航路分岐年代記・世界観解説⑨ 外惑星は「貧しい辺境」なのか?

どうも、れがと申します。

前回は月、金星、火星について紹介しました。

今回はもう少し太陽から離れて、木星や土星などを中心とする外惑星圏について紹介してみようと思います。

「外惑星」と聞くと、なんとなく遠く離れた辺境という印象があります。

資源を掘る鉱山。

狭い宇宙ステーション。

危険な仕事をする労働者。

中央に搾取される貧しい植民地。

SFでは割と見慣れた構図ですね。

ただ、『航路分岐年代記』の外惑星圏は少し違います。

■ 遠いけれど、貧しくはない

まず外惑星圏には、とにかく資源があります。

水や氷。

核融合燃料。

揮発性物質。

希少金属。

巨大構造物を作るための資材。

こうしたものを採掘して、加工して、運ぶ。

さらに、それを行うための船を造り、修理し、燃料を入れ、人を乗せ、航路を維持する。

そうして何百年も経てば、単なる採掘基地ではなくなります。

木星圏などには巨大な都市があり、造船所があり、研究施設があり、独自の金融や保険、教育、社会保障まで存在します。

高所得の技術者もいる。

企業経営者もいる。

研究者もいる。

もちろん、普通に学校へ通って、店で働いて、家族を作って暮らしている人もいる。

つまり第一次太陽系大戦が起きる頃には、外惑星はすでに、

「地球から遠く離れた資源植民地」

ではなく、

自分たちだけでも巨大な社会を動かせるだけの富と技術を持った地域

になっています。

■ それなのに、なぜ独立したかったのか

ここが第一次太陽系大戦を考える上で重要なところです。

外惑星が内惑星へ反発した理由は、

「貧しいから豊かな地球へ反乱した」

ではありません。

むしろ、

「これだけ自分たちでできるのに、なぜ最後に決めるのはそっちなんだ?」

という問題です。

当時の人類社会では、内惑星と外惑星が非常に深く依存し合っていました。

外惑星から資源や燃料が来る。

内惑星から高度な技術や医療、金融、保険、法制度などが来る。

お互いが必要です。

ただ、その関係を管理する制度上の権限は内惑星側へ偏っていました。

航路を使えるか。

保険が適用されるか。

船や企業が認証されるか。

救難を受けられるか。

決済できるか。

平時には便利だった共通制度が、政治的対立の中ではそのまま圧力にもなります。

なので外惑星側にとって第一次太陽系大戦は、単に国境線を引くための戦争ではありません。

自分たちの生活について、最後に誰が責任を持って決めるのか。

そこを巡る戦争でもありました。

■ 船を持つ人たちが強い社会

外惑星社会を考える上で、もう一つ重要なのが船です。

外惑星圏は広い。

都市と都市の間も遠い。

資源を採るにも、物を売るにも、人を運ぶにも船が必要です。

そのため、船団、船舶組合、造船会社、資源企業、保険会社、港湾などが社会の中で大きな力を持つようになります。

第一次太陽系大戦が始まった頃の外惑星も、最初から綺麗にまとまった一つの国家だったわけではありません。

自治政府。

企業。

港湾。

船団。

船舶組合。

地方軍。

いろいろな組織が重なっていました。

ところが戦争になると、食糧や燃料をどこへ運ぶのか、壊れた船をどこで直すのか、誰を救難するのか、どこを守るのかをまとめて決めなければいけません。

そうして戦争を続ける中で、それらを束ねる中央機構が成長し、外惑星連合という国家が実体を持っていきます。

■ 独立を支えた企業は、その後どうなるのか

そして歴史はここで終わりません。

第一次太陽系大戦から何世代も経つと、独立を支えた企業や船団、保険会社、船舶組合は巨大化します。

彼らは単に金儲けをする企業ではありません。

雇用を作る。

年金を払う。

学校へ資金を出す。

地域を開発する。

退役軍人を支援する。

船や航路を維持する。

外惑星社会そのものを支える存在になります。

なので外惑星の巨大企業は、

「政治へ影響を与える巨大資本」

であると同時に、

「自分たちの独立と繁栄を作った功労者」

でもあります。

この二つは普通に両立します。

そして、かつて内惑星の支配から自立した外惑星が、今度はその巨大な資本と航路網を使って、スプレンドールやテラスペィなどへ強い影響力を持つようになります。

すると今度は向こうから、

「あなたたちが昔、内惑星に文句を言っていたことと何が違うんですか?」

と言われる側になります。

歴史というのはなかなか綺麗には終わってくれません。

■ 戦争が変わっても、船を造って運ぶ

さらに時代が進んで、頭足人との戦争が始まります。

この頃の外惑星圏は、巨大な後方軍事経済圏になります。

艦艇を造る。

修理する。

燃料を作る。

資源を送る。

前線へ運ぶ。

SP356で艦艇が失われれば、また造って送る。

それが100年以上続きます。

もちろん外惑星の全員が軍需産業で働いているわけではありません。

普通の日常生活も続いています。

ただ、造船と物流の巨大なネットワークそのものが、人類全体の戦争を支えるようになる。

そのため外惑星側には、

「戦争で儲けているじゃないか」

という批判と、

「こちらが造船と輸送を止めたら前線そのものが崩れる」

という反論が同時に成立します。

どちらか一方だけが間違っているとも言い切れません。

■ 外惑星圏とは、どんな場所なのか

こうして見ると、外惑星圏を単純に「辺境」と呼ぶのはかなり難しくなります。

太陽からは遠い。

地球からも遠い。

でも、経済的にも技術的にも人類文明の中枢の一つです。

資源を採るだけではなく、加工する。

船を造る。

運ぶ。

保険をかける。

航路を維持する。

そして、それを何百年も続けてきた社会があります。

だから外惑星の歴史では、

「自分たちの生活は自分たちで決める」

という自治の意識と、

「この巨大なネットワークがなければ人類社会そのものが動かない」

という自負が、かなり強く残っています。

遠いから辺境なのではなく、

遠い場所同士をつなぎ続けることで大国になった地域。

外惑星圏は、そんな場所として考えています。

今回はこの辺で。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する