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第十章第2話あらすじ
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8月6日(木)午後5時、ジョン・スミス邸の離れで、ルイスたちは黒曜会をおびき出すための囮を用意し終える。表向きは密売組織と同じ商売を始めるように見せかけ、相手の仕入先と流通経路を探る作戦である。
作業のあと、ルイスはメアリーを連れて|漢口《ハンコウ》のルイス邸へ戻る。途中、以前キャサリン・スミスが車を停めた|長江《チャンジャン》の岸辺に寄り、メアリーと親しくなる。メアリーはルイスに強く惹かれ、以後は彼の命令に忠実に従うようになる。
夜が近づくころ、ルイスはルイス邸の居室でメアリーから黒曜会「Black Beryl Society」の話を聞く。黒曜会は、イギリス租界の上流社会に食い込み、租界名士文化協会の奥様方を相手にコカインを売っている組織だった。
メアリーによれば、黒曜会の会長はアレクサンダー・ウィルソン(38歳)、その妻はマーガレット・ウィルソン(35歳)である。会長夫妻は租界社会の著名人であり、租界名士文化協会にも深く関わっている。また、営業部長がコカインの販売網と顧客管理を担っているが、仕入先や動きは厳重に隠されていた。
ルイスは、営業部長の情報をつかむには、まず会長夫人マーガレットへ近づくのがよいと考える。そこで、租界名士文化協会の会長キャサリン・スミスに電話し、マーガレットの人柄や趣味を尋ねる。キャサリンは、マーガレットが美術と19世紀英国文学に強い関心を持つ美しい貴婦人だと教える。
午後8時、ルイスはイギリス租界の画廊へ向かう。そこには、ヨハネス・フェルメール、サルバドール・ダリ、エドヴァルド・ムンクら近代画家の初期作品が展示されていた。画廊はパーティ帰りの紳士淑女でにぎわい、租界上流層の華やかな社交場になっていた。
ルイスはそこで、1人で絵を眺めている美しい貴婦人と出会う。彼女こそマーガレット・ウィルソンだったが、ルイスはその時点では気づかない。2人は美術の話から親しくなり、近くのカフェで会話を続けることになる。
カフェでは、2人は19世紀の英国文学について語り合う。ジェーン・オースチンの『高慢と偏見』、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』、シャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』などの話で盛り上がる。特に『高慢と偏見』をめぐるルイスの語りに、マーガレットは強く惹かれる。
マーガレットは、翌日の新進芸術家展覧会にルイスを誘う。そのころにはルイスも彼女の美しさと知性に心を奪われ、黒曜会会長の妻だという目的を一時忘れてしまう。だが、その計算のない好意こそが、かえってマーガレットの心に届く。
ルイスとマーガレットは画廊を出た後、裏通りで別れを惜しむ。マーガレットはルイスに家まで送られることを断り、通りでタクシーを拾って帰る。
その様子を見ていたのが、ヘクターと|張美麗《チャン・メイリ》だった。2人は京劇と漢劇の合同公演を楽しんだ帰りで、すでに親しい仲になっていた。ヘクターはマーガレットが乗ったタクシーを追い、|後花樓《ホウホワロウ》の|熊家巷口《シオンジアシアンコウ》にあるアレクサンダー・ウィルソン邸へたどり着く。そこは黒曜会会長邸だった。
ヘクターは近くで見張りを続ける。夜10時、ウィルソン邸から黒塗りの車が出る。ヘクターはその車を追跡し、長江と漢江が交わる地点で追い詰めるが、相手は機関銃で発砲してくる。ヘクターは危うく命を落としかけるが、無理をせずいったん退く。
その後、ヘクターは現場へ戻り、地面に落ちていた古びた写真を見つける。写真には男と子どもが写っており、裏には住所が書かれていた。ヘクターはその住所へ向かい、写真の男を見つける。
その男こそ、ルイスが探していた黒曜会の営業部長だった。元貿易商で、コカインの販売網と顧客管理を担う重要人物である。男は逃げようとするが、ヘクターに捕らえられる。ヘクターはイギリス租界の副署長としての権限を使い、営業部長とその妻を拘束する。
第十章第2話は、ルイスがマーガレット・ウィルソンへ接近し、同時にヘクターが黒曜会の営業部長を捕らえる回となる。社交、文学、美術、尾行、銃撃が重なり、黒曜会の奥へ続く扉がついに開き始める。
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挿絵は、『黄金と血のニューヨーク ― マフィアの帝国』第五、六、七、八、九章地図です。
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