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『来んね』のこと。落ちたこと。遠賀川の冷水について

まず結果から手短に言っておくと、小学館の『GOAT』でやってた「GO-mono短編文学賞」、三次選考で落ちました。最終選考の五作には残れませんでした。落選です。選考委員のポッドキャスト講評(『本の窓』ってやつです)を聴いたら、前編の30番目で僕の『来んね』が呼ばれて、担当の編集者さんが「めちゃ怖」「服が肌にべったり張り付く嫌な感じの積み上げがすっごい上手い」「机の上の勉強じゃ書けない」みたいなことを言ってくれてて、おいおいマジかよそこまで言ってくれるなら最終に残してくれよ! と机をドンと叩きそうになったんだけど、まあ落ちたものは落ちたのだ。選考ってのはそういうものだし、僕がいくら愚痴をこぼしたところで川の水は一ミリも温かくならない。
で、その落選した短編『来んね』を、今回初めてカクヨムに公開しました。
内容は、五十年前に故郷の筑豊で何かから逃げた男が、ずっと逃げ続けて一人で怯えて暮らしてたら、とあるの因縁を引きずった男が長ドスぶら下げて本当にやってくる、という話です。こっちは散弾銃を持ってる。相手は刃物を持ってる。じゃあ撃ち合いのドンパチになるのかっていうと、全然そうはならなくて、引き金を引けないまま、ただじわじわと嫌な沈黙が続いて、最終的には真冬の遠賀川の濁流に足から入っていくことになる。
この小説、以前monogataryに出してた頃は、まあ見事なくらい誰からも反応がなかった。PVも回らないしコメントもつかない。スマホの画面をスクロールする親指を止めるような派手なチート能力もなければ、スカッとする復讐劇もないから当然なんだけど、それにしてもここまで無視されるかってくらい綺麗にスルーされて、正直「僕が書いてるこれ、ただの陰湿なゴミなんじゃないか?」って真夜中に冷めた茶をすすりながら本気で凹んだりもした。
でもさ、人間って本当に追い詰められたとき、映画みたいにカッコいい台詞を叫んだり、華麗に銃をブッ放したりできるんだろうか? できないと思うんだよね。散弾銃の重さで腕の筋肉がプルプル震えて、脂汗が目に入って沁みて、濡れたズボンが太ももに冷たく張り付いて、ただ「うわ、最悪だ、本当に来ちゃったよ」って胃の腑が縮み上がるだけなんじゃないのか。
僕はそういう、服の生乾きの匂いとか、真冬の川底の泥に長靴が持っていかれそうになる感触とか、そういう逃げ場のない嫌な皮膚感覚のほうを信じたいと思って書いた。格好いい解決なんて最初からない。引き金も引けないし、過去の罪も許されない。ただ冷たい水に足を浸すことしかできない。
読んでほしいです。読んだあと、たぶん喉の奥に苦い泥水の後味が残ると思うし、爽快感なんて一ミリもないけれど、それでも「あいつ時効や」っていうあの台詞の気味の悪さだけは、何日か頭の隅にへばりついて離れなくなるはずなので。
読んだら、一言でもいいから足跡を残していってください。
爪先が冷えてきたので、靴下履き替えてきます。



https://kakuyomu.jp/works/2912051603816254674/episodes/2912051603816271370

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