https://kakuyomu.jp/works/2912051601662825718/episodes/2912051601662961660
真夏の、けだるい夜だった。
連日の残業で疲れた身体を愛車に滑り込ませると、銀太郎はひと息ついた。さあ、帰ろう。
駐車場を抜け、見慣れた道をゆっくり流してゆく。焼き鳥屋、居酒屋、やけに明るいコンビニからは若いカップルが出てくる。昼間とは違う表情の街が、今夜も静かに更けていく。なぜこんな場所にあるのか聞いてみたくなるような小さなスナックからは、間延びした歌声が漏れ聞こえてきそうだ。
占いなど信じないが、途中の信号が青ばかり続くと、何か良いことがありそうな気がしてくる。今日はツイてる。銀太郎がにやりとした瞬間――前方の信号が黄色から赤へ。チッ。
片側二車線の道、左隣に赤い小型車が止まった。何気なく目をやると、程よい茶色の髪が見えた。「ほほぅ、後ろ姿は合格」心の中でつぶやきながら、スマホでいつものプレイリストを流す。さっきまでのうざいラジオが消えて、聴き慣れた曲に・・・・