木隠七という人間は戦う事以外の事を知らなかった。
彼女の持つスキルは他の人間を狂わせた。
他の人々が獲得したそれとは一線を画すものだ。
最終的に両親を、人々を、殺した。
手は血に汚れ、彼女は絶望した。
ただ、安寧を願っただけなのに……。
雨が降る。
水面に薄暗い瞳が映る。
通行人は誰一人彼女を気に掛けず、通り過ぎていく。
誰も、誰も、誰も、誰も誰も誰も誰も誰も、彼女を見なかった。
「おい、そこの女。そんなとこにいると風邪を引くぞ」
「──え?」
そんな中、一人の青年が彼女に声をかけた。
それが彼女の最初のマスターとの出会いである。