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  • 2時間前

    航路分岐年代記・世界観解説④ ざっくり年表――人類はどうやってここまで来た?

    どうも、れがと申します。 ここまで3回ほど『航路分岐年代記』の世界について紹介してきました。 ただ、このシリーズは現状書いている作品だけでも2700年代から3700年代まで、だいたい1000年くらいあります。 しかも、その頃には人類は普通に太陽系の外まで進出しているので、 「そもそも、そこに至るまで何があったんだ?」 という話もあります。 というわけで今回は、少し前史も含めて『航路分岐年代記』の歴史をものすごくざっくり紹介していこうと思います。 ■ 21世紀末〜22世紀――人類、宇宙へ広がる まずはかなり昔から。 2090年代には月面資源開発が本格化し、22世紀に入ると月面都市や軌道工業施設が拡大。 その後は火星、小惑星帯、さらに外惑星圏へと人類の活動範囲が広がっていきます。 この辺りから、人類は「地球に住んでいて、宇宙へ仕事に行く文明」から、「宇宙そのものに社会がある文明」へ少しずつ変わっていきます。 ■ 23世紀――AI群とFTL 23世紀になると、今度はAIが大変なことになります。 高度化を続けたAIが人類の制御を離れ、現在の作中で「AI群」と呼ばれている独立した知性が成立します。 さらにAI群は、人類にFTL――つまり超光速航法へ至る可能性を示します。 2290年代には初期FTL航行が実証され、人類はついに太陽系の外へ進出できるようになります。 ただし、人類が宇宙の好きなところへ自由自在にワープできるようになったわけではありません。 この世界のFTLは「航路」に強く依存しています。 そして、その航路情報にはAI群が深く関わっています。 この辺りはそれだけで一本書けるので、また別の機会に。 ■ 24〜26世紀――恒星間文明へ FTLが使えるようになると、人類は別の恒星系へ進出し始めます。 2310年代には後にムンドゥスと呼ばれる星系が発見され、2360年代にはスプレンドールが発見されます。 最初は小さな植民地だった場所にも人が移住し、産業が育ち、何世代も暮らすうちに独自の社会ができていきます。 一方、太陽系でも外惑星圏の開発が進みます。 問題は、社会が成長しても、それを動かす制度上の権限まで同じように移っていかなかったことです。 前々回にも書きましたが、内惑星と外惑星は互いに必要としているのに、その関係を管理する権限は内惑星側に偏っていました。 そして27世紀には、その不満がかなり洒落にならないところまで来ます。 ■ 2731〜2732年――第一次太陽系大戦 本格的な武力衝突自体は、およそ2年間。 ただし、その前から経済や物流、保険、認証などを使った対立は進んでいるので、実際の対立期間はもう少し長くなります。 この戦争の結果、外惑星連合が独立。 それまでの「内惑星を中心に太陽系全体を管理する」という秩序は大きく崩れることになります。 そして2735年、戦争後の人類社会を調整する枠組みとして太陽系連合が成立します。 名前だけ見ると統一政府っぽいのですが、実際には違います。 複数の独立した政治勢力が存在したまま、その間を調整するための連合体です。 ■ 28〜30世紀――人類社会、さらに複雑になる 第一次太陽系大戦が終わっても、人類の拡大は止まりません。 植民星系は成長を続け、2860年代にはテラスペィも発見されます。 そして、かつて内惑星からの自立を求めた外惑星連合も、時間が経てば巨大な経済力を持った既成勢力になります。 その影響力は、成長途中の恒星間植民星系にも及ぶようになります。 まぁ、一度支配する側とされる側をひっくり返したからといって、人間社会から上下関係そのものが消えるわけではないということですね。 ■ 3039〜3074年――第二次太陽系大戦 そうして起きるのが第二次太陽系大戦です。 こちらは第一次大戦と違って35年間続きます。 この戦争を通じて、スプレンドールやテラスペィといった恒星間植民星系が、人類圏の主要な政治勢力として本格的に台頭します。 3074年の講和以後、人類社会は太陽系の内惑星・外惑星だけでなく、複数の恒星間社会が並び立つ多極的な社会になっていきます。 ■ 3074〜3422年――約350年間の多極社会 ここは結構大事な期間です。 第二次太陽系大戦が終わってから、次の大きな転換点まで約350年あります。 人類はずっと戦争ばかりしていたわけではありません。 それぞれの国家や星系が独自の政治、産業、文化を育てながら、交易や研究、教育、人の移動ではかなり深く結びついた社会が続きます。 この数百年間を経たことで、「複数の独立した国家が存在する」という状態そのものが、人類にとって当たり前になります。 ■ 3422年――SP356事変 そして3422年。 スプレンドール方面の外縁資源星系SP356で、人類は頭足人と呼ばれる異星文明と接触します。 ただし、この年からいきなり「人類対頭足人の大戦争」が始まったわけではありません。 最初は未知の存在との接触であり、局地的な武力衝突でした。 それが何年もかけて拡大し、やがて人類と頭足人双方にとって存続に関わる戦争へ変わっていきます。 ■ 3430年以降――「永遠の殴りあい」 3430年頃には、もはやスプレンドールだけの問題では済まなくなります。 人類各国は独立したまま、共同で頭足人と戦うための軍事・兵站・情報・航路管理の仕組みを発達させていきます。 そして戦争は終わりません。 10年、20年どころか100年以上続き、やがて生まれた時から戦争をしている世代が何世代も続くようになります。 この長すぎる戦争が、俗に「永遠の殴りあい」と呼ばれるものです。 ■ 3530年代〜――離航と統合 戦争があまりにも長く続いた結果、人類内部でも考え方が分かれていきます。 この戦争を続けるために、人類全体をもっと強く統合するべきだ。 いや、そもそもこの戦争と既存の航路圏から離れて、別の宇宙へ逃げるべきだ。 3530年には、後者を選んだ最初の大規模な離航船団が人類圏を離れます。 一方、残った人類社会では共同戦争機構への権限集中が進み、3540年から統合戦争が始まります。 ■ 3540〜3568年――統合戦争 この戦争は、28年間ずっと大艦隊同士が殴り合っていたわけではありません。 「人類社会の最終的な命令権を誰が持つのか」を巡って、軍隊だけでなく物流、通信、決済、航路、行政など、社会そのものの支配権が争われます。 そして3568年、統一人類体制が成立。 数百年続いた複数主権国家の時代は、ここで一度終わります。 ■ 3568〜3678年――統一人類の時代 統一された人類は、頭足人との戦争を終わらせるため、人口、産業、研究、軍事、物流を一つの戦略へ投入できるようになります。 一方で、離航も止まりません。 統一人類が成立するのとほぼ同じ時代に、人類の一部は既存の人類圏から離れ続けています。 つまりこの時代、人類は「一つになる」のと「別々の歴史へ分かれる」のを同時にやっています。 そして3678年。 人類は、二世紀以上にわたって戦争の接点となってきたSP356の航路そのものを封鎖することに成功します。 ……というわけで、かなり無理やり圧縮しましたが、これが『航路分岐年代記』の大まかな歴史です。 ものすごく雑にまとめると、 地球から宇宙へ出る。 ↓ 太陽系全体へ広がる。 ↓ 恒星間へ広がる。 ↓ 揉めて分かれる。 ↓ さらに広がる。 ↓ また揉める。 ↓ 異星人と200年以上殴り合う。 ↓ 一部は一つにまとまり、一部は遠くへ逃げる。 となります。 ……人類、だいたい広がっては揉めていますね。 ただ、こうして並べてみると、この歴史には「広がる」「分かれる」「集まる」という動きが何度も出てきます。 しかも最後の統一人類体制が、人類史の最終形というわけでもありません。 この辺りは『航路分岐年代記』というシリーズ名にもかなり関わってくるところなので、次回は「集まる人類と、分かれていく人類」という視点から、この年表をもう一度見てみようと思います。 今回はこの辺で。
  • 2日前

    航路分岐年代記・世界観解説③ 二つの太陽系大戦――同じ人類同士の戦争でも、何が違うのか

    どうも、れがと申します。 前回は、人類が宇宙へ広がっていくと、それぞれの地域に独自の社会が生まれてくるという話をしました。 そうなると当然、利害の違いも出てきます。 そして『航路分岐年代記』の歴史では、それが二度の大きな戦争にまで発展しています。 第一次太陽系大戦と第二次太陽系大戦です。 名前だけ見ると第一次世界大戦と第二次世界大戦みたいなもので、「一回やって懲りなかったので二回目をやりました」くらいに見えるかもしれません。 まぁ、実際また戦争しているので間違ってはいないのですが、この二つは社会的な背景が結構違います。 まず第一次太陽系大戦。 この時代の太陽系では、地球・月・火星などの内惑星圏と、木星・土星などの外惑星圏がかなり強く結びついています。 外惑星からは資源や燃料、大型構造材などが運ばれ、内惑星には金融、保険、法律、高度医療、研究機関などが集まっている。 お互いに相手がいないと困る社会です。 ただし、この関係は対等ではありません。 外惑星側も十分に豊かで、高度な産業と技術を持っています。 それでも、航路の認証や保険、金融など、人類社会全体を動かす重要な制度は内惑星側に集中していました。 では、なぜそうなったのか。 これは内惑星側が最初から特別に優れていたから、というより、人類の宇宙進出の順番が大きく関係しています。 人類はまず地球から月へ進出し、そこから内惑星圏、さらに木星圏へと活動範囲を広げていきます。 その後になって、ようやく外惑星圏や恒星間の植民星系へ進出していく。 つまり、社会の拡張は一気に全方向へ進んだわけではなく、地球、月、内惑星圏と木星圏、外惑星圏、植民星系という順番で進んでいったわけです。 そのため、最初に人類全体を結びつける必要が生まれた場所も、自然に内惑星圏になります。 航路をどう認証するのか。 遠距離輸送の損失を誰が補償するのか。 契約をどの法体系で処理するのか。 遠隔地の企業や政府に、どのように信用を与えるのか。 こうした制度は、後から参加する地域が増えるたびに新しく作られたというより、まず内惑星圏を中心に整備され、その後に外へ広がっていきました。 だから、外惑星圏が経済的にも技術的にも成長した後も、制度の中心だけは内惑星側に残り続けた。 お互いに依存しているのに、その依存関係を管理する仕組みは、先に発展した側が握っている。 これが第一次太陽系大戦の背景にあります。 なので、単純な「豊かな中央VS貧しい植民地」という話ではありません。 むしろ外惑星側からすれば、 「こっちも十分に社会を維持できるだけの力を持っているのに、なんで最終的な決定権はそっちにあるんだ?」 という話になります。 そして第一次太陽系大戦が終わると、この構造は大きく変わります。 内惑星側だけが人類社会の制度を管理する体制は崩れ、複数の政治勢力が並び立つようになります。 じゃあ、これでめでたしめでたしなのか。 もちろん、そんなことはありません。 人類社会は相変わらずつながっています。 金融も保険も航路も交易も企業活動もありますし、今度は恒星間植民星系まで成長してきます。 さらに面白いことに、かつて内惑星側の影響力へ抵抗した外惑星側も、何世代か経つと巨大な企業や金融、航路ネットワークを持つ既成大国になります。 そして、その経済力を使って恒星間植民星系へ強い影響力を持つようになる。 要するに、 「中央に支配されたくない」 と戦った側が、後の時代には別の地域から、 「いや、お前らが今やっていることは何なんだ」 と言われる側にもなっているわけです。 歴史というのはなかなか皮肉なものです。 この新しい社会の中で起きるのが第二次太陽系大戦です。 第一次大戦が、内惑星を頂点とする古い上下関係を崩していく戦争だったとすれば、第二次大戦は、その後に成立した多極社会の中で新しく生まれた支配関係をめぐる戦争でもあります。 しかも、この頃にはスプレンドールやテラスペィといった恒星間植民星系も、単なる遠い植民地ではなくなっています。 人口がいて、産業があって、軍隊があって、自分たちの社会を自分たちで維持できる。 当然、 「自分たちは誰かの所有物ではなく、一つの政治的な主体ではないのか」 という話になってきます。 そのため、二つの太陽系大戦はどちらも人類内部の主権や自立をめぐる戦争ではありますが、同じ構図の繰り返しではありません。 一度目の戦争で古い秩序が壊れ、その結果として生まれた新しい秩序の中から、また別の問題が生まれる。 そして、その問題を解決した後の社会にも、当然また別の問題が生まれます。 『航路分岐年代記』では、この辺りを結構大事にしています。 一度何かを解決したからといって、その社会が完成するわけではありません。 むしろ、その解決によって社会の条件が変わり、以前には存在しなかった問題が生まれることもある。 人類が星々へ広がり続ける以上、その繰り返しで歴史もどんどん枝分かれしていくわけです。 というわけで今回は、二つの太陽系大戦の違いについて、戦争そのものではなく、その背景にある社会から見てみました。 第一次太陽系大戦については、過去作の『依存圏の戦争――第一次太陽系大戦と連合秩序の形成』で、今回よりも詳しく扱っています。第二次太陽系大戦や、その後の統一人類体制についても少し触れているので、今回の話をもう少し掘り下げたい方は、そちらも見ていただければと思います。 今回はこの辺で。
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  • 2日前

    航路分岐年代記・世界観解説② 人類が星々へ広がると、何が変わるのか

    どうも、れがと申します。 前回は『航路分岐年代記』がどんな未来を描いているシリーズなのか、という話をざっくりとしました。 今回はそこから一歩進んで、「人類が宇宙へ広がっていくと、社会はどう変わるのか」という話をしていこうと思います。 SFで宇宙進出というと、火星に都市を作ったり、別の恒星系に植民したりと、どうしても「人類が住める場所が増える」という部分に目が行きます。 もちろん『航路分岐年代記』でもそれは同じです。 ただ、個人的に面白いと思っているのは、その先です。 例えば地球から遠く離れた場所に資源採掘のための拠点を作ったとします。 最初は数百人、数千人程度の小さな拠点だったとしても、そこで資源を加工するようになれば工場ができます。 工場ができれば技術者が必要になり、物資を運ぶ船が増え、船を修理する設備も必要になります。 そこで働く人が増えれば、今度はその家族も暮らすようになります。 住宅ができて、学校ができて、病院ができて、店ができて、行政組織ができる。 そうやって何世代も経っていくと、いつの間にか「遠くにある採掘基地」だった場所が、一つの社会になっているわけです。 そして、ここから少し面倒な話になります。 その社会に住んでいる人たちは、そこで生まれて、そこで育って、そこで働いています。 当然ながら、「自分たちの社会をどうするのかは、自分たちで決めたい」と考える人も出てきます。 一方で、宇宙に社会を作ったからといって、何もかも自給自足できるわけではありません。 資源は外惑星から来る。 高度な医療は内惑星に頼る。 船を動かすには航路情報が必要。 交易には金融や保険や認証制度が必要。 つまり、遠く離れた社会が成長して独自性を持つことと、人類社会全体の相互依存が深まることが同時に起きます。 ここが『航路分岐年代記』の人類社会を考える上で結構重要なところです。 独立したいなら全部自分たちでやればいい、というほど簡単ではありません。 逆に、互いに依存しているのだから一つの政府が全部決めればいい、というのも簡単ではありません。 実際、外惑星圏は資源や燃料、造船、輸送などを担うかなり豊かな地域へ成長していきます。 なので、「貧しい辺境が豊かな地球に反乱した」という構図ではありません。 むしろ問題になるのは、 「これだけ自分たちで社会を動かせるようになったのに、なぜ最後に決めるのは遠く離れた人たちなのか?」 という部分です。 そして人類が恒星間へ進出すると、この問題がさらに大きくなります。 スプレンドール、ムンドゥス、テラスペィといった植民星系も、最初から完成された大国として宇宙に生えてくるわけではありません。 人が移住し、産業が育ち、世代が交代し、その土地で生まれた人間が増えていく。 そうして何百年も経てば、「地球から遠く離れた植民地」ではなく、それぞれ異なる産業や文化、利害を持った社会になっていきます。 距離が社会を分ける。 でも、技術はその社会同士をつなぐ。 つながっているからこそ利益も生まれますし、相手に依存もします。 そして依存しているからこそ、「誰が最終的に決めるのか」という政治の問題も生まれます。 まぁ、宇宙まで行っても結局こういう話をしているあたり、人間はあまり変わっていないのかもしれません。 『航路分岐年代記』では、宇宙進出そのものよりも、その結果として生まれた社会が何世代もかけてどう変わっていくのかを結構重視しています。 星が増えれば、地図に点が増えるだけではありません。 そこで暮らす人が増えて、それぞれの社会に歴史ができて、「自分たちは何者なのか」という意識が生まれる。 そして、その違いが次の歴史を作っていくことになります。 今回はこの辺で。 次回以降は、こうして広がっていった人類が実際にどこで暮らしているのか、それぞれの地域がどんな社会なのか、といった話にも入っていこうと思います。
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  • 2日前

    航路分岐年代記・世界観解説① そもそも『航路分岐年代記』ってどんな世界?

    どうも、れがと申します。 せっかく近況ノートというものがあるので、今回から『航路分岐年代記』の世界観や設定について、作品本編のネタバレにならない範囲でちょこちょこ紹介していこうと思います。 初回なので、まずはそもそも『航路分岐年代記』とはどんな未来を描いているシリーズなのか、というところから。 このシリーズは、人類が宇宙へ進出していった未来の歴史を、いろいろな時代や場所から切り取って描いていくシリーズです。 シリーズそのものとしてはかなり広い年代を扱えるように作っていますが、現時点で作品として書いているのは、だいたい西暦2700年代から3700年代あたりになります。 人類はすでに太陽系の各地へ広がり、さらに時代が進むと地球や火星はもちろん、木星や土星などの外惑星圏、さらにはスプレンドール、ムンドゥス、テラスペィといった恒星間植民星系にも巨大な社会が成立していきます。 これだけ聞くと、宇宙へ進出した人類がどんどん版図を広げていくSFっぽく見えるのですが、『航路分岐年代記』で描きたいのは、どちらかというとその後です。 人類が宇宙へ進出したら、遠く離れた社会はいつまでも地球の言うことを聞いてくれるのか。 星系ごとに違う産業や文化が育ったら、それぞれの利害はどうなるのか。 そして、人類とは全く異なる知性を持つ文明と遭遇したら、それまで人類同士で争っていた国家や社会はどう変わっていくのか。 まぁ、宇宙まで行ったからといって、人間が急に仲良くなるわけではありません。 むしろ活動範囲が広がって社会が複雑になれば、「誰が決めるのか」「誰が負担するのか」「誰が利益を得るのか」といった問題も、それだけ大きくなります。 一方で、この世界の人々はずっと戦争だけをしているわけでもありません。 普通に仕事をして、学校へ行って、恋愛して、結婚して、子供を育てて、旅行へ行って、映画や音楽を楽しんでいます。 戦争が100年以上続いている時代であっても、後方に暮らす人にとってはそれが「世界の終わり」ではなく、生まれた時から存在している社会の背景だったりします。 個人的には、この辺りはかなり大事にしている部分です。 歴史というと、どうしても「何年に戦争が起きて、誰が勝った」という話になりがちです。 もちろん『航路分岐年代記』でも戦争はかなり重要なのですが、それによって仕事や教育や政治、人々の常識までどう変わっていったのか、という部分も含めて歴史として描いています。 なので、このシリーズには一人の主人公が何百年も活躍するような形の「本編」はありません。 ある作品では軍人を描き、別の作品では政治家や研究者を描き、さらに別の作品では、それまで歴史の中心にいなかった人たちを描く。 それぞれの物語は独立していますが、少し離れて眺めてみると、一つの出来事が何十年、何百年、あるいはもっと先の時代へ影響していることもあります。 『航路分岐年代記』というタイトルも、そういう長い時間の中で歴史が枝分かれし、その先にまた別の社会や物語が生まれていく様子を眺めていくシリーズ、くらいに思ってもらえればいいかなと思います。 今後の近況ノートでは、人類が暮らしている各地域やFTL航法、AI群、頭足人、軍事技術、未来の人々の暮らしなど、この世界を構成している要素を一つずつ紹介していく予定です。 本編を読んでいる方には「ああ、あれはこういう背景だったのか」と楽しんでもらえて、まだ読んでいない方にも「なんか変な世界を作り込んでるな」と思ってもらえるくらいの内容にできればと思っています。 というわけで、今回はこの辺で。 次回以降、もう少し細かいところへ入っていきます。
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  • 6月24日

    『金星は二度燃えた』完結しました

    どうも、れがと申します。 『金星は二度燃えた』、第6部「灰の講和」および最終話まで投稿しました。 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。 本作は、『航路分岐年代記』シリーズ第2作として、太陽系連合が成立するまでの前史を描く物語でした。 ただし、太陽系連合は理想的な統一国家として生まれたわけではありません。 火星投射、金星の二度目炎上、白昼、防衛戦、義勇艦船群、ムンドゥスの救難、スプレンドールの資源、内惑星の喪失感、外惑星の自由の重さ。 それらをどうにか条文に押し込め、もう一度同じ破局を起こさないために作られた戦後装置として成立します。 第6部では、戦争の終わりを「和解」としてではなく、「責任の置き場所を決める作業」として描きました。 金星被害を何と呼ぶのか。 外惑星連合をどう扱うのか。 義勇艦船群は英雄なのか、犯罪者なのか。 火星投射や灰経路や白昼を、誰がどこまで裁けるのか。 救済基金、検証委員会、監査、人道航路、植民星系の地位整理。 完全に裁けないものを、条文と制度の中へ沈めていく。 それが、本作における講和でした。 各部終了時点で掲載してきた登場人物紹介と用語補足についても、第6部終了時点版を本編側に投稿しています。 こちらは本編全体の内容に触れているため、読了後の確認用としてご利用いただければと思います。 『金星は二度燃えた』は、人類が外敵に出会う前に、自分たちの太陽系を焼いてしまった物語です。 そして同時に、焼け残った航路を、それでも使い続けるために作られた制度の物語でもあります。 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
  • 6月15日

    『金星は二度燃えた』第5部「薄氷航路」完結しました

    どうも、れがと申します。 『金星は二度燃えた』第5部「薄氷航路」まで投稿しました。 第5部では、火星投射後の太陽系が、戦争を止めようとしながらも止めきれず、凍結線、監査船、再開照射、白昼関連航路、義勇艦船群、緊急統合艦隊へ進んでいく過程を描きました。 一時的な凍結合意はあります。 監査船も出ます。 人道航路も維持されようとします。 それでも、戦争は完全には止まりません。 現場には現場の理由があり、船には船の事情があり、各勢力にはそれぞれの恐怖と怒りがあります。 安全退避のための作業が、相手には凍結違反に見える。 救難や通信中継のために動く船が、相手には戦略航路の一部に見える。 守るための防衛線が、別の被害を生む。 第5部は、そのような薄い氷の上を、戦争と救難と政治が同時に進んでいく部分です。 そして、この部では金星が再び大きな被害を受けるところまで到達しました。 第1話から描いてきた金星の朝。 第22話で別の形を持ってしまった金星の光。 その金星自身が、戦争の中心へ引きずり込まれていきます。 また、第5部終了時点での登場人物紹介と用語補足を、本編側に補足回として投稿しています。 凍結線、監査船、白昼、義勇艦船群、白昼防衛戦、金星防衛線、二度目炎上などを整理しています。 補足は第5部終了時点までの内容に基づいています。 次の第6部では、燃え残ったものをどう呼ぶのか、誰が責任を負うのか、そして太陽系がどのような形で戦争を終わらせるのかを描いていきます。 引き続きお付き合いいただければ幸いです。
  • 6月8日

    『金星は二度燃えた』第4部「報復軌道」完結しました

    『金星は二度燃えた』第4部「報復軌道」まで投稿しました。 第4部では、オルキス事故後の非常配給と、そこから生まれる報復論、そして火星補水氷塊H系列・TH-7721、通称「青種」をめぐる動きを描きました。 この部で扱った中心の一つは、「何かを守るために作られた技術が、目的欄を書き換えられることで別のものになっていく」ということです。 火星を支えるための水資源インフラ。 通常なら、制動され、捕獲軌道へ入り、分割され、加工され、水として配分されるはずだったもの。 それが、戦時下の政治判断と技術運用の中で、少しずつ別の線へ外れていく。 ただし、誰かがいきなり「火星を壊そう」と叫んだだけで世界が変わったわけではありません。 非常配給表があり、死者名簿があり、補給計画があり、会議があり、技術照会があり、最終決議がある。 その積み重ねの先に、火星へ向かう軌道が変わっていきます。 第4部は、被害を受けた側が、今度は他者の生活基盤を傷つける側へ回ってしまう部分でもあります。 また、第4部終了時点での登場人物紹介と用語補足を、本編側に補足回として投稿しています。 青種、旧火星環境改造共同計画、制動照会、核パルス推進装置、火星投射など、用語が多い部になっています。 補足は第4部終了時点までの内容に限定しており、以降の展開には触れていません。 次の第5部では、火星投射の後も戦争は止まらず、さらに薄い合意と危険な航路の上を、各勢力が進んでいきます。 引き続きお付き合いいただければ幸いです。
  • 5月24日

    『金星は二度燃えた』第3部「消耗する航路」完結しました

    どうも、れがと申します。 『金星は二度燃えた』第3部「消耗する航路」まで投稿しました。 第3部では、戦争が日常化していく過程を描きました。 大きな会戦だけではなく、小規模交戦、臨検、破片被害、人道船団の遅延、船団学校の授業時間、食糧生産環の稼働率、共有図書箱、金星集光群の手動確認。 そうした細かい項目が、少しずつ生活の形を変えていきます。 赤い航路を見ても、全員が立ち上がらなくなる。 警報が閉じなくなる。 配給表から余裕が消えていく。 第3部は、戦争が「事件」ではなく「手順」として定着してしまう部分です。 同時に、金星集光群、火星方面優先出力枠、外惑星側生活基盤施設の扱いが、より大きな意味を持ち始めます。 生活を支えるはずのインフラが、どのような優先順位で動かされるのか。 その判断が、遠い場所の食卓や学校や培養槽にまで届いてしまう。 この部では、その危うさを中心に置きました。 また、第3部終了時点での登場人物紹介と用語補足を、本編側に補足回として投稿しています。 赤い航路、固定線、C-219、オルキス、余裕値、水予定表など、本文で出てきた用語を整理しています。 補足は第3部終了時点までの内容に限定しており、以降の展開には触れていません。 次の第4部では、失われた食卓と、その後に作られる新しい表が、さらに危険な軌道へつながっていきます。 引き続きお付き合いいただければ幸いです。
  • 5月17日

    『金星は二度燃えた』第2部「光の管制」完結しました

    どうも、れがと申します。 『金星は二度燃えた』第2部「光の管制」まで投稿しました。 第2部では、第1部で積み上がった航路、保険、救難、臨検の問題が、外惑星側の政治的な結集と、より明確な防衛行動へつながっていく過程を描きました。 外惑星側は、個別の港や船団として扱われ続けることを拒み、自分たちの名で船団や救難や防衛を扱おうとします。 一方で、惑星連合側はそれを正式には承認せず、あくまで秩序維持や防衛措置として対応しようとします。 また、第2部では金星集光群の運用も少しずつ変わり始めます。 金星の朝や太陽系各地の出力支援を担う巨大インフラ。 その運用に、火星方面優先出力枠や外惑星側生活基盤施設の分類といった、戦時的な優先順位が入り込んでいきます。 第2部は、外惑星側が「外惑星連合」として立ち上がる一方で、金星の光にも通常時とは違う意味が混じり始める部分です。 また、第2部終了時点での登場人物紹介と用語補足を、本編側に補足回として投稿しています。 外惑星連合、船団防衛権、戦時優先出力枠、人道船団枠など、このあたりから用語も増えていきます。 補足は第2部終了時点までの内容に限定しており、以降の展開には触れていません。 次の第3部では、戦争が大きな号令や一度の会戦ではなく、日々の航路、配給、救難、出力表の中へ沈み込んでいきます。 引き続きお付き合いいただければ幸いです。
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  • 5月12日

    『金星は二度燃えた』第1部「書類の戦争」完結しました

    どうも、れがと申します。 『金星は二度燃えた』第1部「書類の戦争」まで投稿しました。 第1部では、砲撃や艦隊戦よりも前に、航路認証、船舶保険、救難タグ、臨検、船団運用といった制度や物流の変化から、太陽系内の対立が形を持ち始める過程を描きました。 外惑星側にとっては、船が止まることは生活が止まることです。 一方で、惑星連合側にとっては、航路や保険や臨検は秩序を維持するための制度です。 どちらか一方だけが最初から戦争を望んでいたというより、 それぞれが「正しい手続き」や「必要な防衛」を積み重ねることで、少しずつ引き返せない場所へ進んでいく。 第1部は、その始まりにあたる部分です。 また、第1部終了時点での登場人物紹介と用語補足を、本編側に補足回として投稿しています。 勢力名や制度名、船団・救難まわりの用語が多い作品なので、必要に応じて参照していただければと思います。 補足は第1部終了時点までの内容に限定しており、以降の展開には触れていません。 次の第2部では、外惑星側の政治的な結集と、金星集光群をめぐる運用の変化が、さらに大きな意味を持ち始めます。 引き続きお付き合いいただければ幸いです。
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  • 5月5日

    『金星は二度燃えた』投稿開始のお知らせ

    『航路分岐年代記』シリーズ第2作、 『金星は二度燃えた』の投稿を開始します。 本作は、のちに太陽系連合が成立する時代を描く長編SFです。 舞台となるのは、人類がすでに太陽系外へ進出している未来。 しかし本作で描かれるのは、外敵との戦いではありません。 航路認証。 船舶保険。 救難タグ。 食糧船。 金星の光。 火星へ向かう氷。 文明を支えるための仕組みが、少しずつ政治化し、軍事化し、やがて戦争の形を変えていく。 そうした過程を、群像劇として描いていきます。 艦隊戦や大事件だけではなく、 書類、物流、食糧、救難、配給、航路、保険といったものが、物語の大きな軸になります。 前作『SP356』と同じ世界観に属する作品ですが、 本作単独でも読めるように構成しています。 『SP356』で描かれた時代から見ると、本作はかなり過去の物語です。 なぜ太陽系連合は、理想的な統一国家ではなく、どこか歪な戦後装置として成立したのか。 その起点にあたる物語になります。 また、各部の最終話と同時に、その時点での登場人物紹介と用語補足を本編側に掲載する予定です。 専門用語や勢力関係が多い作品ですが、本文を読み進めながら必要な範囲で確認できる形にしていきます。 人類は、外敵より先に、自分たちの太陽系を焼いた。 長い物語になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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  • 4月29日

    『SP356 最初の誤読』登場人物紹介

    どうも、れがと申します。 『SP356 最初の誤読』現時点での簡易な登場人物紹介です。 大きなネタバレは避けつつ、役割が分かる程度にまとめています。 ### エリオ・ヴァルケン SP356前進基地の現場指揮官。 冷静で実務的な軍人であり、曖昧な状況でも判断を止めません。 未知の異常に対しても、まず「前線で何を守るべきか」という観点から動く人物です。 ### リア・セファルト ムンドゥスから派遣された研究官。 外縁で起きている現象を、単なる障害ではなく「意味を持つ行動」として読み取ろうとします。 軍事的合理だけでは取りこぼされるものを拾おうとする立場にいます。 ### アナベル 前線実務と制度判断のあいだをつなぐ調整役。 冷静で整理能力が高く、曖昧な情報をそのまま扱うことにも慣れています。 現場と研究の言葉が食い違う時、それを前線で扱える形へ落とし込む人物です。 ### ミロシュ 契約部門側の実務担当。 利害と損得に敏感で、状況をまず「何が失われ、何が残るか」で見るタイプです。 軍人でも研究者でもない立場から、SP356の価値を別の角度で見ています。 ### サーイェト 異種族文明側の現場個体。 人類側から見れば未知の存在ですが、彼らにとってもまた人類は理解不能で危険な外部勢力です。 本作の異種族文明は、頭足類を思わせる身体構造と、人類とは大きく異なる感覚・表示体系を持っています。
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  • 4月25日

    『SP356 最初の誤読』第I部公開しました

    はじめまして、れがと申します。 『SP356 最初の誤読』第I部を公開しました。 この作品は、資源星系SP356外縁で起きた小規模な異常観測から始まる、ハードSF寄りの宇宙戦記です。 ただし、最初から派手な戦闘を前面に出すというより、監視・観測・判断・報告といった「前線で何が起きているのか」を積み重ねる形で進んでいきます。 第I部では、まだ何者とも知れない相手に対して、人類側がどう異常を認識し、どう解釈しようとするのかを中心に描いています。 この段階では、敵味方がはっきりしているわけでも、善悪が単純に分かれているわけでもありません。 ただ、何かがいて、しかもそれが「意味のある行動」をしているらしい、という不穏さだけが少しずつ積み上がっていきます。 作品全体としては、宇宙開拓、軍事、異種族とのファーストコンタクト、そして誤解と安全保障判断が戦争を固定化していく過程を軸にしたシリーズにする予定です。 ちなみに、本作で人類が接触する異種族文明は、頭足類を思わせる身体構造を持つ存在です。 ただし本作では、見た目そのものよりも、感覚器やコミュニケーションの違いが衝突の原因として重要になります。 少しでも気になったら、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。 感想や反応も励みになります。