拙作をお読みいただいている皆様、いつもありがとうございます!
久々に、これを紹介したい!!という本に出会えたので、ご紹介いたします。
貴志祐介「新世界より」
1000年後の日本の話。
主人公渡辺早季による手記。
早季は210年12月10日神栖66町に生まれる。父は町長、母は図書館司書で、図書館司書は町長よりも重い責任を持つ重要な職業。新たに発掘される図書を選別し、一般に公開できるかどうかを決める役割を持つ。
神栖66町は周囲50キロほどの地域に7つの郷(さと)が点在する町で、八丁標(はっちょうじめ)とよばれるしめ縄で結界を張っている。子供たちは結界の外に出てはいけないといわれており、外には悪霊や妖怪がいると脅されている。
特に、悪鬼、業魔と呼ばれる恐ろしい存在は、誰も見たことがないのだが、大人たちも恐れている。
神栖66町は利根川の流域にあり、東京は人の住めないような荒れた地域といわれている。
なぜ西暦ではないのか、なぜ狭い地域に結界を張って暮らしているのか、徐々に明かされていく。
人々は呪力(念動力)を持っていて、厳しく管理されながらも平和な社会を築いている。前半は早季の小学校時代の様子が描かれているのだが、無邪気な子供たちの中にも何か不穏な空気がある。それが何かわからないだけにホラーのような怖さがある。
12歳になるとあるイニシエーションを経て、全人学級という学校に入学する。
ここでは班行動をするのだが、早季、真理亜、瞬、覚、守と麗子の6人が第1班だった。ところが、麗子は途中から学校に来なくなる。残りの5人は常に行動を共にし、この中で友情や恋愛を育む。
ちなみに、ここでは人間関係などのトラブルや緊張を緩和するためにボノボのような関係性が推奨されている。つまり、相手を特定せずに濃厚スキンシップをとる。ただし、妊娠は厳しく管理されており、結婚できる年齢に届け出をしてからしか許されないので、幼少期は同性同士が恋人のような関係になる。
この世界では変わった生き物がたくさん登場するが、どれも現実にいる不思議な生き物たちが進化変化したものらしい。特に重要な生き物がバケネズミ。ハダカデバネズミを品種改良して知性を持たせた生き物。独自の言語を持っていて、地面に巣穴を掘って、地下で暮らしており、八丁標の外での自治を認められていて、人間は彼らに労働をさせている。
バケネズミは片言の日本語を話せる個体も多く、中には人間以上に流暢に日本語を使うものもいる。
全人学級での夏のキャンプでの体験をきっかけにこの平和な社会が徐々に壊れていく。この後、怒濤のように様々なことが起こるのだが、ものすごい長編にもかかわらず、一気読みしたくなる。
上記で説明したような人々の習慣、社会の様子、不思議な生き物たち、噂話のように語られる恐ろしい存在など、すべてに意味があり、すべてがパズルのピースのようにピタっとはまって、恐ろしい真実が明かされていく。最後の最後に一番の衝撃的な事実が明かされる。
読み出したら止まらない面白さがありつつ、人間性について、倫理観について、人間の歴史について、考えさせられる内容でした。
もし読まれた方がいたら、バケネズミについてどういう印象を持たれたか、是非お聞きしたいです。