなと思っていただけるとは。悩んで良かった。佐藤宇佳子さま大賞おめでとうございます！　母から違うものが生まれる予感がして怖かった。すばらしかったです！毎度毎度、自分に必要な文章を書いています、という意味で書きたい方向は常に一定方向を向いています。お付き合くださったみなさまに心から感謝しています。お読みくださり、ありがとうございます。木綿のハンカチーフと張り合おうなどとは（ちょっと思った）。いつか義血侠血がやりたいなんて（ちょっと思っ……）。もともと違う世界観で書いていた二人なので、そのうち元の方も書けたら良いなと思っています。相変わらず梅雨入りした瞬間に夏日となってしまいましたが、みなさん体調いかがですか。私は眩しすぎて目が開きません。コンタクトレンズを止めたので、度入りのサングラスを作らなくては運転中の眩しさが危険です。この時期帰宅時間の太陽光線が真正面だよ。それでも日が暮れる前に帰れているうちはありがたいと思っている。がんばろう。【藍白＿】https://kakuyomu.jp/works/16818622175796237436
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5月18日
【グローアップ】【ねこのまんま　たけのこ】お礼
ようこそお越しくださいました。細々とつながっております。この春、さいかわ卯月賞に参加させていただきました。参加されたみなさまの作品が今回もまた、素晴らしい。どなたもすごくて息を止めながら読ませていただきました。犀川さま、選者のみなさま、大変な選考だったかと思います。講評がまた勉強になる。参加させていただき、ありがとうございました。【グローアップ】https://kakuyomu.jp/works/16818622173317697292 という激戦の中、グローアップ、惣山沙樹さまから惣山性癖賞に選んでいただきました！予選あかんかったのでくーっとなっておりましたところ、めっちゃびっくりした次第です。深くて優しい講評を頂きました。希望だけに満ちた春でありますように。惣山さま、ありがとうございました！ https://kakuyomu.jp/works/16818093080518439163/episodes/16818622174165541173 このテーマだとこれ以上は冗長というか、恨みがましくなり、色々ざっくり削って希望だけの春を書くことにしました。テーマ性がある書き方は難しい。内臓が出ちゃったダメージで推敲がおろそかになったことを反省しております。でも、書きたかった気持ちが届いたのであればとてもうれしい。お読みいただいたみなさま、コメントくださったみなさま。流星を応援してもらえたこともとても励まされました。本当にありがとうございました。＊【ねこのまんま（つづきの日常）のちの話　たけのこ】 https://kakuyomu.jp/works/16818023213895104192/episodes/16818622172899147789 ある日、自宅の二階からふと庭を見下ろすと、くろねこが桜の木の下を歩いていきました。なあさんと雪緒の日常って、こんな風に続いているんだろうな、と思った事を書き留めました。私の癒しななあさんと雪緒です。木造アパートには大家さん、住人の大学の助教授の先生と、おじちゃんみけねこがいます。アパートは昔ながらの学生の下宿をイメージしていました。ものすごい好みの設定ができました。 noteの方には縦書きにして貼り付けて、桜と黒猫の素敵な画像もお借りしました。柔らかい雰囲気が出て自己満足しております。こういう作業も楽しいです。＊その後。目の調子はまあまあです。どうにもならない眩しさはなくなり、疲れ目くらいなのでバリキャリです（現代語訳ができませんでした）。現在PC滞在時間が足りなくて、なかなか出せるような文章にもならず、ヨムもゆっくりになっていることだけ物足りない。とはいっても、ぼちぼちが平常運転。ぼちぼち生きています。心配事がひとつあるとするならば、創作ノートが一冊行方不明になっていることでしょうか。昨日登場人物の苗字確認しようとして見つからなかったんだ。恐怖。
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4月5日
【ダンスホール】【home】お礼
ようこそお越しくださいました。三月の雪、なんて、珍しくもないですね。寒い三月でした。先週はお花見にふくい桜マラソンへ行ってきました。田中くんに卒業おめでとー叫んできました。桜はまだ蕾でしたが、みなさんの笑顔が咲いていました。すばらしい。【ダンスホール】https://kakuyomu.jp/works/16818622171666724458 KACおつかれさまでした。参加できました。いっこだけ。体力ないなあと思い知らされるわけですが、ひとまず参加できたことです。みなさまの想像力で補完いただく仕様となっております。かっこいい、と思っていただけたとしたら、それはお読みいただいたみなさまの想像力がかっこいいのですとも……！　ありがとうございます。精進します。【home】https://kakuyomu.jp/works/16818622171206083060 昨年12月に限定ノートに書いたものを推敲しました。【エンバーケイション——晴れを待つ】の六花のエピソードです。音鳴くんはいません。単体で読んでいただけると思います。本編で六花を書いていて手が止まってしまったのが、六花の「諦め」の部分でした。目標設定の加減なんですよね。彼女の折り合いの付け方は、十年後に振り返って及第点であるといいなと思っています。ノート限定解除しました。コメント欄をご覧ください！ https://kakuyomu.jp/users/mizoreza/news/16818093090348200542 【エンバーケイション——晴れを待つ】ですが、天井萌花さま主催の自主企画『みんな集まれ！萌花のいっぱいアワード！』にて、夏希纏さまに審査員奨励賞として選んでいただきました。ヒューマンドラマ賞。読んでいただけるだけでもありがたいのに、すごくうれしい。盛りだくさんの企画、エネルギーのおすそ分けいただきました。スペース録音で聞きました。共感できるとの感想ありがとうございます。夏希纏さまからもスペース内でコメントいただいた様子です。重ねてありがとうございました。お世話になりました。今日大賞発表です。#もかあわ（ところでスペース不慣れすぎて音が途切れてリアルタイムじゃないのに焦りました。どんまいおれ。）【彼の魔術師は行方知れず】限定ノートに置きました。戒めです。コメディするんだって目標があります。書きたい結末までのシーンの割り振りはできたのに、キャラクターが増えてあれれとなり、2話に分けようと思ったところからさらに増え、3話で過去編か、と収拾がつかなくなっております。公開まで年単位は得意技なので、気長に書こうと思います。さて、年度末の提出物は間に合いまして、新年度。環境が変わってまだペースがつかめておりませんが、とりあえず慣れるまでやってみようと思います。軽やかに参りましょう。
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3月15日
カクヨムコンテストのお礼
ようこそお越しくださいました。三月、旅立ちの日を迎えられたみなさま、おめでとうございます。昨日の続きの今日のみなさま、おれたちがんばってる。 KACのお題、今年は１本は書いてみたいと思っていたのですが、もう４回目のお題でした。皆勤賞のみなさん、どうなってるの。すごすぎる。楽しく拝見しております。わたしのアイドルコンテストも、推しのいいところ羅列するだけで文章になりようがなくて間に合いません。どうなの私。そもそもアイドルとは方向性が違ってる。ただの推し活の話でした。来週のホーム戦行きます。そんな中ではありましたが、みなさまから優しさをいただいたおかげで、カクヨムコンテスト10【短編】中間選考を通過できました。これからも前向きに書いていこうと思います。本当にありがとうございました。【エンバーケイション——晴れを待つ】 https://kakuyomu.jp/works/16818093089508027691 【湖の街】 https://kakuyomu.jp/works/16818093092356619832 限定の近況ノートに先行で置いていた六花の短編を、投稿しようと思います。本編の前の４月の話です。頂いたコメントも見ていただきたいです。準備中です。代わりに限定の近況ノートにもたもたしている中編の頭を戒めに置いておく予定です。コメディしたかったはずのプロットで説明文が発動してもたもたしている状態のものです。道端で小さな春を見つけることができるとちょっとお得な気持ちになります。暖かくなってきましたね。
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2月14日
お礼
ようこそお越しくださいました。冬らしく雪に埋もれていました。毎年吹雪の中、ヘッドライトにワイパーいるよなって思いながら運転しています。来週また降るって言うけどとりあえず今週末は気温が上がるらしいのでうれしいです。犀川ようさまの自主企画『最可愛女子💗たちが感想書いちゃうぞ⭐️』にて、最可愛女子のみなさまから感想を頂きました。ものすごい方々から褒めていただけるという贅沢すぎる企画でした。お世話になりました。楽しかった。ありがとうございました！犀川ようさま（ようちゃーん！） https://kakuyomu.jp/works/16818093087830560068 鳥尾巻さま（とりちゃーん！） https://kakuyomu.jp/works/16818093092459756547 未来屋　環さま（たまちゃーん！） https://kakuyomu.jp/works/16818093092006627116 豆ははこさま（まめちゃーん！） https://kakuyomu.jp/works/16818093089201419527 参加作品がこちらでした。３０歳直前女子の恋愛とホールケーキとわたしらしさ。ハッピーワンホール！　https://kakuyomu.jp/works/16818093091053954056 そしてなんと、参加作品に寄せてまめちゃんさま（豆ははこさま）よりファンサを頂戴しました。短歌を詠んでくださったのです。苺あふれこぼるるものをひとり占め君はケーキを笑顔は俺が (いちごあふれ　こぼるるものを　ひとりじめ　きみはケーキを　えがおはおれが) 「君」と呼ばれる佐歌。よ、よすぎん？　てなりました。素敵すぎる……！短歌を頂いて、お返しの歌を詠めたりしたらおしゃれと思ったのですが、うん、勉強いたします。とにかくお礼をば。ありがとうございました！（尚、近況ノートでの紹介のご許可はいただいております。転載ご遠慮ください。←ちゃんと書く大事。画像化に問題等ございましたら教えてください。）感想、コメントもその方の作品。みなさまの文章、本当に勉強になります。今回の感想だけでなく、いつもコメントいただくことも、本当に感謝しております。感想書くって自分の作品を書くとは違う方向にものすごいエネルギーが必要なこと。読んで頂くだけでもありがたいのに、書いた人に伝えてやろう思ってくださる優しさが本当に嬉しいです。みんな優しい。私も優しい人になりたい。ちょっと別角度にはなるのですが、私はコメントに助けてもらうこともあるのです。例えば物語を読み進めていて、どういう感情で着地すればよかっただろうか、と思ったとき。（今なら朝井リョウ先生の「うらあり」とか。）そんなとき、ほかの方のコメントが導線になって世界が開けることもしばしばなのです。正しいとか正しくないとか、物語には存在しないと思っており、いろんな考えを知るのが楽しいです。たくさんの意見が集まって発生するエネルギーのおすそ分けを頂いている感じです。さて、もたもたしていますが、書いているものがいくつかあります。書いていこうと思います。今日バレンタインデーなこと気付いていました。昨日お手伝いで５０個くらいラッピングしました。チョコレートケーキは明日焼こうと思います。
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2024年12月14日
【エンバーケイション——晴れを待つ】四月、六花
実家の自室は四年前から何も変わっていなかった。高校生活の最後の球技大会にお揃いで作ったクラスＴシャツが壁に掛かっていて、片付けもしていなかった自分に少し笑った。東京で増えた四年分の家具家電はリサイクルショップに持ち込んで、汗の染みたジャージやウェアなんかもずいぶん処分した。それでも荷物は段ボールひとつふたつには収まらない。床に転がるキャリーケースを避けて宅配業者が届けてくれた段ボールを部屋に運び込むと、座る場所はベッドの上くらいになった。しょうがない。六花はベッドのむき出しのマットレスに寝転んだ。まだ畳んだままのシーツが背中でのされる。換気のために開けた窓から、さかさまの空が見える。水色と灰色の間の色をしている。目を閉じた。開けた水田の上を通ってきたひんやりとした風が頬を撫でる。ちりんちりん、と鈴が聞こえた。続けて甲高い声のおしゃべりが近づいてくる。自宅の前の道は通学路だ。数日前に入学式を終えたばかり小学一年生の下校時間だった。中身のない会話はとても楽しそうで、笑い声が応酬する。子供の声はどうしてあんなに希望に満ち溢れているんだろう。はっと目を開けると、茶色の天井が目の前に落ちてきた気がした。こんな時間から寝転ぶのはよくないな、と反省して体を起こす———と、呼ばれていることに気が付いた。自宅と一続きの店側の階段から、父親が六花の名前を呼んでいた。父が経営する喫茶店の玄関先に、父と並んで黄色の帽子をかぶった男がいて、店の奥から顔を出した六花を見つけるや嬉しそうに手を振った。「せんぞうさん」「おお、いやー、おれ、毎日見守り隊でお父さんと一緒になるんよ。昨日帰ってきたんやって？　おかえり！」ああ、うん、そうなの、とあいまいに答える六花に千蔵は一方的に話をする。お父さん喜んでるよ、急に帰ってきたから無職なんだろ、うちの民宿にバイトに入ってほしかったなあ、民宿は春先に高校生が合宿で泊って大賑わいだった、全員でランニングに出たはずが、かき氷を食べて帰ってきて、監督にお土産ですって溶けたかき氷カップを渡す高校生の丹力よ、あれくらいうちのサッカー少年も度胸付けばもっと勝てると思わんか、そういやサッカークラブから今度の陸上記録会に出るって張り切っている奴がいて。「ジャベリック教えてやってくれよ」「……え？」千蔵は六花が小学生の時に所属していたサッカークラブのコーチだ。話は半分に聞いておく位が丁度いい。がしかし、時々急に、思い付きで、とんでもないことを言う。「なに？　せんぞうさん」「いや、コンバインドでジャベリックと走り幅跳び？　だったかな。昔はそんなもん投げんかったやんか。ソフトボール投げやったろ。おれが真っ直ぐ飛ばせんで、教えられんのよ」そもそもソフトボールを投げるのとは大違いだ。真っ直ぐ飛ばすにはコツがいるし、むやみに投げ続けると肘を痛める。それはよくわかっている。「今、足、養生期間なんやろ？」シンスプリントはだいぶ良くなった。もう軽く走ってもいい頃だ。今日届いた段ボールからウェアとシューズを取り出せばすぐにでも走り出せる。「それとも、中学の時の肘でまだ投げられんか」千蔵の言葉に、六花は、はた目から見てわかるくらい、肩を震わせた。父と千蔵の視線が集中する。責められているわけではない、むしろ、このふたりは六花の我儘な挑戦をずっと応援してくれていた。だからこそ。中学三年で肘を痛めて投てきはやめた。高校で短距離と走り幅跳びを始めたが、合わなかった。成績が伸びずに何も考えられなくなって外周をランニングばかりしていたら、顧問が長距離をやるぞと言った。それで、走れるようになって大学へ、でも、結局怪我をして。直ぐに答えられない自分は、自尊心の塊だと思う。膨らんでパンパンになっていて、針でちょっとつついたらすぐにパアンと割れてしまう。「えー、せんぞうさん、このお姉ちゃん？」歩道から小学生がジャベリックボールを持って走り寄ってきた。黒色のランドセルに括りつけられたクマ避けの鈴がちりんちりんちりんちりん叩くように鳴る。千蔵は、お前また学校からボール持ってきたんか、と少年に苦笑した。少年は自信満々に、今日は先生にちゃんと言って持ってきたよ、と返事をする。「見て見て」少年の後をついて喫茶店から出る。歩道を走る黒色のランドセル。真っ直ぐな道。両側には代掻きを終えて水を張った田圃。正面には深緑の低い山、手前の高台に六花も通った小学校が見える。少年の手からジャベリックボールが離れる。くすんだ白色のボールは一瞬だけ空と同化した。「やべえ！」ボールは道のわきの用水の草むらに落ちていった。千蔵がこのあほ、と言いながらフェンスを越えた。遅れて喫茶店から出てきた父親が六花の隣で笑った。六花は、釣られてくすりと笑った。笑うと、自分から空気が抜けていくような気がした。千蔵がボールを拾って少年と一緒に戻ってくる。道路で投げるなよ、と注意を受けた少年がジャンプして不満を言った。ちりんちりんちりんちりん、目が覚める音がする。「グラウンド、今日も野球部いるから投げらんないんやもん。あいつらすぐボール奪うし」六花は千蔵からボールを受け取って両手で感触を確かめた。うん、と頷いて少年を振り返った。「浜に行こうよ。道路危ないって」「行く！」千蔵が後ろから、海に落とすなよと笑った。おれは戻るよ、と喫茶店に向かった父親に六花は歩み寄った。不思議そうに六花を見る。父親の穏やかな顔を見上げて、六花は、靴を履き替えないと、と言った。ここに戻ってきて良かったなと、思った。（感謝を込めて。霙座）【エンバーケイション——晴れを待つ】 https://kakuyomu.jp/works/16818093089508027691 【home】（推敲版） https://kakuyomu.jp/works/16818622171206083060
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2024年10月12日
【騎士の腕】プレゼン
あらすじと世界観をまとめてみました。長くなってしまったので、ガイドがあった方が読みやすいかな、などと薄っすら思っていたのですが、なかなか本編更新中に登場人物一覧を作ることもできませんでしたので、書き残しておこうと思います。異世界恋愛。約２７万字。５章立て。バトルやコメディ要素は控えめです。広告は非表示にしています。【あらすじ】魔族の放つ瘴気に抵抗する戦いが続くアンリアンス王国。妖精王の森に突如聖女として召喚された楼子は、境界の戦いで怪我を負った青年リシュトの世話をすることになる。楼子はリシュトを癒す。しかし楼子は聖女の力も使い方も理解しないままだった。回復したリシュトは第三騎士団の任務に復帰する。リシュトを癒した対価として魔力を差し出し子供の姿になった楼子はリシュトに懇願され、専属の薬師として王都に同行する。王都には楼子と時を同じくして召喚されたもうひとりの聖女夕凪がいた。彼女はまだ楼子の弟と同じ、高校生だった。そして王都には、隠された百年前の聖女の記録が。聖女の役割とは何か。世界の理を前に、楼子とリシュトの選択は。異世界で、恋をして、生きる。そんな話です。【主人公】藤白　楼子（ふじしろ　ろうこ／ロロ）社会人。２０２３年の日本から転移してきました。血のつながらない弟を育ててきた楼子は、物わかりの良い大人でした。二人暮らしをしていた弟、八翔（やと）が春から高校進学で寮に入り、ひとり暮らしになった矢先、事件に巻き込まれます。聖女として召喚されましたが、仕事とか役割とかをいつの間にか越えて、ただリシュトのそばにいたいと思うようになりました。リシュト（アスティア第三騎士団長。第二王子）魔族の国との境界の戦闘で腕を失いました。妖精王の森で養生中、ルルがリシュトを救いたい一心で王国の聖女召還の儀式に割り込んで召喚した楼子に出会いました。暗闇で正気を失いかけていた時そばにいてくれた楼子に、縋るように惹かれていきます。【成長】楼子もリシュトもいい大人なので、お互い距離を測るところがあります。楼子がリシュトのために身を削ってしまったことが、恋心のブレーキになってしまいました。王都で出会ったもうひとりの聖女夕凪（ユウナギ）は、純粋で自分の気持ちに直進できる女子で、恋にも一生懸命です。楼子の最大の障害となる魔導士団所属の魔術師サラセニアは、全身全霊でリシュトを射止めようとしています。楼子は、想いを自覚しないようにしていることに、心のどこかで気付いている。リシュトはそんな楼子を見ているので、想いを伝えることが楼子を苦しめるのではないかと考え、二の足を踏んでいた。けれど。乗り越えたら、幸せになれると思います。リシュトには第二王子という身分があって、兄であるヒューベルトに翻弄されたり、弟であるジョゼットに敵視されたりしていて、あえて前線に出ていて、王都を長く不在にしていました。兄弟の雪解けも書きたかったところです。【後方支援】妖精王ディジュとルル（ルルーフェン）は、妖精王の森に住んでいます。楼子とリシュトが幸せになることを願っているふたりです。夕凪は楼子と同時期に王都に召喚された聖女です。大聖堂で事故に遭ったときに助けてくれたオルゼア（デイレイン第二騎士団長）にひと目惚れします。侍女のモリーとコイバナで盛り上がり、楼子の恋も応援しています。ネイは妖精王が楼子の護衛として王都に同行させた妖精です。口数は少なめですが、楼子のことが好き。ネイを巡ってアデル（リシュトの副官）とニフ（ヒューベルトの補佐官）の場外乱闘があるらしい。ちょい出ですが、第三騎士団の面々（アデル筆頭に、ウルとサマー、ほか）や、おじいちゃん三人組（祖父のアスティア伯爵、ユラー侍医長、家令のマルマン）はリシュトの心強い味方です。【恋愛ジャンル】異世界恋愛というカテゴリーに入れてほしいと思います。主人公の年齢は高めに設定してあって、ジャンルも恋愛という選択なのですが、少女時代の私が読んでも大丈夫な作りになっております。百年前の聖女のあたりは、謎解き要素も盛り込みたい、と思って書いていましたので、お楽しみいただければ幸甚です。騎士のかいな https://kakuyomu.jp/works/16817330664330422689
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