『アッシュと11人の家族』今週は、
161話 ノア&リロチーム②
162話 地底へ
163話 人形の回廊①
164話 人形の回廊②
165話 人形の回廊③
166話 お気に入りの部屋
167話 笑い話になる日まで
上記の通り投稿しております。
少しでも楽しんでもらえましたらうれしいです。
今回は創作の裏話として、アッシュが鬼人族の角を隠さないと決めたシーンについてお話させて頂きます。
頂いた感想に返信をしていて、これはみなさんにもお話したいなと思い書くことにしました。
実はアッシュがフードのネコ耳カバーをむしり取るのは、もう少しあとにする予定だったんです。
ですがリロと話したり、換金所の職員を見たりして「今ある繋がりは見せかけに過ぎない」と気づく。このアッシュの気づきは、実際に執筆して初めて生まれ出た思いでした。
その後、シュヴァリエも変わろうとしている姿を書いた時、強い焦燥を感じました。「私も本物がいい」と。
これはそのままアッシュが抱いた衝動でした。
こう思った彼女がここで、でも怖いからもう少し角は隠しておこう、なんてなるはずがありません。
だからカバーをむしり取りました。
この変更が後にどう影響するか、少なからず不安を覚えつつも。
結果を先に述べますと、懸念はまったく的外れで順調にストーリーが流れていきました。
その例が《158話 ドームをこじ開けろ!》
角を隠したままでしたら、ここはライバルクズ屋とごちゃごちゃ押し問答してドーム破壊へ――となっていたはずです。
しかし狼人族女性がアッシュの角に気づき、周囲のライバルもみんなあとずさって場所を空ける。結果、アッシュたちはフルパワーの魔法を撃ててスパッと城に侵入できました。
テンポが格段に良くなったと思いませんか?
加えて口論するよりも、小さなことは気にせず、むしろ恐れられることを利用してドームを壊すという、アッシュの魅力に繋げることもできました。
また初期構想ですと、アッシュが鬼人族だと知った周囲の反応を、あまり書くチャンスがないのが気になっていたんですが、それも解決です。
さらにもう一つ良かったことが。
ライバルクズ屋たちに鬼人族だと気づかれた時、いつもの紺野でしたら100%、主人公が傷ついて悲しみを抱えつつも仕方ないと流す――という暗い展開にしています。
でも違ったんです。それは私の考えでアッシュの考えではありませんでした。
アッシュは鬼人族であることを悪いと思っていないし、人から避けられようと笑って跳ね飛ばす強さがある。
そう、アッシュ自身が私に思わせてくれて、私の中にはなかったストーリーが生まれたんです。
ネコ耳カバーをむしり取ったのも、恐れられることを利用したのも、これらは私の意思ではないと思っています。
『精霊の守り人』シリーズを手がけた上橋菜穂子先生の言葉を借りれば、「キャラが動いた」ということかと。
なに言ってんだこいつ、と思われるかもしれませんが、あるんですよ。創作仲間さんはわかってくれると思います。ありますよね?キャラが能動的に動くこと。
先生はその瞬間を大事にしているとインタビューで答えておられましたが、私もキャラが動いた時は積極的に尊重したいと考えています。
さすがに後のストーリーが激変してしまうような時は要相談ですけど。笑
書いているのは私ですが、物語には確実にアッシュたちの意思と魂が宿っていることを、心の隅に留めおいてくださったらうれしいです。
ここまで長々とおつき合い頂き、ありがとうございます。皆さん良い週末を!