ありがとうございます。五句とも、映像性と語彙のセンスが非常に豊かで、詩的野心を感じます。全体としては「言葉の密度は高いが、俳句としての切れ・季語の整理・文法の安定にやや課題あり」という印象です。
以下、一句ずつ批評・採点・添削案を示します。
①
冬の朝 百舌贄薄氷 酷く見え
🔎批評
「百舌贄(もずにえ)」と「薄氷」という二つの強いイメージがぶつかり合い、冬の残酷さがよく出ています。
ただし、
「酷く見え」が説明的で、感情を直接言い切ってしまっている点が惜しい。
名詞が連なり、リズムがやや硬い。
✅添削例
冬の朝 百舌贄に薄氷張る
百舌贄や 薄氷きらと 冬の朝
百舌贄に 薄氷の影 冬の朝
※「酷い」という評価を読者に委ねる方向にすると、俳句らしい余韻が出ます。
🎯採点:78点
②
寒き朝 JKマフラー アラベスク
🔎批評
「JK」「アラベスク」という現代語と美術語の取り合わせが非常に面白いです。
マフラーの模様が「アラベスク」に見えるという発見は詩的。
ただし、「寒き朝」と内容が少し重複し、説明感があります。
✅添削例
JKの マフラーアラベスク 冬の朝
マフラーの アラベスク揺れ JK行く
JKゆく アラベスクの冬マフラー
季語は「冬」「寒」どちらか一つで十分です。
🎯採点:85点
③
バスギリや 軽いスニーカー 疾走る冬
🔎批評
「バスギリ(=バスぎりぎりに駆け込む)」という口語的スピード感が魅力的。
「軽いスニーカー」が身体感覚をよく伝えています。
ただ、「疾走る冬」がやや抽象的で、映像がぼやけます。
✅添削例
バスギリや 軽きスニーカー 冬を蹴る
バスギリや スニーカー鳴る 冬の舗道
バスギリの 息白くして スニーカー
動作や感覚を具体化すると、より俳句的になります。
🎯採点:82点
④
銀縞の 美猫恍惚夜もすがら
🔎批評
「銀縞」「美猫」「恍惚」と、官能的で美しい語彙が印象的です。
「夜もすがら」は季語ではありませんが、時間の広がりを感じさせます。
やや説明的で、情緒が言葉に寄りかかりすぎている印象もあります。
✅添削例
銀縞の 猫の恍惚 冬の灯
銀縞の 猫まどろめり 夜深し
銀縞や 猫の瞳の 夜長かな
「恍惚」を映像で見せる方向がおすすめです。
🎯採点:80点
⑤
ストーブの火焔幻想美を醸す
🔎批評
意図はよく分かりますが、「幻想美を醸す」が抽象語・説明語になり、俳句としてはやや散文的です。
「火焔」という漢語も少し硬く感じます。
✅添削例
ストーブの 炎ゆらぎて 影あそぶ
ストーブの 火に壁ゆれる 夜長かな
ストーブや 炎に生まる 幻の影
「幻想」を言わずに、現象で見せるのが理想です。
🎯採点:72点
🏆総合評価
総合点:82点 / 100点
◎長所
語彙のセンスが豊か(百舌贄・銀縞・アラベスクなど)
観察眼が鋭く、映像が浮かぶ
現代性と詩性のバランスが面白い
△今後の伸びしろ
「評価語・抽象語」を減らし、映像と動作で語る
季語はできるだけ一つに整理
文法の切れ・リズムを意識する(助詞「や」「に」「の」の整理)
全体として、すでに中級以上の完成度があります。
推敲次第で、かなり強い句になりますよ。
もしよろしければ、特に気に入っている一句を教えていただければ、そこをさらに深掘り添削もできます。
ありがとうございます。
前回同様、全体的に「漢語調の格調」「自然観照の確かさ」「季語の選択の的確さ」が際立っています。写生に寄り過ぎず、やや観念を含ませた詠みぶりは、作者の持ち味としてすでに安定していますね。
一句ずつ講評と採点を行います。
① 大寒や 空の光も清澄なり
評価:92点
良い点
季語「大寒」がもつ張りつめた空気感と、「空の光も清澄」という措辞が非常によく響き合っています。
「も」を入れることで、地上だけでなく空までも浄化された感覚が自然に伝わります。
音調も安定し、切れも明確。
気になる点
「清澄なり」はやや説明的。俳句としては「清澄」が感じ取れる映像表現に寄せる余地があります。
添削例(参考)
大寒や 空のひかりの澄みわたる
② 拭き清め明窓浄机 日脚伸ぶ
評価:88点
良い点
「拭き清め」「明窓浄机」と清浄のイメージが連鎖し、精神性の高い一句。
季語「日脚伸ぶ」が、清めの後の希望感とよく調和しています。
気になる点
情報量が多く、やや漢語が重なって硬く感じられます。
「明窓浄机」が四字熟語的で、説明の匂いが出やすい。
添削例
拭き清め 窓に机に 日脚伸ぶ
(具体物に戻すことで映像が立ちます)
③ 里山に鹿の母子の蛮美かな
評価:85点
良い点
「鹿の母子」という取り合わせは情感があり、自然の生命感がよく出ています。
「蛮美」という語の選択は独創的で、野生の美を強く印象づけます。
気になる点
「蛮美」はやや抽象度が高く、読者によってはイメージが掴みにくい。
具体的な動作・姿がもう一段あると、説得力が増します。
添削例
里山に 鹿の母子の息白し
など、具体描写に振る方法もあります。
④ 冬陽浴び 大魚の鱗 遠甍
評価:90点
良い点
「冬陽」「大魚の鱗」「遠甍」という三層構造の景が美しく、奥行きがあります。
光の反射を軸に、自然と人里がつながる構図が巧みです。
気になる点
中七「大魚の鱗」がやや説明的で、切れ味をもう少し強められそうです。
添削例
冬陽浴び 大魚の鱗や 遠甍
⑤ 峻厳に針葉樹林 山眠る
評価:93点
良い点
季語「山眠る」を「峻厳」「針葉樹林」で支える構図が非常に力強い。
冬山の静謐と緊張感が同時に立ち上がります。
語彙の選択が的確で、格調が高い。
気になる点
語調がやや漢語寄りで、硬質すぎると感じる読者もいるかもしれません(作風としては長所)。
添削例(ほぼ完成形)
峻厳や 針葉樹林 山眠る
■ 総合評価
平均点:約90点
技術的安定度:★★★★★
季語の扱い:★★★★★
映像性:★★★★☆
独創性:★★★★☆
余情・余白:★★★★☆
すでに「結社誌投稿レベル」「同人誌でも十分通用する完成度」です。
今後さらに伸ばすとすれば、
✔ 抽象語(清澄・蛮美・峻厳)を、もう一段だけ具体像へ落とす工夫
✔ 漢語の密度を意識的に緩める句も試す
✔ 動き・一瞬の変化を一点だけ入れる
このあたりを意識されると、句に“呼吸”が生まれます。
今回の五句、とても質が高く、読み応えがありました。
またぜひお送りください。