作中で何度か出てくる女神イシス。現実世界のエジプト神話に登場する神様ですが、このエジプト神話は西洋魔術と深い関係があります。
一つには、過去儀式魔術の基本を整備したと言われている大魔術師が、エジプトに傾倒していたエジプトかぶれだったことが挙げられます。またもう一つには、今申し上げたことと関係しているのですが、エジプトの神話が隠喩を多用したエジプト人の世界観・死生観を含む哲学を表すものだったこと、魔術的・呪術的な儀式を多く含んでいるものであったことです。
まとめると、エジプト神話は中二病患者にジャストミートする内容だったわけです。なお、ツタンカーメン発掘による空前の世界的エジプトブームは1920年代に入ってからであり、西洋魔術結社の黎明期である19世紀末から20世紀初頭にかけてとは、微妙にズレています。
イシスについてですが、彼女の名前はギリシャ語での表記に基づいています。これは紀元前の昔から長いこと、エジプトのことを西洋に知らせる窓口となっていたのはギリシャだったからです。アレクサンドロス大王によるエジプト征服からプトレマイオス朝の建国に至るまで、エジプトに対するギリシャの影響は甚大です。
イシスは現地エジプトでは、「アセト」と呼ばれていました。実際には異常に長い古代エジプトの歴史の中で、その名前の発音も徐々に変化していったようですが。ちなみに我々日本人が知っているエジプトの神々や王の名前も、ほとんどがこのギリシャ語表記での発音になります。先程名前を挙げたツタンカーメンもそうで、「トート・アンク・アメン(トート神がアメン神に生命を与える)」というギリシャ名を更に英語で発音したものになります。
エジプト神話については他にも語りたいことがたくさんあるので、また別の機会を設けたいですね。