帰宅ラッシュで車道は混んでいた。
私の車も例に漏れず、赤信号で停まったのは信号機より20mは手前だった。
ハンドルから手を離して頬杖をつくと、目新しいものはないかと歩道側に目を向けた。
民家の玄関先に、犬がいた。地べたに尻をつけ前足を伸ばして座っている犬である。
車の中で頬杖をついている私を見ている。じーっと見ている。尻尾を振るでもなく只見ている。私もそんな犬を見ている。他に見るべきものもないので見ている。見返している。
お互いに見つめ合っている。何が楽しいのか、見つめ合っている。先に視線を外してやるものかと見つめ合っている。
と思ったら、犬が首を捻って顔だけ後ろに向けた。
いや、お前だよ!?私が見てたの、お前だから!!お前の後ろ、誰もいねーから!!
青信号になったので、運転を再開した。結局犬はずっと後ろを向いたままでその後目を合せる事はなかった。なんでアイツ、後ろが気になったんだろ……。