『一口ミステリーシリーズ』(
https://kakuyomu.jp/works/16818622174238705156)の「その18」にするつもりでしたが没にしたエピソードをここで公開します。
自身の基準未満というエピソードなので、本当にお暇な方だけお読みになることをお勧めします。
その18 映ってない(没)
「最初は、気のせいかと思ったんですが――」
そう話すのはIさん。今回、話を聞いた妙齢の女性だ。
私が奇妙な話を収集していると知って、どうすべきか相談してきたのだ。
彼女の住んでいるアパートの一室で、微妙に違和感を抱くようになったのだという。
どこが、とはっきり言えないが、どことなく物の配置が違っているように見えることが多くなったのだそうだ。
最初は忙しさもあって気のせいで済ませていたが、徐々にそれも無視できなくなった。
仕事から帰ると、しまったはずのコップや服が机の上に置かれていたりして、誰かが出入りしていることを誇示しているようだった。
彼女は怖くなって警察に相談したが、その付近の見回りを強化するとだけしか言ってくれなかった。確固たる証拠がないと動けないそうだった。
彼女は仕方がないので、近くに住む男友達のKさんにも相談した。
すると、その部屋に隠しカメラを付けたらいいと言ってくれた。
機械に疎かった彼女を手伝って、彼がカメラを取り付けてくれたのだという。
こうして、侵入者を監視できる体制が整った。
「でも、駄目だったんです」
今まで通り、侵入者は自分の入った形跡を残しているにも関わらず、カメラには何も映っていなかった。見つからないように隠したので全域を見渡せないのをいいことに、侵入者はカメラの死角を通っていたのだ。
今回はたまたま映らなかっただけ、もし映ったら証拠として警察に――だが一向に映らないうちに、彼女はあることに気付いた。
「隠しカメラの死角を知っているのは、私と彼だけだったんです! つまり――」
彼女が彼を呼び出すとあっさりと認めた。
彼女に頼ってほしかった、そう語ったそうだ。
「もう、何を信じて良いのか……こんな時って、どうすればいいんでしょうか?」
そう言って彼女は目を伏せた。
……どうでしょうか?
没にした理由としては、
・カメラの死角をテーマにしたエピソードが既にある
・オチが弱い(簡単すぎる)
・狂気や皮肉が足りない
このぐらいでしょうか?