容易く潜り抜けることができるもの。 それは「境界線」だ。
あちら側とこちら側。 実話と怪異。 昨日と今日。
私はいつも、その境界線の縁を、爪先立ちで歩いている。
どちらかに倒れ込むのではなく、その危うい線の細さを足の裏で感じていたいのだ。
西の空が、燃えるような赤から、湿った紫へ、そしてすべてを飲み込む黒へと変色していくのを、ただじっと眺めること。 それが私の、何物にも代えがたい「嗜好」である。
いま放った物語も、誰かの境界線を揺らしているだろうか。 夜は始まったばかり。
皆さんも、どうぞ良い闇を。