「よう、久しぶりじゃないか!」
「え、部長!?」
正確には、元部長だ。
長年の夢を叶える準備ができたんだと言って、笑顔で去っていったのだ。
その彼が、駅のロータリーで屋台を開いていた。
「久しぶりだな。食べていかないか?」
「え、あー」
のぼりには『焼き☆パンダ』とあった。
「あと、部長はやめてくれよな。いまはただのパンダ屋だ」
「これが、夢ですか?」
笑顔が返事だった。
「今朝、東京湾であがったばかりだよ」
「じゃあ、ひとつお願いします」
部長は網カゴの中からパンダを一つ取り上げると、手慣れた仕草で殻をむく。
腹を裂いて、ワタを抜くと、串に通した。
「たれ? 塩?」
ちょっと考えてから塩と答えた。
部長の顔がやや曇る。
あれは提出した書類にミスがあった時の顔だ。
「はい。五百円ね」
「いただきます」
味はよくわからなかった。
ただ、一筋涙が零れた。
