ある日私は会社から密命を受けた。
「これからはeスポーツの時代だ。お前はゲームが好きだな。やりなさい」
と。
こうして私はAPEXを手に入れた。
ゲームといえばマリオとかドラクエとか、そんなのしか知らないし。
ゲーセン世代だけど、格ゲーは弱すぎてずっとメタスラばっかやってたし。
案の定、私のクリプトは1キルも取ることなく、日々箱詰めされていった。
「これ、面白いのか?」
人の好きなものに水を差すつもりはない。
私の腕では面白いと思える域まで進むことができなかっただけだ。
「私には合わない」「私向けのサービスではない」と割り切る。
それが大人というものだ。
そもそも、おじさんの目には120fpsだの144fpsだの、何も違いが分からない。
24fpsもあれば充分じゃないのか。映画とかはそのくらいと聞いたぞ。
餃子のごとく戦いについていけなくなった私は、
プレイヤーとしてゲームに参加することから離れ、環境整備や動画編集に勤しんだ。
しかし、魅力が分からない私に魅力を伝える動画など作れるはずもない。
せめて知ってるゲームであれば……
FPSは酔うし、何やってるかまったく分からないし。
同じ撃ち合うなら、どうせならエスコンみたいに空でやってくれないか。
それならまだ幾分かは分かるのに。
だが、そんな競技はどこにもない。
あるのはFPSにMOBAに。もはやついて行けなくなった格ゲーに。
昔の格ゲーの対戦動画なら、まだ少しは楽しいけど。
eスポーツというが、興味の持てるタイトルはとうとう見当たらなかった。
もはや、ここは私がいるべき世界ではない。
そんな世界なら滅んでしまえばいい。
とくに会社は念入りにぶち壊し、私も消えよう。
そのとき、私に電流走る。
なければ作っちゃえばいいのでは。
現実の世界で新しい競技を作るほど、私には金も力もない。
それでも私の空想世界だけは、私の思うがままに操ることができる。
そうして生まれたのが、『蒼空トレイル』である。
ここには転生なんてない。
俺TUEEEも、チート能力もない。
現代にダンジョンだって生えてこない。
恋愛要素なんて欠片もない。
人だって死なない。
そこにあるのは、地に足がついた人間の、
ままならない現実の中で必死に生きる人間たちの、熱いドラマだけだ。
そんな、eスポーツのガワを借りたスポ根物語。
最後まで書き上げてみようじゃないか。