最近はSNS(X含む)を全く見てなかったので、正直全然知りませんでした、この騒動。情報をくださった兎のしっぽ🐇様、ありがとうございます。
ことの発端は、アルファポリス上で開催された第18回ファンタジー小説大賞で、大賞となった作品の書籍化、コミカライズが白紙になったことです。
https://www.alphapolis.co.jp/prize/result/365000215 で、これが(おそらくはほぼ100%)生成AIで作られた作品ということで、当該の受賞発表後に改定されたアルファポリスの規約で『生成AIで作られた作品は書籍化しない』というような変更があったため、この『後出し規約』で白紙になった、と本人がX等で発表したようです(2026年1月3日)
ちなみにこの方、カクヨムにもいらっしゃって、近況ノートで心境を書いています。本人は落ち着いてこの結果を受け入れるという感じですが。
上記リンク(第18回ファンタジー大賞の結果)から名前等で検索可能なので、気になる方は検索してみてください。
これらの騒動から、先にカクヨムでもAIでもめたように、AIで作品を作って、それを『黙っている』のは少なくともリスクでしかないというのがはっきりしました。
当該作がAI生成品だと発覚したのは、作者がカミングアウトしたからの様ですが……すみません、その色眼鏡で見た部分はもちろんありますが、私は1話の半分の時点でブラウザのタブを消しました。
アルファポリスは昔ちょっとだけ登録して今はユーザも消してますが……ああいうのが受ける市場なら出したくもないかなぁ、と思うくらいちょっとひどかった。
いや、だって『目の前にウィンドウが出た』⇒『どうやら異世界転生したらしい』ってどういう理屈ですか。この中間が『理解するのに数日を要した』としか書いてないですからね。
まあこの際作品の出来不出来はどうでもいいでしょう。
アルファポリスの編集部の目が節穴だったというだけですし。
問題はこれの法的な扱い。
まず、アルファポリス側はおそらく契約不履行という扱いになる可能性が高いです。
当該の募集要項を確認しましたが、そこには『応募作品の中から、最も優れた作品を「大賞」として選出し、賞金50万円をお贈りします。上記に加えて、書籍化とコミカライズを確約します。』と明記されています。
これは、簡易的な契約と同等の意味を持ちます。
そしてこの要項の中には生成AIに関する記述は存在しません。
つまり確約したのにその契約を履行しなかったことになります。
ただし、これに関してはアルファポリス側にも反論の余地はあります。
それは後程。
ただここで最も問題になるのは、生成AIで作られた作品には著作権それ自体が存在しないことです。
よって、当該作品は誰のものでもありません。
誰かが勝手にコピペして別の場所で公開したとしても(なんならネタだけ全部奪って書き直して著作権が主張できるようなものにしたとしても)作者に文句を言う権利はありません。
生成AIを使っての出力がそういうリスクがあるのは承知しておく必要はあるでしょう。
さて。
とはいえ当然ですが、書籍化するとなったらおそらく……あれの場合は、ほぼ99%は書き直さないとダメだったでしょう。
で、ここで問題になるのは、当該作が最初はAIで書いたことが明かではなかったということ。
第18回ファンタジー小説大賞の発表は2025年の10月末。
アルファポリスが生成AIの書籍化を禁止する規約変更を行ったのは、同年11月18日。
この時系列だと、推測の域を出ませんが11月前半で作者とアルファポリスの間で書籍化についての話し合いが行われ、改稿に関しても話をした可能性が高いと思われます。
しかしそこで、AIで作っていたことが判明したのではないでしょうか。
あるいは作者はAI生成物の問題点を知らなかったのかもしれません(近況ノートからも問題点に気付いていなさそうかなという気もしますので)
生成AIで作られた創作物には、二つの問題点があります。
一つは著作権が存在しないこと。
ただしこれは、大幅な改稿を行えば、著作権を発生させることはできます。
もう一つは、すべて生成AIで作ったものは、言い換えればどこかの誰かのコンテンツの学習の結果であるということ。
これが、『他者の著作権を侵害している』となる『可能性』があります。
まあ、実際にはほとんどないでしょうが(AIのロジック上出力される内容は膨大なパターンの組み合わせなので、特定の作品の著作権の侵害を主張するのはおそらく難しい)
ただし、この可能性があることが、応募要項にある『※第三者の権利を害している(著作権、ほか)作品はエントリーできません。』に違反してたことが判明したために取り消した、という強弁も可能です。これが、書籍化がなくなった理由の可能性もあります。この論理だとアルファポリスの契約不履行にはなりません。ただ、受賞自体が取り消されてはいないようなので、この手法は取らなかったと考えられますが。
いずれにせよ、これらも白紙化の理由の可能性があると思います。正直に言えば後出し規約は書籍化等の中止の根拠ではない可能性もあるかもしれません。
特に、作者が自分だけによる改稿を拒否した場合、つまり改稿にもAIを使うと言った場合ですね。この場合は出版社としては『著作権のない作品を出版する』ということになりかねないため、受け入れられないでしょう。
というより、正しくは出版できません。
なぜなら、出版するための権利である出版権は著作者が持つ著作権の一部。つまり著作権がない作品の場合、作者は出版社に出版権を設定できないんです。
よって出版契約を締結すること事体が不可能になります。
これゆえに、AIだけを使った作品が出版される可能性は、ほぼないと言っていいでしょう(大幅改稿するなら別)
もちろん後出しの規約が理由の可能性はなくもないですが、上記の理由も十分に考えられる気がします。
今後AI作品に対する見方が厳しくなるのは間違いないのと、アルファポリス自身は選考基準の見直しを迫られるでしょう。
私は、今回の作品も先のカクヨムで問題になったAI作品も、1ページであまりのテンプレかつ表現の浅さに一瞬で読むのをやめましたが、ああいうのを好むネット小説読者がいるのは事実です。
まあ、そういう人たちはほぼ100%書籍は買わない、通勤通学途中に一瞬読んで楽しみたい層でしょうから、そういう人たちの望む作品であるのでしょうし。
そういう人たちは私とかが書くのは『長すぎる』『展開が遅い』などと言われることは確実ですしね。
今回に関しては、議論は残るものの当事者間ではすでに片が付いている可能性が高いと思います。
少なくとも大賞の賞金50万円は受け取れるでしょうし、それで手打ちというところでしょうね。
まあ、ある意味カクヨムは運がいいとはいえるかもです。
当該の騒動及びカクヨム自身でAI作品の粗製乱造騒動があったことで、カクヨムにとって一年で最大のイベントであるカクヨムコンの前に対策を打ち出すことができたわけですし。