ベルサームでわかりにくいっぽいところ、直しました。
中庭の模擬戦闘のあと、よりどころがわかりにくいと考えました。
「メイドたちは信用していいだろうと判断」というワンシーンを入れてきました。
第9話が大幅に文字数増加です。
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らちが明かないので、ノノレクチンが「じゃあ、起こしちゃいましょう。歩いてもらうのが楽ちんだし」と言いました。ピッと指を振ってトキトを目覚めさせてしまいました。
パルミがからかうように言います。
「ありゃ、トキトっち残念無念だねぃー。美人さんにおんぶしてもらえなくなっちった」
あてがわれた寝室に向かうことになります。
目が覚めたトキトも、歩きます。中庭からメイド三人も含めて全員で寝室へ。
そこでノノレクチンがぶうぶうと不平を鳴らしました。
「眠り魔法を使うなんて、まったく強引すぎよね。エトバリルのやつは」
エトバリルに対しての不満からほっぺたがふくらんでいます。歩きながら、続けて言いました。
「あ、偽名でごめんね。ここで働くときはノノレクチンと名乗っているけど、本当の名前はノルっていうの」
五人の子どもたちに向きなおり、にっこりとノルはほほえみかけました。
ウインは思います。
――たしか、カヒがそう言っていたね。本名じゃないって。カヒの勘が当たったんだ。それじゃ、シュガーさんも……?
シュガーがそれを聞いてつづきます。
「私もわけあって偽名だ」
カヒが感知したとおりでした。偽名であることは告白したものの、シュガーはノノレクチン(本名はノル)と違ってそこまでしか言えないようです。
「が、本名は伏ふせさせてもらおう。君たちの敵ではないから安心するといいよ」
事情があるようです。シュガーの顔は無表情のままでした。
けれども本名ではないことをわざわざ言わなくてもいい場面でした。子どもたちをだまして悪いと考えたのでしょうか。
――いいのかな。偽名で働いているんでしょう? 私たちがベルサームの人たちに伝えちゃうかもしれないのに。
ウインはまだ小学六年生。カヒやアスミチよりは学年が二つ上ですが、まだ大人の考えがよくわかりません。もしも大人の考えのわかる人がこの場にいたなら、解説をしてくれたことでしょう。
『この二人は、偽名であることがベルサームに知られる危険があるとわかっている。それでも君たちにその事実を明かした。つまり、ベルサームを裏切る。君たちに味方をするつもりだというサインだね』
『きっと、そこから手がかりが見つかる。君たちがこのとらわれの状態を脱するチャンスがある。メイドたちに注目して、でも完全に信用せず、対等に取引を考えるべきだ』
こんなふうに言ってくれる仲間がいてくれたら、頼もしかったことでしょう。でもウインたちには、そこまで考えることのできる仲間は、いません――今はまだ。
トキトが、さっき自分の取り合いがあったことは知らずに、シュガーに答えます。
「俺たちをだましても得しないもんな。信じるぜ、シュガーさん」
「正確には、シュガーかっこ仮名かめいさん、じゃん? にしし」
とパルミがおもしろがりました。
ウインはパルミのおふざけにつきあわずに真面目な顔で疑問を口にします。
「ノルさんとシュガーさんのどちらも名前を偽ってる……もしかして、こちらの世界では偽名を名乗るのがふつうのことなの?」
タバナハがあわてて割って入ります。
「ええええ、偽名をしょっちゅう使うとか、そんなことないですよぉ。私も今すごく混乱してます!」
アスミチが、顔をしかめています。たぶんいろいろと考えているのでしょう。彼はタバナハにむかって質問をします。
「タバナハさんは、本名なんだね?」
「ええ、私は本名です。生まれたときからタバナハ。ケロム密林の部族の娘です」
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【画像】はタバナハ。布が少ないほうの戦闘服。
お目目に悪いかもしれないので、注意なさってくださいませ。
