年末は、ご近所さんからお野菜を頂いたりお返ししたり、掃除や料理、正月の準備に追われたりと慌ただしく過ぎています。皆様はいかがお過ごしでしょうか。ちなみに私は、煮物の蓮根を喉に詰まらせて右往左往してしまいました。食べる時はよく噛んで、決して慌てないようお気をつけください。
いろいろあった一年でした。一つあげるとすれば、カクヨム甲子園2021のロングストーリー部門で大賞を受賞された占冠愁様が『RUST RUN!!!』で書籍デビューを果たされたことが、何より喜ばしい出来事でした。
上半期と比べると、内容の濃い下半期でした。
特にU-24杯の選考委員は、大変ではありましたが非常に楽しい経験となりました。今年のことは今年のうちに、と言いますので、書ける範囲で振り返っておこうと思います。
運営との具体的なやり取りこそ伏せますが、書きそびれたことといえば、私自身のネットとの距離感についてです。実を言うと私はネットが苦手でメールチェックも怠りがちです。以前、トリのグッズが当たったのにメールに気づかずもらい損ねたことがありました。メールを見逃して貰い損ねたことがありました。以来「一ヶ月に一度はチェックしよう」と一応、心掛けていたのです。
今回の選考委員の打診も、たまたまカタログギフトを注文した際の確認メールを見ようとして偶然カクヨムからの連絡に気づけました。驚いて開いてみると、返信の締め切りはなんと翌日。メール自体は一週間も前に届いていました。日々の感想書きに没頭するあまり、メールチェックをすっかり忘れていたのです。
とにかく小一時間ぐらい、どうしたらいいのかしらんと右往左往しましたが、不思議と断る選択肢は浮かびませんでした。
引き受ける返事をした後、ふと気づいたことがありました。カクヨム甲子園の感想書きと、U-24杯の選考時期が重なっていたのです。スケジュール次第では物理的に両立が難しい。その場合、長年続けてきた感想書きを諦める覚悟でいました。
そんなに選考をやりたかったのかと問われると、少し違います。
第一回のとき、現役高校生や、かつて高校生だった人たちが参加されているのを見て、非常に興味を持ちました。
私もカクヨム甲子園には心残りがあります。
毎年すばらしい書き手と出会い、すれ違うような交流をする中で、本当に高校生なのかと目を見張る作品を書かれる子に出会いました。その作品が賞を取り、自分のことのように喜びました。翌年は逃して卒業されました。私も作者と同じように落ち込み、やりきれなさを抱えてきました。
その子だけに限らず、SNSや近況ノートを覗けば「もう一度やり直したい」と、わだかまりを抱えている子がいるのを知ることができます。
場所は違えど、そのやりきれない思いを創作意欲に変えて、立ち止まっている状態から一歩前へ進むきっかけにしてほしい。それが、私が選考を引き受けた根幹にあった理由です。私が活字を再び読めるようになったのも、カクヨム甲子園の作品たちのおかげです。私なりのお返しでもありました。
やるからには選考基準を整え、書籍化したいと思えるかの視点も自分で設けました。
カクヨム甲子園の受賞作が書籍化されるわけではありません。書籍化するなら校正を入れないといけないし、アンソロジー本として出したとしてもイラストレーターと受賞者数で印税を割るから、一人がもらえる金額は少ない。二千を超える応募作品があっても参加者は五百人くらいと推測、関係者しか買わないだろうから多くは刷れない。利益を出そうとすると単価を上げるしかないが高い本を十代が買うとは思えない。毎年カクヨム甲子園は開催されているので重版も望めない。……などなど考えていくと、利益が出ず赤字になるから現実的に難しい。
同じくU-24杯も、公式とはいえ自主企画のコンテスト。受賞すれば創作意欲は増すでしょうが、本が出て作家のスタートラインに立てるわけではないのです。
それでも、創作を志す人たちの背中を押すなら、作者に敬意を払い、真剣に選ばなければならない。そう悩み抜いて選考に臨みました。今回の経験から生まれた感情を、これからの創作の糧にしていってほしいと願っています。
また、運営との打ち合わせで気付きがありました。カクヨム甲子園の文字数設定(ショート・ロング)と、U-24杯の二万字以上の意図が、自分の中で一本の線に繋がったのです。この企画を考えた運営はすごいと思いました。
ショート(四千〜五千字)で興味を引き、ロング(二万字まで)で読者を導き、さらに二万字以上の長編へステップアップしていく。創作の基礎が、公募形式を通じて自然に学べるよう設計されていることに深く感服しました。
頭ではわかっていたのですが、選考側として向き合ったからこそ気づけた視点です。ただ、知ったことで、これからの感想をどう書いていくべきか、少し迷いが生じています。
先日、カクヨム甲子園に参加された子から、自分ではいいものが書けたと思ったのに中間選考止まりだったのはどうしてなのかわからないと相談を受けました。以前なら「どうしてだろうね」と一緒になって考えたのですが、選考委員を務めた今は、もっと役立つ答えを返さなければと必死に読み込み、アドバイスを綴りましたが、私の書きたい感想はどういうものかはまだ答えが出ていません。
今後の感想をどうするのかは来年へ持ち越したいと思います。
皆様、良いお年をお過ごしください。