昨年からずっと話題の、宮島未奈さんの「成瀬」シリーズ、「成瀬は天下を取りにいく」、「成瀬は信じた道をいく」、この2作品が、私の三部作を書くきっかけでした。
はじめは(ふとっぱらなことに)各巻とも、1話をWebで無料で読めるというので、読んでみたのです。「天下」のほうの、あの有名な「西武大津店」の話、それを読んで衝撃を受けました。主人公の「成瀬あかり」、まだ中学生なのにその破天荒さにびっくりしました。そしてそのキャラクターにすっかりほれ込みました。
そして、「信じた」の方も、1話無料公開で、大学受験のお話しを読みました。これも、意味不明な展開?で、すっかり引き込まれました。その時は、単に、「ああ、こんな面白い話を書く人がいるんだ、すごいな」と思っただけだったのですが、しばらくして、「こんな話、こんなキャラを自分でも書けたらいいな」と思うようになりました。
私は、これまで文芸的な文章を書いたことは一回もありませんでした。なので、書けたらいいな、というのは単なる淡い感想だったのです。ところが、何日かすると、私の頭に、大津市の中学生であるヨウスケという少年が降りてきて、京都のアニメショップに行ったり、疏水の際を歩いたりし始めたのです。
すると、その後から、彼の両親、そして姉のアズサも次々と現れ、私の中でいろいろな会話や日常の振る舞いを始めました。それを見て(感じて)私は、「あ、これは書き留めないといけない」と、あわてて自分のパソコンを開いて、テキストエディターで筆記をし始めました。
彼らは、私がしゃべったこともない「滋賀弁」で延々と会話を続け、自分の進路や人生まで決め始めます。ついに、大津出身の中学生の弟と高校生の姉の、日常を描いた成長記録ができました。
第2部は、その姉弟に、同郷のアヤミという、一種の天才というか、天然というか、ちょっと変わった女性が現れて、アズサの仕事を通じて、あっという間に友達になっていきます。そして第3部では、この三人の関係がますます深まります。
自分でも驚いたのですが、各部とも5万字程度の作品をそれぞれ5日ぐらいで書きました。なぜこんなにはかどったのか、自分でも分かりません。やはり、登場人物が勝手に頭の中で動き回ってくれたからだと思います。
執筆中は、実は、宮島未奈さんの「成瀬」シリーズは、1話ずつ読んだだけで、残りのエピソードはあえて読まずにいました。自分の作品を全部書き上げてから、単行本を購入して通読すると、安心することに、私の作品とは全く異なるお話し・作風でした。それでも、この作品を書くきっかけを与えてくれた、宮島さんと主人公の成瀬あかりさんへの敬意として、各部の中で、一瞬、成瀬さんに触れたりしています。ちなみに、登場人物のアヤミは、はじめ、成瀬あかりさんを模したつもりだったのですが、出来上がったらこれも全く違うキャラになりました。
こうやって書き上げた作品、こんな出来上がりを白状してしまったので、目の肥えた皆様には通用しない粗削りなものかもしれません(何しろ、プロットとか推敲とかもほぼ全くしていない、ぶっつけ書き上げみたいなものですので)。それでも、この三部作、自分では本当に気に入って、何十回も読んでしまいました。
もし、通読して、楽しんでくださる方が一人でもいたら、書いた甲斐があったように感じます。ぶしつけですが、よろしくお願いできれば幸いです。