誰が聞くわけでも無いけれど、自己分析。
元ネタというか、オマージュもとは少女終末旅行。ただ、なるべくピントをあわせなかった。ピンと来てほしくなかったから。
百合というテーマで文章を書いてみたわけだけれど、多くの心残りの一つなのは、同性愛という事について、リアリティな葛藤を上手く詰め込められなかった事。
もう少し恋愛について、二人に悩ませてあげたかった。
これは個人主義だけれど、自己の性別について色々考えている人を多く知っているからこそ、百合、もとい同性愛というものを簡単に語りたくなかった。
だけれど、自分が異性愛な癖に、それもエンタメ作品なのに、そんなテーマを持ち込むのも野暮で失礼な気がしたから、辞めたという経緯もある。
感情を書きたがる人間だから、そういう部分を詰め込みたくなるけれど、求められている物がそれじゃあない事はなんとなくわかる。だけれどいつかファンタジーの枠を越えた時は、ちゃんと悩む二人を創ってあげたい。
これからまた小説を書ける気は、今のところあんまりしていないけれど。
あとは何かな、きっと悪いヤツとして出てきたヤツに助けられるみたいな展開も、肩透かしなのかなと思いながら書いた。
だけれど誰もが誰もの役割と正義を持っているからこそ、誰もがちゃんとした理由の上で存在して欲しいと思う。
作中で亡くなった人間達の視点の話も書こうと思ったけれど、元気が続かなかった。
本来は、プロットポイント1に出てきた魔族と、プロットポイント2に出てきた人間の話は別枠で書くべきだとは思う。小説という媒体だから、どうしても視点変更や、人称変更に踏み込む事になるので避けたけれど。
個人的に振り返った時のプロットとしては、ここからはネタバレ。
といっても誰が読んでいるかと言われると怪しいけれど、それでもネタバレだからね。簡単に三幕で書くね。
設定パート
・家がおかしくなる
・家から出て現状を把握
・こうなった理由を探す
・家から出る決意をする
・準備
・出発と、さらなる現状把握
・最下層から登る
本来、この時点でキャラクターに過去の話は設定しておくべきだったのだけれど、今回はプロットが無かったから、とりあえずティア→ククという構造と、ティアが明るめで元気、感情的。ククがシニカル、少し元気、冷静、よく考える。
という対立したキャラクター性だけで埋めた。とりあえずこれで二人の関係性だとか、違いはわかりやすく伝わるとは思う。
そこから最下層までの間は、ティアが実は怖いけれど、ククと一緒だからこそ元気に振る舞えるという事だとか、出口が見えないシチュエーションホラー的な怖さだとかを中心に書いた。ただあえて強めな怖さにはしなかった。ホラー書いてるんじゃないんだから此処はライトにすべきという判断。
対立パート(プロットポイント1)
・下層での魔族との出会い(本来は魔族のサブプロット開始)
・ティアの激情、ククの論戦パート(対比)
・魔族からの現状への解答
・ティアとククに見える希望的観測(ミッドポイント)
・水浴び(ミッドポイント後の幸せなパート)
魔族の出現は唐突かつ、アクションは控えめ、ただ主人公二人の戦いのスタイルや性格から来る動きを少しずつ出していくという事にした。
ククは炎と風の魔法について造形が深く、ティアは基本的に猪突猛進だけれど剣士として中々に腕が立つという事はこの時点で読者に分かってもらう必要がある。後の大きい戦闘の為に。
論戦も、大げさな言い回しだけれど、魔族には魔族の理由があってこういう事をしているという事を話した上で、この場で二人を殺す事の不必要性と、あくまで目的の為に動いているという事を強調。
つまりはこの魔族って、敵に見えるように書いているし、主人公達側から見れば敵なんだけれど。敵視しているのは主人公達だけなんだ。読み直していないせいで記憶に齟齬があるから、ちょっと矛盾が出るかもしれないし。敵意の無さ、殺しかけても本気じゃない感じも足したかったかもしれない。
短めの話ではあったけれど、このプロットポイントから、あえてこの状況なのに明るい話に持っていくというのは、自分としては少し珍しい書き方だなと思った。
自分は基本的にミッドポイントを暗くして、そこから持ち上げる展開にする事が多いから。
この場所をプロットポイント兼早めのミッドポイントとしたのは、状況の大きな変化と解明、そうして水浴びパートでのククがティアへ抱く感情についての疑問を考えさせてあげたかったから。
解決パート(プロットポイント2)
・とりあえず上っていく
・村について惨状を目にする
・戦闘
・二人の気持ち
この中層での簡単な戦闘シーンは、やはり次にあるボス戦への布石、風魔法で相手の勢いを止めたり、二人の連携力を確かめる為の、単純な必要要素を詰めたパート。展開として弱いのは自覚していたけれど、三日で書くには時間が無かった。
村の惨状についてと、その答えは、彼女らには予見出来ていた事だから、ある程度異常な空間に慣れてしまっている彼女達なりに飲み込ませた。
逆に、此処をミッドポイントにする事も出来たんだ。暗い方のミッドポイント。
でもそれだともっと長尺になるから、あえて先に知らせておくという方法を取った。
ただ、彼女達は冷たいわけじゃなくてちゃんと後に墓作りなどもさせてはいる所で、感情面でのカバーはさせた、もっと強く揺さぶりたいと思うのは個人的な感情だけれど、そこは仕方が無い。
戦闘は、一応多少、多少強めのアクションシーンにした。
ポット出のキャラクターとのボスシーンだから、もうちょっと考えようはあったけれど、一応村人同士の殺し合いというよりかは、狂人の虐殺という風に、人間全体の業は浅く書いた。
その分、ボスに業を背負って貰った。だからこそ、二人は人間は殺せたという事にした。
本当は、ボスの過去パートも書きたかったけれど、魔族と同じ理由で断念。
実はこの戦闘がプロットポイント2だったりもする。戦闘がと思われるかもしれないけれど、戦わなければいけない"人間"を殺す覚悟を持って乗り越えている事と、死ぬかもしれないような手練れ相手でも、ティアはククを信用して作戦に乗るだとか、そうしてククはティアへの気持ちを詠唱で叫んでしまうだとか。アクションよりも大事な事が多いシーン。
奇を衒ったアクションは、癖。剣の打ち合いは、どうもトラウマがある。
剣道経験者で、居合いについても多少の造詣があるから、どうしてもファンタジーに出てきがちな剣士が、剣同士の戦いをすると、逆に拘りが先行して読みにくくなると思う。
大事なのはアクションより二人の気持ち、ボスシーンだからもちろん苦戦する。詠唱は個人的な好みだから、別にどうだって構わなかった。ノリで書いたからもう覚えてないし、センスはあまり無いかもなって思っていた気がする。
珍しく激情に駆られたククが、つい詠唱の中でティアへの気持ちを口にしてしまうという展開、これはクク自身も、死の際でようやく気付いたようにした。必死さ余って気付く事は現実でもよくある事。
そうして、ティアがククをかなり好ましく思っている事自体は最初からちゃんと匂わせていたので、晴れてゴールイン、だから此処がプロットポイント2で、実は本編の完結パート、上層は実はエンディング、正直肩透かしで申し訳ないけれども。
エンディングパート
・二人が上層へ登る。
・最上階のボスには勝てないと悟る。
・道中付けのような事をしながら最下層へ降りる。
・魔族に手を貸してもらう。
・終わり。
ダンジョンの構造について理解したあとならば、上層もなんとかなったという事にした、どれくらいかかったかは書かなかったけれど、村一つ分の食料があれば、どれだけかかってもいいだろう。今回は短編だから省いたけれど、これを中編以上にするのだったら、もっと手はかける。そもそも書いている段階で構成が変わると思う。
最上層では、もう一度何か起こしたかった。そのまま出るんじゃ面白くないなと思ったから。
だから大好きな道中付け、落語の一つ。
厳密に言えば道中付けと言い切るには少しおかしいのだけれど、自分はキャラクター達が通ってきた事を一つずつ思い出しながら戻るという行為が凄く好きなので、それでエンディング感を出してみた。
そうして、本来はサブプロットで書きたかった、魔族へのお願いの話。
人間の業を見て、やっぱり主人公二人の考えも少しだけ変わる。けれど魔族がそうさせたという事実と、根底は変わらない。
だけれど、自分達が成すべきこと、生きていく為に、頭を下げる。
お神酒は持っていったけれど出す機会がなかったので此処で出したけれど、魔族が思ったよりも悪いヤツじゃないという表現には役立った。
悪いヤツには悪いヤツでいてほしいだとか、昔酷い口調で言われたから正直書いていて具合は悪くなったけれど、書いちゃったものは書いちゃったもの。俺はこういうのが好きなんだから。
そうして目的達成。
作品のテーマとしては
『それぞれの正義』
魔族と人間という異種族間にある別種の正義。
それはぶつかりあっても、最終的には必要な事も思惑も全部ひっくるめて、筋を通す話。
『百合』
これはコンテスト通り、正直、この話は男女でやっても、自分の好みにはそぐわなかったと思う。要は自分が好きじゃないと、駄目だからさ。
ティアとククの関係性は、女性であるからこそ成り立つ、特に最下層の頃と、水浴びパートだとかはそう。
恋愛として、男女じゃ絶対に成立させようの無い話だというのは間違い無い。
『生物同士の付き合い方』
最初のテーマに近しいけれど、魔族と人間の付き合い方。人間と狂った人間の付き合い方。人間と魔物の付き合い方。、
別種または別の個体同士がどうやって反発したり、分かり合ったり、狂ったり、愛したり、怒ったり、頭を下げたり、感謝したりするのか。そういう話でもある。
『自分の中にある考えの答えに気付く瞬間を探す』
これが一番強いテーマかな。
何よりもこの話は、ククという少し鈍い女の子が、自分の一番傍で、自分をずっと支えてくれたティアという女の子に抱いていた感情を理解して、結ばれる話。
一日に4万字くらい執筆してしまったから、もう少しなんとか出来たかもしれないけれど「自分程度が書く話だ、別にもういいか」っていう気持ちで潰れた。
去年の12月に元物書き友達、今は僕の筆を踏みつけてボロボロにして消えた人間に、言葉でぶん殴られてから延々と続いている抑うつした気分と、それに伴う吐き気で推敲も改稿ももう出来なかった。
だから結局、誤字だらけの第一稿を書き殴る事が出来たというだけの話。
一文字書くのも、五万字書くのも変わらない。書き出せた事だけが奇跡。
監視していると言って消えたその人間には、是非読んでほしくない。
とはいえ、そのくらい憔悴しながらも書いたからこそ一日で4万字程度書けたのだなと思う。
だってちゃんと書いたなら、こんな文字数は書けないんじゃないかなって思うんだ。
だから多分、人に言わせるなら誠実ではないのかもしれない。
大事にしてない、ちゃんと考えていない、気持ちを込めていない、小説を舐めていると言われたら終わり。
正直、一々そんな事考えて書いていないのだけれど、読む人がいる以上、そう言われたら終わりだよなって思う。
ただ一応、振り返りだけはしようと思って書いた。
構想も無く勢いだって三日か四日くらいで書いた話だったけれど、自分はこの子達の事が好きだし。
とりあえず振り返った時には、この程度のプロットをこじつけと言っちゃなんだけど、提示出来るし。反省点や拘り、テーマくらいはあったよっていう話。
書いたっきりで完結するまでの間しか読み直しもしていないし、それからはもうただその時の記憶でしか無いけれど、一応振り返るとこんな感じで事後にプロットの書き起こしが出来るなら、まぁ良かったかな。
正直、この近況ノートの方が本編よりちゃんとした話だと思う。