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滋賀県探訪記


 諸君は、琵琶――と失礼。滋賀県をご存じだろうか?

 滋賀というと、まず聞かれるのが「どの滋賀?」という問いだ。というのも、滋賀は一見ひとまとまりに見えて、実際は琵琶湖を境に文化圏が割れている。

 間にある湖があまりにも大きいため、「同じ県なのに気質が違う」というより、最初から別々のエリアが湖の周囲に集められた、という感覚に近い。なので、湖北(長浜・高島)の人に湖南(大津・草津)の話を振っても、話が噛み合わないことがある。

 だが一方で、県民が大阪に対して魂レベルで敵対意識を持っているのかは……定かではないものの、よく「琵琶湖の水止めたろか」と強く怒られる。Wikiにも載っているレベルの話だが、事実である。


 さて、滋賀県とは、殆どが琵琶湖である。湖国とも呼ばれている。日本最大の面積と貯水量を誇るこの湖は、ともすれば海にも見える。取りあえず「海に来たよ」と言ってみても、たぶん騙せる。それくらいに広大で雄大な湖だ。

 これだけ大きいのに、当たり前ながら塩の香りはしない。波もあるのに、である。少し脳がバグりそうになる。
 実は、この琵琶湖、凍る。湖全体が凍結することは、氷河期でも到来しない限り心配ないと思うが、一部の湖岸では厳冬期に「しぶき氷」と呼ばれる幻想的な光景を我々に届けてくれる。これは、福島県の猪苗代湖でも知られている現象である。
 余談ではあるが、賤ヶ岳を一つ隔てた琵琶湖の向こうにある余呉湖では、冬季にワカサギ釣りも楽しめる。ここは「小さな琵琶湖」とも呼ばれており、喧騒から離れて、のんびり過ごせる場所だ。

 滋賀は湖だけでなく、山もある。最たるものは伊吹山であろう。日本百名山の一つに数えられ、薬草山とも呼ばれ、山岳信仰の対象でもある。伊吹おろしと呼ばれるすさまじい寒風は、三重にも届く。個人的には、冬山初心者にも勧められる、非常に良い山だ。
 ある山ヤは「伊吹は冬に限る」と言うが、その通りだと思う。夏は行かない方がいい。道中は森林限界かと疑うほど木陰がなく、高山ではないため、暑すぎて本当に危ない。からからに干からびて死にそうになる。3L持っていっても足りなかったくらいだ。
 だが、シモツケソウに出会うには、7月から8月しか方法がない。あの桃色の絨毯は、きっと目を奪われる。だから元も子もない話だが、夏場はドライブウェイを使う方が良い。それでも、暑いが。
 他にも、個人的には近江富士が好きだ。あのとんがったフォルムが、どこか可愛らしい。

 文化面でいえば、琵琶湖を介して京都や大阪と行き来してきた歴史の通り、町並みには往時を感じさせるものも多い。彦根、近江八幡などは、その名残が色濃く残っている。安土は、まあ、うん。春には、優雅に舟で八幡堀めぐりや水郷めぐりをするのを勧めたい。

 実は、神社仏閣も多い。京都よりも多いという噂もある。その背景には、信仰と物流と防衛を担った裏方みたいな立ち位置だったのもあるとかなんとか。
 あの「ちはやふる」でお馴染みの近江神宮も、大津の付近にある。混同されがちだが、日牟禮八幡宮は近江八幡にあり、琵琶湖を挟んで反対側だ。白鬚神社なども、SNSで話題になっただろうか。個人的には満月寺の浮御堂をおすすめしたい。

 かの有名な延暦寺も滋賀である。なのに、そこにある比叡山は京都の山なのだ。よくわからないが、そうなのだ。紫式部ゆかりの石山寺も、実は京都ではなく滋賀である。

 あとは、日本六古窯の一つ、信楽《しがらき》焼でも有名だろう。あの「たぬき」である。奴は甲賀市出身だ。信楽高原鉄道でも知られている。

 食べ物で言えば、やはり近江牛だろうか。日本三大和牛の一つである。私はこれが一番美味い牛肉だと自負している。脂と赤身のバランスが、実に凄まじい。
 他にも、びわこ食堂のとりやさいみそをおすすめしたい。断じて、石川のそれではない。平和堂かフレンドマートに行けば、プラ樽で置いてあるので、ぜひ買ってみてほしい。本当に美味しい。
 日本三大バームクーヘンの一つとされるCLUB HARIEだが、こちらは買わなくてもいいと思っている。土産にしては高いし、かといって別段、感動するほど美味しいわけでもない。

 鮒寿司も避けては通れないだろう。初心者には厳しいが、熟成の深さは本物だ。「臭い」で切る人と、「旨味」で語れる人を分ける試金石でもある。あ、私はいいです。
 ワカサギ、モロコ、ゴリといった「琵琶湖とは淡水文化だ」を食で理解する一手でもあるかもしれない。ゴリの唐揚げは本当に美味しい。

 温泉についても少し触れたいのだが、正直なところ滋賀はあまり恵まれていない。念のため言っておくと、草津温泉は別の県である。
 いわゆる「海が見える温泉付きオーシャンビュー」といった類のものにならないのは、この土地の文化圏に理由があると考えている。
 というのも、琵琶湖は滋賀にとって日常だからだ。どこへ行っても滋賀=琵琶湖という関係から逃れられない。さらに、琵琶湖があまりにも大きいため、宿場や温泉地も必然的に点在することになる。

 あえて挙げるなら「おごと温泉」だろうか。かつては雄琴と書かれていたが、近年はひらがな表記が用いられている。湯そのものは非常に良く、湯治場としての質は高い。しかし歴史的経緯から、歓楽街の側面が今なお色濃く残っている。「どこ行ってきた?」→「おごと」→一瞬の間、という流れは珍しくない。温泉に行ってきた事実は確かなのに、なぜか言い切りにくい。これもまた、否定しがたい現実である。
 ファミリー向けを謳ってはいるものの、これがなかなか難しい。大阪で言えば、かつての名を完全には振り切れない場所――そんな感覚に近い。

 滋賀はその立地ゆえに関西圏の裏方に回りがちだが、それでも私は、琵琶一をするし、近江八景もしっかりめぐるくらいには滋賀が好きです。


 恒例のお土産である。
 滋賀の食は総じてそうですが、声が小さい代わりに、芯が太い。


🔳 お菓子類

・三井寺力餅/本家 力軒(大津)
 ▻できれば、境内で買おう。三井寺力餅本家(浜大津駅前)では少し違う。
・萩の玉川/うばがもちや(草津)
 ▻今は昔 萩の玉川。芳醇なバターの香りをお楽しみください。
・どらやき近江富士/御菓子司梅元老舗(野洲)
 ▻日本一うまいどら焼き。特に皮が美味い。人生で一度は食べて欲しい。
・アイスクリーム/湖華舞(竜王)
 ▻ここの牛乳はうますぎて飛ぶ。無添加なので幼児も飲めます。


🔳 変わり種

・長浜浪漫ビール/長浜浪漫ビール株式会社(長浜)
 ▻地ビール。まあまあ良い値段するが、味もまあまあ。
・赤こんにゃく(近江八幡)
 ▻真っ赤なこんにゃく。インパクト大
・サラダパン/つるやパン本店(木之本)
 ▻定番ではあるが、面白い商品だと思う。

🔳 飯系

・とりやさいみそ/びわこ食堂(長浜)
 ▻ラーメンにしても美味しい。常駐したいくらい。
・松の司/松瀬酒造株式会社(竜王)
 ▻日本酒と言えばこれ。
・近江ちゃんぽん亭
 ▻ちゃんぽんといえば長崎が有名だが、近江も有名だったりする。

2件のコメント

  • 大阪人に「琵琶湖の縁(ふち)」と言われる滋賀ですねw
    子供の頃の夏には海?水浴に行ってたので馴染み深いです。

    近江ちゃんぽん美味しいですよねえ。
    仕事で一時彦根辺りに行ってたので食べた事ありますが、長崎より好みでした。

    あと彦根で驚いたのはカロムですね。
    ローカルボードゲームで有名ですが、店先にあって感動しましたっけ。置く場所なくて買えませんでしたけどw

    いまなら滋賀の日本酒も気になりますねえ。
  • 梶野カメムシさま

    京都でなく何故か大阪なんですよね。大阪は大阪で滋賀をどこか軽視している感じで。歴史上、間の京都が重要でしたから仕方ないのかもしれません。

    滋賀は大人になって歴史背景なんかを知ってから行った方がより面白いと感じます。個人的に神社仏閣が大好きなので余計にそう思うのかもしれませんがw

    >近江ちゃんぽん
    美味しいですよね。お酒の後に沁みます(腹を見ながら
    長崎が有名ではありますが、近江ももっとアピールしてもいいのにとも思うと同時にそこが滋賀らしいとも感じます。

    >カロム
    彦根では「一家に一台」あるとか。今調べたらボードゲームを超えてスーパーカロムという体験型に変わっていました。すごい。

    >日本酒
    酒を語り出すと止まらないので、アレですが……w
    お土産で外しにくいのが日本酒とクラフトビールだと自負しております。
    松の司はシードルのような味わいでお勧めです。他にも、笑四季も味わいが面白かったです。是非に。

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